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#1-1塔と森と名もなきタト|追憶のオリジン〜氷の女王の眠る街〜

    第一章 静かな始まり

    第1話 塔と森と名もなきタト

    タトは今日も、木を切り倒しに森へ向かう。
    ここは「希望の塔」の麓にある街、ルミナリー。
    その名とは裏腹に、今にも森に呑まれそうな、ひっそりとした廃れた街だ。
    人々は皆、ぎりぎりの暮らしを続けている。

    タトは、どこで生まれたのか、誰の子なのかも知らない。
    けれど、寂しさは感じない。皆がそうなのだから。

    「タト、今日はどこへ行くの?」

    庭先で布を織っていた小さなニナが、手を止めて声をかけた。

    「教会の周りが森に呑まれそうなんだ。伐採してくるよ」

    「桑の実ジュース、持っていきな」

    桑の実を潰していたジルが、一瓶のジュースを手渡す。

    「ああ、みんなで飲むよ。」

    この街では、皆ができることを持ち寄って暮らしている。
    誰かは森で食物を調達すれば、誰かがそれを調理する。石を集める者もいれば、家を修理する者もいる。
    それぞれが得意なことを担って、街のかたちが自然と保たれていた。

    タトには特別好きなことがなかったので、いろいろな仕事を試してみた。
    どれもそれなりにはできたが、しっくりくるものはなかった。
    だから今は、日替わりでさまざまな仕事をこなしている。

    最近は、森の侵入を防ぐため、もっぱら伐採に出ている。

    今朝も森へ向かう。
    霧は濃く、森の気配はすぐ近かった。


    (つづく)


     
     
    ぼんやりと生きています。心に湧いたお話は『ナルニア国物語』を思わせる、「児童文学ファンタジー」をちょっぴりと目指しています。 ◆note: 長編小説「追憶のオリジン」(全話公開中)イラスト 短編/短歌/自由詩/エッセイ ◆tales: 「追憶のオリジン(改訂版)」「読み切り」

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