メインコンテンツへスキップ
見出し画像

#4-1 深き森の亡霊①|追憶のオリジン〜氷の女王の眠る街

    ←前のはなし   |   次のはなし→


    第四章 揺れる心の試練
    第1話 深き森の亡霊①

    これまでのあらすじ


    フェリサリアのオリジア石と共に、三人がノーレムの街に戻ったのは、秋の入り口だった。

    祭りの準備を前に、次の旅の道程を話し合っていた。


    「僕たちはこれから自信の塔、ヴァリスを目指す。
    今回はミミがいるから、最短距離で行こうと思う」


    「ミミがいるから?」


    「……これまでヴァリスへ行けなかったのは、
    この先に“人型の魔獣”が現れるからなんだ」

    レイが、口を重そうに開く。


    「ひ、人の……!?」

    タトはぶるりと身震いをした。


    レイは続ける。

    「それが魔獣なのか、森に棲む集団なのか、あるいは亡霊なのか――、定かではない」


    「亡霊?街の人なのか?」


    「分からない。彼らは対話をしない」


    「まさか、ミミに戦わせる気?」


    「いや。牽制で十分だろう。うまくいけば、正体が分かるかもしれない」


    タトはちらりとミミを見た。

    すでに話し合いに飽きて、木彫りのシカを手に遊んでいる。


    未知の脅威に、タトは得も言われぬ不安を感じた。


    *


    街を上げた盛大な秋祭りの後、
    タト、ミミ、レイの三人は、ノーレムから北東へ向けて出発をした。

    足元はふかふかと沈み、土と枯葉が柔らかく音を吸い込む。
    何層もの季節が折り重なったような、道なき道。

    乾いた風が森を抜け、色づいた葉が舞っていた。


    ノーレムを出て、半月が過ぎた。

    旅は順調だった。


    「この森を越えれば、ヴァリスのはずだ」

    地図を開き、レイが呟く。


    「今夜は、ここで休もう」

    色が消えかけた空を見上げ、タトが足を止めた。


    「明日には着くだろう。本番は、ここからだな」
    レイが言ったそのとき、

    ミミが鼻をひくつかせ、顔を上げる。


    「風が、変わった」


    その声に、3人がサッと集まる。タトは腰の鉈剣に手をかけた。


    色を失った森を風が通り抜け、
    木々の影がざわめく。


    その影のひとつが──ずるりと分裂した。

    姿を現したのは、熊のような巨体、だが、人のようにも見える。

    森の暗がりから、ゆらめきながら次々と現れる影。

    「ひ、人か……?」 それとも──


    鉈剣を握るタトの手が湿り、喉がごくりと鳴った。



    (つづく)

    ←前のはなし   |   次のはなし→


    第1話 深き森の亡霊① - 追憶のオリジン〜氷の女王の眠る街〜|不思議な六角柱の石が世界の謎へと導く冒険ファンタジー | Tales 物語・小説


     
     
    ぼんやりと生きています。心に湧いたお話は『ナルニア国物語』を思わせる、「児童文学ファンタジー」をちょっぴりと目指しています。 ◆note: 長編小説「追憶のオリジン」(全話公開中)イラスト 短編/短歌/自由詩/エッセイ ◆tales: 「追憶のオリジン(改訂版)」「読み切り」

    あなたへのおすすめ