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ズボラな私は鍋を。ダンナはダンナでアテを。一人っ子同士の晩酌

    寒い夜に、温かいものが食べたい。

    スーパーのお惣菜はひんやりしていて、なんだか侘びしい。これまでは市販のおでんを土鍋で温めて酒のアテにしていたのだが、どことなく薬品臭さを感じて気になってしまう。練り物に含まれている化学調味料なのだろうか。翌日も自分の身体から独特の薬品の臭いが立ち昇る。

    鍋ができたらいいな。でも鍋って、どうやって作るのかな。料理に疎く育ってきた私にはいまいち要領がわからない。市販の鍋の素を買ってしまえば簡単なのだろうけれど、それではまた、添加物の臭いや強烈な旨味成分に「なんだか侘びしい」と思ってしまいそうだ。

    小鍋料理の本を何冊かめくってみる。簡単そうでいて、やっぱり手強い。まずは出汁をとって、具材を集めて、下処理して……と考えていたら、頭から煙が出てきて嫌になった。

    *

    そんなときに出会ったのが、藤井恵さんの『藤井ちゃんこ』だった。

    この本の白眉は、5つの「鍋の素」だ。鍋の素と言っても、パウチやキューブではない。調味料をさっと混ぜれば、それで完成。

    1. 塩鍋の素

    2. しょうゆ鍋の素

    3. 甘じょうゆ鍋の素

    4. みそ鍋の素

    5. 辛みそ鍋の素

    出汁は具材からも勝手に出るから、ひかなくていい。作り置きも可。具材は2、3種類でとてもシンプル。行程は基本、切って煮るだけ。ズボラで不器用な私には、なんともありがたいレシピだった。

    もう一冊、吉田愛さんの『おかず鍋』も心強い相棒になった。こちらは具材別で分類されているので、「今日は肉じゃなくて魚にしたいな」というときに重宝する。塩鮭を水菜の上に載せ、大根おろしと少量の酒で蒸す「雪見鍋」なんて変わり種もあって、飽きない。

    *

    それからというもの、バカの一つ覚えのように、鍋を作り続けている。

    鍋ばかりでは飽きないか、と最初は思っていた。でも、そんなことはなかった。味も具材も変えられるから、「今日は何の鍋にしようか」とスーパーをぶらつく時間が、じつに楽しい。

    ジロウ(ダンナ)が家にいるときも、自分の分の鍋を仕込む。お互い食べたいものを優先したいので、そういうことにしている。料理はジロウのほうが得意だ。彼は彼で、買ってきた刺身をきれいに並べ、さらに何か作っている。交互に台所に立ち、お互いの作ったものをちょっとずつ味見しながら、あとはおのおのイヤホンで好きな映画を見たり漫画を読んだりして食卓を囲む。

    一人っ子同士の夫婦の、変な晩酌だ。独り暮らしがたまたま同じ屋根の下にいて、勝手におのおのの家事をして生きている。呑みに行きたくなったら、別に一緒に行かなくてもいいし、「今日は家でだらだらしたい」と思った方が家に残る。

    さて、今晩は、どうしようかな。

     
     
    小説家になりたかった占い師。鎌倉在住。1984年生まれ、早稲田大学第二文学部卒。元・図書館司書、ライター。もう一度本気で小説を書こうとしています。占い師としての活動はアメブロをどうぞ→https://ameblo.jp/mianohara/

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