メむンコンテンツぞスキップ
芋出し画像

03_耐震性に秀れた腕時蚈ずは䜕か_ J.D.サリンゞャヌ「゚ズメに捧ぐ——愛ず汚蟱のうちに」考察

    Q. ゚ズメから莈られた、耐震性に秀れた腕時蚈ずは䜕か 
    「゚ズメに捧ぐ——愛ず汚蟱のうちに」の最埌に、Xぱズメから送られた小包をひらく。䞭にぱズメの父の腕時蚈ずずもに、「これは耐氎・耐震性shock-proofがすごく秀れおおりたす」175ずいうメッセヌゞが添えられおいたす。衝撃吞収性に秀れた時蚈ずいうのは確かにありたすが、ここでそれがこずさらに取り䞊げられおいるのには理由があるず思うんですよね。
     
    本皿の解釈はこう。
    A. 粟神分裂に耐えるお守り。
    以䞋に理由を述べたす。


    J.D.サリンゞャヌ『ナむン・ストヌリヌズ』に収録の「゚ズメに捧ぐ——愛ず汚蟱のうちに」読解をマガゞンで連茉しおいたす。こちらの蚘事から読んでいただいおもお楜しみいただけたすが、01から順番に蟿りたい方は䞋蚘よりご芧ください。

    1 疌く指先

    前回、「゚ズメ」前半の語り手〈私〉の䞭には癜ず黒、善ず悪、「いたは、銃撃戊に飛び蟌んでいっお殺し合いをしたくおしょうがない」「最埌の䌑暇」_54ずいう気持ちず、誰も殺したくないし、自分も殺されたくないずいう盞反する感情が朜んでいるのではないかず考察したした。
     
    蚓緎が終わり、いよいよノルマンディ䞊陞䜜戊ぞ向けお出発する日のこずを、語り手は「匕き金を匕く指が、ごくわずか、目ではわからぬほどわずかに疌いおいた。 my trigger finger itching imperceptibly, if at all.」柎_149ず回想したす。
     
    〈疌き・痒み itching〉ずいう蚀葉には、語り手が銃の匕き金を匕きたい、でも匕きたくない、どちらが正しいのか、自分が本圓はどうしたいのかわからないずいう葛藀が衚珟されおいるように思いたす。

    サリンゞャヌの初期短線「ロむス・タゲット」においお、善良でやさしい心の持ち䞻であるカヌルが、癜以倖の゜ックスを履くず足が痒くなる英文未確認ですが、itchingかこれに䌌た意味の蚀葉が䜿われおいるはずずいう描写がありたすね143。癜い靎䞋を奜むのはカヌルの汚れのない心の珟れであり、色の぀いた靎䞋を履くこずは、自分の心に嘘を぀くのず同じこず。自分の奜みの靎䞋を身に぀けるこずず、劻の奜みに合わせた装いをするこずによる違和感、ホンネずタテマ゚の乖離、内面ず倖芋のズレの感芚がカヌルにかゆみをもたらしおいるず読めたす。
     
    サリンゞャヌ䜜品では、粟神のありようが足に珟れるこずは「バナナフィッシュ」読解で瀺した通り。サリンゞャヌは靎䞋の蚘述を、シェむクスピアの『十二倜』をヒントに曞いおいるのかもしれたせん詳现䞋蚘。

    たた「ズヌむ」には、シヌモアが匟・効たちから誕生日にかゆみ粉itching powderをプレれントされる262、ずいう゚ピ゜ヌドが曞かれおいたすね。グラス家サヌガでシヌモアは基本的には聖人のように語られおいたすが、「シヌモア—序章—」では「銖筋はほんずうに汚れおいた」249ず蚘されおいたす。これは内面にひどい汚れを抱えおいるこずの衚珟かもしれない。普段は高い知性や良識を持った人物であるかのように振舞っおいるシヌモアも、内面には負の芁玠を隠しおいる。兄匟たちはそれを芋抜いおいるからこそ、圌に〈かゆみ粉〉を莈るのではないでしょうか。

    2 『オセロヌ』の痒み

    うしろめたさが痒みずなっお珟れる䟋ずしおは、シェむクスピアの『オセロヌ』が思い出されたす。劇䞭で、倫ぞの貞節を守るヒロむン・デズデモヌナは、倫に浮気を疑われお殺される盎前、ほんの䞀瞬だけ他の男性に目を奪われ、その容姿を耒めたす。
     
    ただ遠くから芋぀めお「ロドノィヌゎヌっお玠敵な人ね」202ずいうだけ。倫はそれを知らないし、デズデモヌナが殺された理由ずは盎接は関係ないのですが、物語ずしおはここで、誀解により殺された悲劇のヒロむンも、必ずしも心の奥深くたで完党にたっさらな玔朔なわけではないのだずいうこずが、ちらりず仄めかされるこの読解は改めお。その時に、デズデモヌナは「䜕だか目がかゆい涙の前觊れかしら」203ず、埌ろめたさからやたらず目の痒みを蚎えるんですね。
     
    サリンゞャヌがこれをどれほど意識しおいたかわかりたせんが、至る所にシェむクスピアからの圱響がみられるこずは、『キャッチャヌ』「バナナフィッシュ」読解でもみおきたずおりです。

    3 指先の震え

    埌半で、Xは「埮かに小止みなくぶ぀かり合う指をあや぀りながら」煙草に火を぀け、「自分の粟神が、いわば碇がきれお、頭䞊の網棚の䞊で揺れる荷物みたいに動揺するような気がした。」162ず述べ、その埌でXの郚屋にZ䌍長が蚪ねおきたす。この揺れは、粟神の揺らぎを衚しおおり、〈私〉がXずZに分裂する兆候。
     
    この兆候は、前半の「匕き金を匕く指が、ごくわずか、目ではわからぬほどわずかに疌いおitchingいた。」ずいう蚘述から぀なげお読んでもいいかもしれたせん。
     
    が去った埌でXは、「䟿箋をロヌラヌの間にちゃんず挟むこずができない。指のけいれんがそれほど激しくなっおいた」173ず語られ、Zずの察話で粟神状態がさらに悪化しおいるこずが瀺されたす。指先のけいれんは、粟神が動揺しおいるこずの珟れ。指先の疌き、かゆみが、身䜓の震えや粟神的な動揺ずなり、やがお二぀に分かれるむメヌゞぞずグラデヌションで぀ながっおいるように思いたす。

    4 『ロミオずゞュリ゚ット』『マクベス』の震え

    シェむクスピアの『ロミオずゞュリ゚ット』では、倧地震の日にゞュリ゚ットが乳離れした36ず語られたす。シェむクスピア䜜品では、倧地や領土は䞻人公の粟神の象城なので、倧地震ずは、ゞュリ゚ットが母䜓から分離した瞬間を衚珟しおいるのではないか、ずいう解釈に぀いおは䞋蚘で述べたした。

    『マクベス』でも䞻人公は、「心に浮かぶ殺人は、ただ空想にすぎないのに俺の五䜓をゆさぶり My thought, whose murder yet is but fantastical,  Shakes so my single state of man」25ず粟神的な動揺、善悪ぞの分裂を震えずしお語り、自分が殺したバンクォヌの亡霊がマクベスの垭を奪うず、「貎様、俺だずは蚀わせない。血たみれの髪を俺に向かっお振り立おるな Thou canst not say I did it. Never shake  Thy gory locks at me.」ず、自分の玉座存圚の根幹が亡霊にのっずられるこずを恐れ、「震えるものかShall never tremble.」「䞍気味な圱幻め、俺を銬鹿にする気か、倱せろ horrible shadow!   Unreal mock’ry, hence!」102ず抗いながら、幻圱狂気悪魔にずり぀かれおいきたす。震えに抗いながらマクベスが闘っおいる〈䞍気味な圱〉は、自分の埌ろめたさ、眪悪感からくる狂気が䜜り出した幻圱。その意味で、Xが芋るZず近いず思うのです。

    5 耐震性に秀れた時蚈

    シェむクスピア䜜品から圱響を受けおいるサリンゞャヌにずっお、震えは粟神分裂ず狂気の兆候。ここに自分が粟神的に病んだ実䜓隓が重ねられ、「゚ズメ」のけいれんや動揺の衚珟が出おきおいるのではないでしょうか。
     
    するず、゚ズメが送っおくれた時蚈の「耐震性がすごく優れお」175いるのは、粟神の分裂を予防するのに、この時蚈が圹立぀こずを暗瀺しおいるのかもしれない。
     
    たた、〈碇〉は船乗りを思わせる蚀葉。シェむクスピア䜜品、サリンゞャヌ䜜品で、粟神的に揺らぐ者は、波に揺れる持垫でもあるこずは、過去蚘事で芋おきたずおり。だからこそ、その揺らぎ、心身の震えは〈碇〉が切れたず衚珟される。倧地が揺らぐこずは、足元がおが぀かなくなるこず、船乗りになっお海ぞ出るこず、波に翻匄される者になるこず、氞遠の少幎になるこずず結び぀いおいるわけですね。

    「頭䞊の網棚の䞊で揺れる荷物」や、指先の痙攣を「正垞に返すためには、こめかみの所を䞡手でき぀く抌さえる」162ずいう衚珟は、「バナナフィッシュ」読解で瀺した頭・脳の狂気、こめかみに銃匟を撃ち蟌むずいうシヌモアの最埌に぀ながる描写。詳しくは䞋蚘「バナナフィッシュ」読解を参照ください。

    今回はここたで。お読みいただきありがずうございたす。

    ぀づきはこちらから。ぜひご芧ください。


    J.D.サリンゞャヌ「バナナフィッシュにうっお぀けの日」読解0110のたずめはこちらから。ぜひご芧ください。

    J.D.サリンゞャヌ『キャッチャヌ・むン・ザ・ラむ』読解0110のたずめはこちらから。ぜひご芧ください。


    この蚘事が参加しおいる募集

     
     
    文孊䜜品の新たな読み方を考える蚘事を曞いおいたす。サリンゞャヌ、シェむクスピア、村䞊春暹など。 yomikata.ken@gmail.com

    あなたぞのおすすめ