
二十面相のマネキン第13章:漆黒の静寂と、受け継がれる祈り 3話
「……私、ずっと……無理に笑おうとしてた……」
女性はその場に崩れ落ちるように膝をつき、両手で顔を覆った。
「みんな『早く元気になって』って言うの。だから泣いちゃ駄目だと思って、平気なフリをして……でも、本当はすごく寂しくて、会いたくて、苦しくて……!」
溢れ出したのは、ずっと胸の奥に閉じ込めていた本当の感情だった。
美喜の伏せられた瞳と、すべてを優しく包み込むような合掌の姿勢。それが「泣いてもいいんだよ」「無理に前を向かなくても、あなたの悲しみはそのままでいいんだよ」と、静かに語りかけてくれているように感じられたのだ。
カランコロン、と店のドアが開く。
お父さんは驚くことなく静かに歩み寄ると、膝をつく女性の傍らにそっと寄り添い、目線を合わせて声をかけた。
「辛かったですね。よく……ここまで一人で耐えてこられましたね」
女性は涙を拭いながら、途切れ途切れに想いを打ち明けた。
励まされるたびに孤立していったこと。
亡き人を思って泣くことすら「引きずっている」と責められている気がしていたこと。
「あのマネキンさんを見たとき……初めて『泣いていいんだ』って思えたんです。何か言葉をかけられたわけじゃないのに、私の悲しみをそのまま抱きしめてくれた気がして……」
女性は美喜の法衣を愛おしそうに見つめた。
「あの……厚かましいお願いだと分かっているのですが……その法衣の生地や袈裟の端切れのようなものを、少しだけ分けていただくことはできないでしょうか。亡くなったあの人の写真と一緒に置いて、毎日『悲しいよ』って、私の素直な気持ちを伝えるための小さな守り袋を作りたいんです……」
お父さんは温かく微笑み、しっかりと頷いた。
「ええ、喜んで。服はお直しや仕立てのときに、どうしても綺麗な端切れが出るんです。あの法衣と同じ絹の生地で、あなたの心に寄り添う小さな守り袋をお作りしましょう」
