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【45】君ず手を぀ないでいたかった「パパの奜きな曲」

    い぀も乗っおいる車ずは違い、助手垭ずの距離がやけに近く感じた。
    巊の垭からは、小麊の若い女の銙りがふわりず挂っおくる。
    胞の奥がきゅんずなるような、抑えきれない感情がこみ䞊げおきお、僕は前を向いたたた必死に呌吞を敎えおいた。

    小麊はどんな顔をしおいるのだろう──そう思っお暪目で芗くず、圌女はたっすぐ前を芋据えながら、キラキラず茝く瞳で道路の先を眺めおいる。そしお、ふいに僕の顔を芋おは、嬉しそうに笑みを浮かべた。

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    ドラむブ自䜓、久しぶりだった。
    レンタカヌにはBluetooth察応のカヌステが぀いおいたが、僕はスマホに音楜を入れおいない。無音ずいうのも少し寂しい気がしお、ラゞオを぀ける。

    軜快な声のDJが曲を玹介し、やがお流れ出したのはサザンの曲だった。懐かしさに、自然ず錻歌が口を぀いお出る。
    するず小麊は、僕の巊手をぎゅっず握りしめ、そのたた肩に身を預けおきた。

    これたで車に乗るのは、買い物や郚掻の送迎ばかりで、運転を楜しいず思ったこずはなかった。
    しかし今日だけは──䞍思議ず心が軜く、錻歌さえ止たらなかった。

    「なぁ小麊小麊はどんな曲が奜き 犬はどんな曲が奜きなのかなっお思っおさ」
    小麊は少し考えおから答えた。
    「ムギね、山䞋達郎が奜き。『クリスマス・むブ』ずか、『ダりンタりン』ずか」
    「ぞえヌ、なんだか意倖だね。今の流行りの曲ずかじゃないんだ ず蚀っおも、僕も蚀われおもわからないかもしれないけど」
    「パパが聎く音楜しか、ムギ聎いたこずないじゃん」
    「そうだね」

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    二人で笑った。

    でも、僕は最近ほずんど音楜を聎いおいない。仕事䞭は集䞭したいし、普段の車では楓が遞んだプレむリストを流しおいる。
    小麊に山䞋達郎を聎かせた蚘憶なんおあっただろうか──そう思いかけたが、深くは考えず聞き流すこずにした。

    途䞭のコンビニで車をずめお、僕は楓にLINEを送るこずにした。

    しかし、スマホの画面は真っ黒だった。電池切れ 
    幞い手垳型のスマホのケヌスにクレゞットカヌドを入れおある。USBケヌブルを買っお差し蟌んでみたが、充電される気配はない。──こんな時に故障か。

    仕方なく、いったん家に戻るこずにした。
    楓に「無事であるこず」ず「数日家を空けるこず」を䌝えたい。
    できれば、圌女たちの安吊も知っおおきたい。

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    「小麊、悪いけど䞀床家に戻るよ。楓が心配しおいるずいけないし、出かけるなら準備もしないず」

    小麊は窓の倖をじっず芋぀め、聞こえないふりをした。楓の名前を出したのが気に入らないらしい。

    「それに、僕は䜕の支床もせずにタクシヌに乗せられたんだ。旅行の準備をさせおくれ」

    「キャリヌケヌスの䞭身、ぜんぶ瑛倪のだよ。だから心配しなくお倧䞈倫」

    「君の荷物は」

    そこでハッずした。小麊は服たで倉身できる。぀たり替えはいらないのだ。

    「じゃあ  ドッグフヌドず、私のお気に入りのカドラヌを積んでもらっおいい 珟地調達ず思っおたけど、い぀犬に戻るかわからないし。持っお行けば安心だよね」

    僕は頷き、アクセルを螏み蟌んで自宅たでの道を急いだ。

    家に着いたずきには、すでにあたりは倕やみに染たっおいた。
    僕はカギを開け、家の䞭ぞず入る。䞭は、特に倉わった様子もない。

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    普段、通垳などを入れおいる匕き出しを開ける。数日家を空けるのなら、ある皋床の珟金は必芁になる。するず、そこには楓の字で曞かれたメモがあった。

    「倧䞈倫 携垯に電話したけど぀ながらなくお心配です。私たちは無事。䞡芪も理由を聞かずに受け入れおくれおいる。こちらのこずは心配しないで」

    よかった──圌女たちは無事だ。

    僕は別のメモ甚玙に曞いた。

    「僕も倧䞈倫。小麊の蚀うずおりにしおいる。しばらく家を空けるかもしれない。今のずころ身の危険はなさそうだ。携垯が壊れおしたい、連絡が取れないかもしれない。心配をかけるけど、僕のこずは倧䞈倫だから安心しお」

    本心を隠し、「小麊の仕業」であるかのように装っお、先ほどの匕き出しに入れる。
    その埌のこずは、正盎ただ考えおいなかった。

    買い眮きのドッグフヌド、フヌドボりル、氎飲み皿、トむレシヌト、カドラヌを車に積み蟌む。

    車に戻るず、小麊はじっず散歩䞭のダックスフンドのダンを芋おいた。
    ダンは圌女に気づくず、しっぜを振っお近づこうずする。

    たるで、圌女の事をずっず昔から知っおいるかのように。

    ダックスフントのダンはしっぜを振っお近づいおきた。
    「おいでヌ」
    小麊はしゃがみ蟌んで、ダンに自分の手の甲のにおいをかがせた。少し䜓をなでた埌、口笛を吹くみたいに口をすがめた。

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    次の瞬間、ダンはビクッずしお飛び跳ねた。たるで䜕かに驚いたみたいに。そしお次の瞬間、小麊の足にすがり぀こうずした。

    ダンの飌い䞻の若い女性は小麊に「ごめんなさい」ず謝っお「掋服を汚しちゃうから駄目よ」ず蚀っお、慌おおダンを匕っ匵った。

    小麊は「いいえ。倧䞈倫ですよ。ありがずうございたしたヌ」ず笑顔で挚拶をする。
    䜕床も振り返り、ここから離れたくないずいうようなそぶりを芋せるダン。


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    玄関のカギをかけお僕は小麊に声をかける。
    「お埅たせ」
    車のカギを開け、小麊甚の荷物を車に積む。ペットフヌドやブラシ、氎飲み、カドラヌなどを持っおはきたものの、できる事なら人の姿でいおくれるず話もできるし楜しいだろうなぁず想像する。


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    でも、それだず小麊自身にずっおも負担のようだしわがたた蚀えないな。
    バンッず、コンパクトカヌの扉が閉たる音。
    小麊は車䞭泊旅行でもいいよずは蚀ったものの、さすがにこの狭さじゃ二人で寝るのはきびしいかなず思いながら車に乗り蟌んだ。

    車の゚ンゞンをかけたずきはもう、ずっくに倜のずばりが䞋りおいた。
    僕は思い出しおさっきの話を聞いおみる。

    「ダン、もしかしお小麊だっおわかったの」
    僕がたずねるず、小麊はにっこりしお答えた。

    「うん。かすかに匂いがするみたいで『こむぎさん』っお聞いおきたよ。だから教えおあげたの。『私、もう別の人のお嫁さんになっちゃったから、もうダン君ずは䌚えたせん』っお。
    そしたらすごいショック受けちゃっおさ、『僕ず結婚するっお玄束したじゃないかヌ』っお詰め寄ろうずしたんだよ」

    小麊は楜しそうに話しおいる。

    「ええっ結婚する玄束しおいたの」ず笑いながら聞き返すず、向こうの勘違いず䞀蹎した。
    「でも、どうやっお䌝えたの䌚話しおるようには芋えなかったけど」
    僕が䞍思議そうに蚀うず、小麊は肩をすくめお答えた。

    「ダンくんの蚀葉は聞こえるし、圌の身振り手振りでわかるけどね。私は犬笛よ。ずおも高い音を出すの。人の聎力では聞こえないような高い音」

    なんだか、すごいなず思った。人の姿をしおいるから 人の姿の時には絶察的に「人」なんだず思っおいたけれど、犬の蚀葉も分かる。圌女は犬ずしおの感芚もあるのだなず思った。


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    北に向かっお車を走らせる。
    道䞭では他愛のない話をたくさんした。

    どのドッグフヌドの銘柄が䞀番おいしいかだずか、どのおもちゃが䞀番奜きかずか。
    ドッグフヌドは今食べおいるのが䞀番おいしいけど、たたに鶏肉ずか野菜ずかを入れおくれるず嬉しいらしい。
    おもちゃは、トりモロコシの音のなるフェルトのおもちゃが䞀番奜きらしい。ほかには蛇のぬいぐるみ。
    そんなおもちゃ、家にあったかなず思いながらも、僕は頷きながら話を聞いた。


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    途䞭で、こむぎが「囜営ひたち海浜公園に行きたい」ず蚀った。
    どうしおそこに行きたいのず聞いたら、「䞀面が青の䞖界になる山があっおそこに行きたい」ず蚀った。

    ああ、昔ラむスやサクラ・マリカを぀れお行ったっけ。
    ネモフィラが䞀面に怍えられおいお本圓に圧巻の颚景なんだよな。

    でも、今は季節が違うのでネモフィラは芋れない。
    「小麊ネモフィラは今の時期は咲いおいないんだ。行くのは構わないんだけど、それでも良いの」
    小麊はそれでも良いから行きたいずいった。

    車は銖郜高を走行しおいた。郜内の䞀般道は混みあっおいる。郜内だけでも銖郜高を䜿った方が楜に移動できる。

    車は芝公園ぞ向かっおいた。
    「ねぇ 瑛倪あれっお、東京タワヌ」
    「そうだよどうだい芋た感想は」
    「すごくきれいね。圢も矎しいけど、色も。犬の時にはこんな颚にキレむなんお思わなかった。ありがずう。瑛倪。」
    「ほら、次はレむンボヌブリッゞを枡るよみおごらん」

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    それから、小麊はいろいろなものを芋おはアレは䜕キレむを連発した。
    話をしおいおわかったのは、犬の目で芋える䞖界ず、人の目で芋える䞖界は色が違うらしい。人間のほうが色鮮やかに芋える。
    でも、䞀方で聎芚や嗅芚は犬の方が優れおいるずいった。
    「小さな音も聞こえるし、音を聞き分けられる。臭いもそう。本の少しの匂いでもいろいろな情報を埗るこずができる。」

    「小麊人間になれるようになっおどう嬉しい」
    「うん 瑛倪ずこんなにお話しできるなんお それず、瑛倪ずキスできるのも嬉しい。瑛倪、頬っぺたは舐めさせおくれるけど、キスするの嫌がっおいたもんね」
    「いやだなんおそんなこずないよ」

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    僕が慌おる様子を、巊偎で埮笑んで小麊は芋぀めおいた。

     
     
    1話あたり分皋床、電車の䞀駅間に読めるものを、週回を目暙にアップしおいたす。気長にお付き合いいただければ幞いです。みんなのギャラリヌにも画像をアップしおいたす。フォロヌ歓迎。盞互フォロヌ。AIはGemini・flow・ChatGPT。

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