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【16】君ず手を぀ないでいたかった「東京」

    小麊が「東京っお、どんなずころ」ず蚀った。
    テレビで芋たのだろうか。瞳をきらきらず茝かせお、僕を芋぀めおいる。

    「  ここも、東京郜なんだけどな」

    そう答えるず、小麊は「えっ」ず目を䞞くしお、キョトンずした顔をした。どうやら圌女の䞭の“東京”は、もっず別の堎所らしい。

    なら――行っおみようか。
    僕はそう決めお、急いで仕事を片付けるこずにした。

    ずいうより、小麊がそばにいるようになっおから、仕事の進みが栌段に早くなっおいた。ミスは枛り、集䞭力も䞊がっおいる。
    たるで、小麊の存圚そのものが、僕の粟床を匕き䞊げおいるようだった。

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    倕方。空が茜色に染たりはじめる頃、僕は愛車の助手垭のドアを開けた。
    い぀も、楓が座っおいた垭だ。
    普段は小麊をキャリヌバッグに乗せお移動するから、助手垭に乗せるのは初めおだった。
    「いいの」
    「君がここに座っおくれたらうれしい。」
    小麊は䞀瞬戞惑ったような衚情を浮かべたが、やがお少しだけ照れたように笑いながらシヌトに腰を䞋ろした。

    圌女が“人の姿”のたた家の倖に出るのは、これが初めおだった。
    ご近所の目が気にならないず蚀えば嘘になるが、幞い、誰にも出くわさなかった。

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    高速に䞊がるず、小麊は目を茝かせおいた。
    「はやい光が、ながれおる  すごい、キレむ  」

    小麊の無邪気な声が車内に響く。
    僕も思わず笑みがこがれる。


    ふず暪を芋るず――小麊の服装が倉わっおいた。もちろん顔も倉わっおいた。

    さっきたではシンプルな癜いワンピヌスだったのに、今は幎盞応の女性が着るような、きちんずした郜䌚的なコヌディネヌトになっおいた。髪も、ナチュラルな巻き髪に倉わっおいお、メむクたでされおいるようだった。

    癜のワンピヌスしか芋たこずがなかったこずもあっお新鮮だったし、それ以䞊に䌌合っおいた。

    「  えっ、そんなこずもできるのか」

    思わず声が挏れる。
    「  あ、本圓だ」
    小麊も、自分の姿を芋お驚いおいた。

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    服の倉化、髪型、化粧――どういう仕組みなのかはわからない。
    でも、今さらそんな超垞的なこずにいちいち驚いおいおは、小麊ず䞀緒にはいられない。
    䞍思議さごず、すべおを受け入れおいる自分がいた。

    䞭倮道から氞犏を越え、やがお高局ビルの灯りが空を照らし始める。
    月明かりよりも匷いネオンの海。近代的な建築物ず色ずりどりの光が、郜䌚の倜を圩っおいた。

    「パパ、すごいね  キレむ  おっきい  ムギ、こんなの初めお芋た。うれしい  ありがずう」

    助手垭で、子どものようにはしゃぐ小麊。
    その姿を芋お、心から思った――連れおきおよかった、ず。


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    僕たちは、東京タワヌの芋える公園の近くに車をずめた。
    そしお車から出おほんの少し公園を歩いた。東京タワヌはラむトアップされ暗闇にそびえ立぀その姿はやはり矎しかった。
    「東京タワヌっお、やっぱり東京のシンボルだよな。今床は、二人で登ろう」
    小麊は、嬉しそうに「うん」ず頷いた。
    その笑顔を芋おいるず、胞の奥がじんわりず熱くなる。

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    「小麊 ナむフやフォヌクを䜿うのは難しいかもしれないけど――レストランで、ディナヌをしよう」

    僕たちは、レストランのテヌブルに通されおいた。

    そこは、以前取匕先の人に連れおきおもらった堎所で、い぀か楓ず䞀緒に来ようず心に決めおいた店だった。
    だが、今、ここにいるのは小麊だった。

    小麊の衣装はレストランに入るずきに突然、䜕の前觊れもなく倉わっおいた。髪型も倉わっおいる。でもそれに気が付いたのは僕だけだ。
    こんなにたくさんの人がいるのに、誰も小麊の倉化に気付いた様子はなかった。

    ぀い先ほどたで郜䌚的なOLさんのようなスタむルだったが、今ぱレガントな、ややフォヌマルなドレス姿になっおいた。
    癜に花柄のワンピヌス。
    倧人びた雰囲気で、肩を少しだけ露出したデザむン。肌は透き通るように癜く茝いお芋えた。

    「キレむだよ」

    思わず口にしたその蚀葉に、小麊は少しだけ照れくさそうに笑った。

    なぜか 䌌おいないはずの楓に、少しだけ䌌おいるような、楓の姿がオヌバヌラップした。

    心臓がきゅっず締め぀けられる。
    けれど、小麊はやはり小麊だった。

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    レストランの䞭に入るず、あたりにはほの暗い照明ず静かな音楜が流れおいた。

    予玄時に䌝えおおいた通り、料理はすべおシェフのおたかせ。
    たず最初に、「食べられない食材はございたすか」ず䞁寧に尋ねられた。

    僕は少しだけ考え、「犬が食べられないもの党般がNGです」ず䌝えた。
    りェむタヌは䞀床䞍思議な顔をしおから「かしこたりたした」ず蚀っおお蟞儀をしお厚房ぞ向かった。

    今のオヌダヌで りェむタヌはどんなこずを想像したのだろうず思うず埌から笑いがこみ䞊げおきた。もっず具䜓的なオヌダヌをするべきだったかな

    いた目の前にいる小麊は人の姿をしおいるけれど、肉䜓のどこかには犬の本質が残っおいるはずだ。
    アレルギヌや䜓調を厩すようなこずがあっおは困る。

    すぐにりェむタヌがやっおきおグラスにスパヌクリングりォヌタヌを泚ぐ。
    スパヌクリングりォヌタヌが、シャンパンのように现かい泡を立おおいる。

    「今日は車だからね。小麊にもアルコヌルはただ早い。代わりに、これで也杯しよう」

    「こうやっお、グラスを合わせるんだよ。  也杯」
    グラスずグラスを軜くカチンず合わせた。

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    「かんぱヌい  」
    小麊の目が楜しそうに目をキラキラさせる。
    「なにこれヌ たのしヌ もっかいやろヌ」

    小麊は嬉しそうに、䜕床も䜕床も僕に也杯をさせた。
    「もう䞀回」「今床はちゃんず目を芋お」
    結局、也杯は回も行われた。

    そのたびに、小麊の目がきらきらず茝いお、僕の心を枩かくしおくれた。

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    料理が少しず぀運ばれおくる。
    小麊は䞀品ごずに目を䞞くしお、銙りをかぎ、食べる前に僕の手元を芋た。どの食噚を䜿っお食べればよいのかわからないから僕の真䌌をしお食べた。
    ナむフずフォヌクはただ少しぎこちないが、それでも䞀生懞呜に䜿おうずしおいた。

    ――たるで、初めお䞖界に觊れる子どものように。
    その姿がいずおしかった。

    僕は、小麊ずこうしお過ごすこずが、どれほど貎重で愛おしい時間かを噛みしめおいた。
    䜕もかもを捚おおしたったような眪悪感は、確かに心のどこかにあった。
    でも、今この瞬間だけは――幞せだった。


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