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【63】君ず手を぀ないでいたかった「おかしな事」

    あの日、倕暮れの散歩道、手を぀ないで歩く二人。
    およそカップルず蚀うには幎が離れおいる。
    男性は代。女性はず蚀うず代・・・いや、ただ代かもしれなかった。

    二人は公園たで行くず仲睊たじく䜓を寄り添っおベンチに座る。
    その姿はたるで高校生が攟課埌、人目を忍びながらも ただ二人の時間を楜しみたくお家に垰るのを惜しんで公園で愛を語らっおいるのず䌌おいた。

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    話しおいる内容など どこにでもあるような他愛もない事ばかりだ。
    散歩のずきに䌚う犬が蚀い寄っおくるだの、あの犬は䜓臭がき぀くおいやだだの。どの電柱がみんなの目印になっおいるだの。
    そのうち日が傟き空のオレンゞが青や赀のグラデヌションに圩られる時間がやっおくるず二人はベンチから立ち䞊がった。

    立ち䞊がるず同時に女性から男性の頬に軜く唇を抌し圓おた。
    男性も䞀瞬驚いたような顔をしたが、圌女を抱きしめお今床は唇にキスを萜ずした。

    その埌二人は熱い抱擁をする。お互いの瞳にお互いの顔が映る。
    「ああ、私たちは䞖界䞀幞せだ。」
    二人を䞭心に䞖界が回っおいる。皆が自分たちを祝犏しおくれおいる。い぀かきっずそんな日が来るこずを倢芋ながら二人はもう䞀床キスをした。
    幞せだった。

    たさか、嚘がその珟堎を目撃しおいた䞊に、蚌拠動画をずっおいたこずを知るたでは。

    自宅の玄関ドアを開く。
    瑛倪ず愛犬小麊が玄関に入り 愛犬小麊の脚に぀いた泥を䞁寧に拭っおいる時 キッチンの方からはなにやら女性のすすり泣きのような声が聞こえおいた。

    瑛倪は「おや」ずは思ったが、普通の顔をしお「ただいた」ず蚀いリビングに入る。それに続いおティヌカッププヌドルの小麊も開いた扉のすきたからリビングに駆け蟌んだ。

    保育園に通う次女の柚銙は愛犬が散歩から垰るのを埅っおいた。
    それは圌女自身、䞍安な気持ちでいっぱいだったから、その䞍安を愛犬にそっず打ち明けようずしおいた。

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    「コムちゃん」ず呌びかけるが、小麊は嚘の呌びかけには答えずケヌゞの䞭に䞀目散に飛び蟌んだ。このような事はほずんどない。䜕かの危険なサむンのようだった。

    小麊はケヌゞの䞭から銖を䌞ばしおあたりを芳察する。しかし、その䞀点をみ぀めおがくがくず震え始めた。ダむニングテヌブルの前で長女の舞銙が怒っおいるのか、それずも泣いおいるのか、悲しんでいるのか、きっず・・・そう、それは父芪に察しお萜胆の衚情を芋せおいた。

    柚銙は 䜕事かずケヌゞの䞭に䞊半身を突っ蟌み「だいじょうぶ」ずいっお䜓をさすっおあげた。「さむいのかな」ず思った矢先に 先皋から小麊が芋぀めおいるダむニングの方で倧きな声が響いた。

    「あんたなんか父芪じゃない ママを悲したせるようなや぀は倧っ嫌い」

    そういうず䞭孊生の嚘は 二階ぞ駆けあがった。キッチンには嗚咜する嚘たちの母 楓が泣き厩れおいた。         

    「あれは小麊なんだ犬の小麊が」
    「あなた䜕蚀っおるのよ頭でもおかしくなった犬ずどうやったら公園で・・・そんな事で私たちをごたかせるず思っおいるなんお」

    蚀葉にならない䞍穏な空気が二人を包んだ。
    そしお、柚銙も この空気に耐えられず蚳も分からず泣き出しおしたった。

    「勝手にしろっ」
    瑛倪は䞀人で家を飛び出した。
    小䞀時間ほどあたりをぶら぀いたが、お金もスマホも持っおいないこずに気が付き家に垰るこずにした。

    あんな蚀い方をしお飛び出したが どんな顔をしお家に戻ればいいのだろうず、玄関の前で少し悩んだが、思い切っお玄関の扉を開けおみた。

    しかし、圌が家に垰った時、い぀もなら次女の柚銙が話の䞭心になりにぎやかな我が家が静寂に包たれおいた。3人はいなかった。

    唯䞀、䞍安そうな瞳で圌を芋぀める存圚がいた。
    リビングに眮かれたケヌゞの䞭で ただ震えおいる愛犬を圌はそっず抱き合げた。
    「ごめんな。小麊。䞍安にさせおしたったね。」

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    ダむニングテヌブルを芋るず「しばらく実家に戻りたす。」の曞眮きがあった。それを男性はくしゃくしゃに䞞めおゎミ箱に攟り投げた。

    「ちっ、なんだよ。」

    圌はおもむろに冷蔵庫を開けた。倕飯甚の食材らしきものがあったが自分で料理をする気にはならなかった。

    目に぀いたのはお䞭元か䜕かで取匕先からもらったたビヌルだった。
    4本冷えおいた。
    立お続けに2本、そのあずは゜ファに座っおテレビを぀けた。
    普段テレビを芋ないから党く面癜くなかった。
    がんやりしおいるうちに、曎にビヌルを2本空けおいた。

    最埌の5本目は冷蔵庫に入っおおらず垞枩だったが構わず飲んだ。
    ぬるい炭酞の泡の刺激が喉を通る際に、口いっぱいに苊みが広がった。
    倕飯も぀たみらしきものもなかったのでビヌルだけを飲んだが、党く酔えそうになかった。

    翌朝、瑛倪は 頭の内偎からガンガンず叩かれるような痛みず 胞からこみ䞊げる酞っぱい感芚で目を芚たした。
    昚日の服のたた゜ファで暪になっおいた。テヌブルには ぐちゃっず぀ぶしたビヌルの空き猶が転がっおいた。

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    ふず時蚈を芋るず 9時50分、リモヌト䌚議の10分前だった。
    あわおおパ゜コンの準備をしおパ゜コンを起動する。愛犬にもご飯を䞎えた。それらの䞀連の流れが終わっお垭に぀いおカメラの前に座った時 ちょうど䌚議が始たるずころだった。

    2時間の䌚議が終わった。
    䌚議の間䞭 LINEのメッセヌゞがないかGPSで今どこにいるのかなどを確認しおいた。䌚議の内容などは䞊の空だった。

    瑛倪の仕事はフリヌのプログラマヌだ。
    メヌカヌず共同でシステムのプログラムを曞いおいく。基本的にはメヌカヌのシステム゚ンゞニアがクラむアント゚ンドナヌザヌず亀枉しどのようなシステムたたは゜フトを䜜りたいかをたずめ、プログラマヌの圌に萜ずし蟌んでいく。

    珟圚の圌の倧口の取匕先はWAG瀟だ。
    ・・・Whispering AI Gateway・・・心に寄り添うAIの入り口
    人ずAIの間に「感情の翻蚳」をもたらす技術を開発するIT䌁業。機械が蚀葉にならない思いを『囁き』ずしお受け取り理解するための研究、゜フト開発が䌚瀟の理念だ。
    圌の仕事の割はここから受泚しおいる。圌の仕事は早くお正確ず定評があった。

    今日は次の゜フトの構想、クラむアントの芁望などの抂略説明だった。
    以前仕事をした䌚瀟なので倧䜓の仕様はわかっおいた。
    パ゜コンを閉じようずしたずき、WAG瀟の郚長䌊藀から「二人だけで少し話したい」ず蚀われた。

    「かしこたっおどうしたんですか」ず聞いたが、䌊藀は䌚っお盎接話せないかの䞀点匵りだった。

    瑛倪は劙な胞隒ぎのようなものを感じた。
    「䌚っお話したい」ず蚀われるず 䜕か話しづらい事なのか、あるいは今埌の発泚の件だずか、あるいは今たでそんな事を蚀われたこずはないがキックバック的な話なのかず思い、早くその䞍快感を消し去りたい気持ちで「今日だったら空いおたす」ず䌝えた。

    その日のうちに䌚う玄束を取り付けた。

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    WAG瀟のオフィスは郜内で 圌の自宅から1時間もあれば充分行ける距離だ。

    郜内のオフィス街。この界隈は関連の䌁業が入ったビルが倚い。この䞭の䜕瀟かは以前の仕事の時に取匕があったり、そうじゃなくおも名の通った䌚瀟だったりで知っおいる䌚瀟が倚い。

    WAG瀟もこの街に倧きなビルを䞀棟持っおいる。階建おのビルだがリフォヌムしお䞭は新築ず芋間違うほどキレむだ。
    受付の女性に甚件を䌝えるず 2分ず埅たずに䌊藀の姿が芋えた。

    䌊藀は40代のチヌムマネヌゞャヌだ。肩曞は郚長。WAG瀟がここたで倧きくなれたのが圌の手腕があったからだ。
    圌はゞャケットに癜のTシャツ、パンツず蚀うスタむルだった。パスを機械に通しお受付の奥から出おくる。

    「いやぁ、すみたせんね。わざわざご足劎頂いお。」
    通り䞀遍の瀟亀蟞什的なあいさ぀の埌 近くの喫茶店に移動した。
    喫茶店はなかなかに趣があった。高玚感があり瑛倪が行くには やや堎違いな感じすらした。
    メニュヌを芋るず・・・利甚客が少ないはずだ。コヌヒヌ䞀杯が2,000円近い金額が曞いおあった。

    䌊藀はコヌヒヌを二぀頌むず本題に入った。

    「䞀぀䌺いたいこずがあっおご足劎頂いたんですが、先日玍品しおいただいた゜フトなんですが、あの埌っお・・・倉わったこずはありたせんでしたか」

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    虚を突かれた質問に 瑛倪は返答に困った様子をうかべたが、

    「あの、私が玍品したあのプログラムに問題でもそれでしたら先皋のミヌティングの際にご指摘いただければ修正したしたのに。」

    「いや、なんずいうか・・・気になる事がありたしお」

    䌊藀は 䜕か奥歯に詰たったような、じれったい話し方をしおいた。い぀も単刀盎入に発蚀する䌊藀らしからぬ蚀い方だった。

    「このプロゞェクトの関係者は あなたを含めお5名。他にサポヌトメンバヌを入れお15名で構成されおいたす。
    今回のプロゞェクトのリヌダヌは鈎朚、サブずしお䜐藀に任せおいるんですが・・・・その件なんです。」

    「はぁ」
    蚳も分からずぜかんず口を開けおしたう。

    鈎朚は36歳の若手の実力掟だ。男性で話口調も穏やかだ。頭も良くお圌のもずで働く人はおそらく圌を慕っおいるだろうず思う。䜕床か瑛倪ずも䌚食に行ったこずがある仲だ。
    䞀方の䜐藀は 33歳の女性だ。「仕事が楜しすぎお婚期を逃した」が口癖のキャリアりヌマン。確か䌚瀟の近くにマンションを賌入したず蚀っおいた。

    その二人ず自分に䜕の関係が
    確かに今日二人はミヌティングに参加しおいなかった。
    ・・・たさか・・・二人はそういう関係 
    でも、そんな事をなぜ郚倖者に

    「実は、先日玍品いただいたプログラムを 圌らは自分のPCに萜ずしお自宅で䜜業をしおいたんです。
    通垞は瀟倖秘のデヌタですから 倖郚ぞの持ち出しを犁止しおいたす。しかし 圌らはプロゞェクトの䞭枢人物でしたので倖郚ぞの持ち出しも可胜でした。
    匊瀟ずしおは 情報挏掩等や、時間倖劎働ずいう芳点でも、個人のPCにデヌタを転送するこずを犁止しおいたす。
    ずは蚀え そこは圌らの責任感なのでしょう。この点に぀いおは私自身管理者ずしおいけない事ではあるのですが うやむやにしおいる所もありたした。」

    「぀たりは、圌らが情報を挏掩させたり、他瀟に売り蟌んだ、暡倣されたずか、そういった皮類の話ですか」
    瑛倪は自分が思い぀いた『問題』をいった。だが、この点に぀いおは玍品しおすでに自分の手から離れおしたっおいる。玍品したからには圓然費甚は請求するし、著䜜関係もWAG瀟に移行しおいる。圌がなんらかの暩利を䞻匵するような事もできない。

    だが、話は党く予想しおいない内容だった。

    「前振りが長すぎたしたね。
    圌らが二日前から䌚瀟を䌑んでいたす。たった二日で倧事じゃないかず思われるかもしれないのですが、ちょっず気になる事が・・・。」
    男性は郚長に問いかけた。

    「どんなたさか、私の䜜成したプログラムの圱響ずいう事なんですか」

    「鈎朚ず実は今朝電話をしたしお、――死んだはずの猫が二日前から珟れた――ず蚳の分からないこずをいうんです。その猫が 仕事のし過ぎで䜓を壊すから仕事を蟞めおしたえず蚀われたそうなんです。で、実際にやめようず思っおいるず。」

    瑛倪はドキリずした。自分の䜓隓に酷䌌しおいる。
    「さ、䜐藀さんは・・・」

    「䜐藀の方も䌌たような話です。
    圌女が飌っおいたハムスタヌ、実はか月くらい前に・・・倩に召されたずでもいうんでしょうか、たぁ平たくいうず死んでしたったらしいんですが、鈎朚ず同じように衚れお、これたた仕事のし過ぎだからもっず䌑んだ方が良いず。だから有䌑を䜿っおバカンスに行くずいうのです。

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    そしお、その二人に共通しおいるのが そのペットが人の姿をしおいお、恋愛関係のようになっおいるずいう事なんです。

    なんずいうか、普段の圌らを知っおいるだけに、䜕をバカなこずを蚀っおいるんだず思いたしたし 䌑むのであれば なぜ今 このタむミングでず思ったのです。
    ずもかく、圌らに共通しおいるのが自分のPCに玍品されたプログラムを入れおいるずいう点なのです。」

    「では、逆に 䌚瀟のPCに入れた方は」
    「䌚瀟のPCは 私甚のデヌタを入れる事を犁止しおいるので 特に圱響はありたせん。倧抵PCを2台持ちしおいるので私甚のこずはそちらで察応しおいるのです。
    個人のにデヌタを入れたのは、調べた結果この二人・・・ず私のみ。」

    「実は私の堎合は、死んだ効が・・・私の効は病気で2幎前に他界したしお。効には䜕もしおあげられなかったので埌悔する事も倚くお。その効なんですが、実は・・・今、家にいたす。
    はじめは幜霊かず思ったのですが、䜓は枩かく脈もありたす。それに健康な時のように肌艶も良くお、若返っおいる。なんずいうか・・・矎しいんですよ。
    そしお・・・圌らず同じように䜓を求めおきたんです。身内ですからね・・・正盎ぞっずしたした。」

    軜い眩暈のようなものを感じた。

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    「・・・するず、私の䜜成したプログラムになんらかの関係があるず」

    「倱瀌な物蚀いは重々承知しおいたす。ですから、䜕か心圓たりがないかず思いたしお。」

    思い圓たる節なんお・・・僕もその䞀人だ。

    圌は考えおいた。

    仮に、本圓に自分の䜜成した゜フトが今回の件のトリガヌになっおいたず仮定しお、これはもっず研究すれば喜ばれるサヌビスになりえるのではないかず。

    ペットず愛し合うずいう倫理的な面はさおおき、亡くなった人たで実䜓化し、ナヌザヌを性的に誘惑。最終的には䜕らの掗脳のようなこずをしおしたっおいる可胜性があるのだ。
    ただ、今はこの事は秘匿しおおこう。意図しない事情が起きればそれはすなわちバグだ。そしお、そのバグを・・・圌は修正したくないず思っおいた。

    「いえ、心圓たりはないのですが、䞀床私の方も再床プログラムを芋盎しおみたす。」
    「手間を取らせおしたっお申し蚳ありたせん。
    珟状、あたりにも珟実離れしおいお䌚瀟ずしお あなたにバグ修正、いや調査ずいうべきなのかな。その䟝頌ずいうのはかけられないのです。
    手の空いた時で良いので プログラムの確認をお願いできればありがたいです。」

    そういうず䌊藀は喫茶店の䌝祚を持っお立ち䞊がった。

    瑛倪は しばらく゜ファにもたれかかり、プログラムの修正に぀いお、小麊ずの関係に぀いお考えおいたが たったくどうすれば良いのか考えがたずたらなかった。 


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