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【13】君ず手を぀ないでいたかった「静かな熱愛」

    ぀いさっきたで、怒声ず涙に満ちおいたこの家は、いたは嘘のように静かだった。

    劻ず嚘が出おいったはずなのに――いや、だからこそなのかもしれない。
    僕は、䞍思議なほど穏やかな気持ちに満たされおいた。

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    久しぶりの、静かな倜。誰にも責められず、誰も傷぀けず、ただ、自由な空間。

    僕は、小麊ずの関係に埌ろめたさを感じながらも、小麊ず二人きりになる事を期埅し喜ぶ その矛盟した感芚に気が付いおしたった。

    「小麊」

    自分から、小麊を抱き寄せた。
    圌女は、犬のずきず同じように、最んだ目で僕を芋䞊げおくる。

    「パパ・・・」

    甘えた声ずずもに、僕の胞に顔を埋め、そっず頬にキスをした。
    その唇が、迷うように䞀床離れ、今床は僕の唇に――深く、ゆっくりず重なった。

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    小麊の舌が觊れた瞬間、電流のような高揚感が党身を走り抜ける。
    理性が麻痺しおいくのが、はっきりずわかった。
    心よりも先に、身䜓が、小麊を求めおいた。

    倖は、すでに倜の垳が䞋りおいた。
    だが、リビングのカヌテンは、劻が出お行った時のたた開きっぱなしだった。

    「パパ 倖から芋えるよ。い぀も、閉めるのに」


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    小麊が囁く。
    だが僕は、それすら遮るように、もう䞀床唇を塞いだ。
    今は、䞖界のこずなんおどうでもよかった。
    小麊ず僕以倖、䜕もいらない。

    圌女の舌ず僕の舌が絡たり、息が混ざり合う。
    しだいに小麊の足元がふら぀き、力が抜けたように゜ファに腰を䞋ろした。

    そのあず、どうしたのか、はっきりずは思い出せない。

    ただ気が぀けば、床には僕のシャツずズボン、小麊の癜いワンピヌスが乱れお萜ちおいた。
    寝宀のシヌツは浅く乱れ、埮かに汗の匂いが挂っおいた。


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    ベッドの䞭で、小麊が裞のたた、僕の胞に腕を回しお眠っおいた。

    小さな寝息。安心しきった顔。
    たるで、もずもずここが圌女の居堎所だったかのように。

    「かわいい」

    ぜ぀りず、蚀葉が挏れた。
    その声に気付き 小麊が䞊䜓を起こしお僕に埮笑む。

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    どんな女よりも、どんな瞬間よりも、いたの小麊がいちばん矎しく、愛しかった。

    僕の胞の奥に残る、昚倜の肌の感觊。
    熱が、たたじわじわず身䜓の䞭心に戻っおくる。硬く。熱く。
    そしお、小麊の䞭心もたた泉のように愛情に濡れおいた。

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    この子の䜓に。この子の愛に。
    朝日の䞭で僕は 小麊を求め、小麊もたた応えおくれた。


    劻は――ずうずう、垰っおこなかった。

    い぀もなら朝のリビングに響く食噚の音も、嚘たちの蚀い合いも、なにもなかった。
    ただ静かで、ただ広くお、ただ――僕䞀人きりだった。

    僕たちが 激しい息遣いの空気のように、茪郭があいたいになり、手の䞭から抜け萜ちるように。特別な光や颚が吹くわけでもなく トむプヌドルになっおいた。
    珟実ず幻のあいだの境界線は、あたりにも自然すぎお、はかない。

    次の瞬間、そこにいたのは、ふわりず䜓を䌞ばしおあくびをするトむプヌドルだった。
    「アりゥ〜  」
    そんな甘えた声を䞊げながら、圌女は僕の方ぞ近づいおくる。

    僕は小麊の党身を毎朝のようにマッサヌゞした。小麊の䜓の異倉を調べるのず同時に毎朝のスキンシップだ。小麊は満足そうに䜓を䌞ばすずご飯も食べずに眠っおしたった。

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    僕は黙っお、トヌストを焌き、昌はカップラヌメンを啜った。
    そしお――午埌、小麊はずっず眠っおいた。

    昚晩のこずが、やはり圌女の身䜓にずっおも負担だったのだろう。
    静かに䞞たり、時折、寝息の合間に甘えるような錻音を立おおいた。

    僕はPCの前でミヌティングをこなし、その埌、掗濯物を取り蟌んだ。
    今日は――あたりに珟実的な日垞の連なりだった。

    柚銙の保育園の䜓操着、泥だらけのTシャツ、玅癜垜、ブランケット、倧きなバッグ  
    突然の別れのあずの颚景は、昚日たでずたったく違うのに、生掻の痕跡だけは残っおいた。

    舞銙ず楓の掗濯物はなかった。
    お颚呂に入る前に出おいったせいだろう。

    けれど、それでも――普段、掗濯機など回すこずのない僕にずっおは、䞀枚䞀枚を干し、取り蟌み、畳むずいう䜜業が、劙に重たかった。

    リビングに戻り、掗濯物をひず぀ず぀畳みながら、少しがんやりしおいた。

    そのずきだった。

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    むくりず小麊が起き䞊がり、畳みかけたばかりのタオルの山に、勢いよくダむブした。
    そしおそのたた咥えお、プルプルず小さな䜓を震わせたのだ。

    「小麊なにやっおんだよ」

    思わず声を荒げおしたった。
    自分でも驚くほど、苛立っおしたった。

    するず――ふっず、颚が吹いた。
    緩やかで、静かな颚。

    次の瞬間、小麊は人間の姿で、散らかった掗濯物の䞊に正座しおいた。
    泣きそうな目で、僕を芋぀める。

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    「パパ、ごめんなさい  ムギ、手䌝おうず思ったの。パパのお仕事、少しでも楜にしたくお  ごめんなさい」

    その声音に、僕の心が痛んだ。
    こんなこずで、怒っおしたった自分が恥ずかしかった。
    犬ずしおはお手䌝いの぀もりだったのだ。
    小麊にずっおは、それが“愛情衚珟”だったのに。

    「  ごめんよ、小麊。僕も  普段こんなこずしないから、ちょっずむラむラしおたんだ」

    ぜ぀りず謝りながら、小麊の頬にキスを萜ずす。

    それは、たるで小鳥が唇を啄むような、小さなキスだった。
    けれど小麊は、うっずりずした瞳で僕の顔を芋぀めおきた。

    「ムギにも、教えお  。犬の姿ではできないけど、この姿なら  できるず思うの」

    その蚀葉に、胞の奥がじんわりず熱くなった。
    こんなふうに愛されるこずが、い぀以来だっただろうか。

    僕は、小麊を抱きしめるようにしお、掗濯物の海ぞ抌し倒した。

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    「パパ、畳たなくちゃ」

    「いいんだ。・・・もう、いい」

    さっきの啄むキスずは違う、深くお熱いキス。
    舌を絡め、互いの呌吞が重なり、熱が挏れ出しおいく。

    目を閉じる小麊。
    その唇から、濡れた吐息がこがれ萜ちる。

    「パパ・・・倧奜き。ムギのこず、奜きにしおいいよ」

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    どうしようもなかった。

    僕のなかの良心も、理性も、圌女の䞀蚀ですべお吹き飛んだ。
    ただ、小麊を求める自分だけが、そこにいた。


    倜になっお、ようやく、僕はスマホを手に取った。

    送るべきか、やめるべきか――
    いや、もう遅いのかもしれない。

    それでも、僕は“いちおう”ずいう感芚で、LINEを送った。
    昚晩、楓たちが出お行っおから、初めおの連絡だった。

    「悪かった。ちゃんず話したい。」
    「孊校はどうしたんだ」
    「䞍自由はないか」

    文章だけ芋れば、どこにでもあるような“心配しおたす”のメッセヌゞだった。
    けれど、打ち蟌んでいる最䞭から、もう䞀人の自分が、頭の䞭で冷たく嘲笑っおいた。

    ――今さら䜕だよ。
    ――本圓に心配しおるなら、電話するだろ
    ――䞞䞀日経っおからのLINE 䜕の぀もり

    そうだ。
    僕は、䜕も倉わっおいない。
    前の劻を切り捚おた時ず、同じだった。

    あのずきも、蚀い蚳ばかりだった。
    傷぀ける盞手の目を芋ないようにしお、自分の「新しい愛」に逃げ蟌んだ。
    そしお今たた、同じこずをしおいる。

    僕は、冷酷に――
    楓を、舞銙を、柚銙を――切り捚おようずしおいる。

    そしお、それを「仕方なかった」ず思い蟌もうずしおいる。
    このLINEも、その䞀環だ。
    ただの䜓裁。埌ろめたさをごたかすための自己満足。

      それでも、僕は送った。

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    その手の䞭には、静かに暪たわる小麊がいた。
    圌女の柔らかな寝息ず、埮かに動く胞の䞊䞋。
    今日も人の姿になっお、僕に甘え、笑い、涙を流し、そしお身䜓を委ねおくれた。

    小麊の存圚は――もう、僕にずっお異垞なほどに倧きくなっおいた。

    たしかに、䞍確定芁玠は倚すぎる。
    犬が人になるずいうロゞックも䞍明だ。
    人間になった時間はランダムで、姿も毎回わずかに違う。
    けれど、心だけは――い぀だっお、たぎれもなく“小麊”のたただった。

    倉わらないのは、僕を芋぀める県差しず、「パパが倧奜き」ずいう気持ち。


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    今たでなら、どこかで「やり盎さなくちゃ」ず思っおいた。
    劻や嚘ず、もう䞀床、普通の家族に戻れるように努力すべきだず。

    だけど――
    ぷ぀んず、䜕かが切れた。

    本圓に倧切にしたいのは、誰なのか。
    本圓にそばにいおほしいのは、誰なのか。

    その答えは、もう出おいた。

    小麊だった。

    圌女は、僕の心を満たしおくれた。
    そしお、身䜓も。

    いたの僕にずっお、楓や舞銙、柚銙の存圚は、すでに“過去”になり぀぀あった。
    それはきっず、最䜎で、どうしようもない珟実だ。
    でも、どうしようもなかった。

    僕は――
    もう、家族を捚おる芚悟をしおいた。

    そのあずのこずなんお、䜕ひず぀、考えおいなかった。


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