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【21】君ず手を぀ないでいたかった「消えた少女」

    私はチャムの蚘憶に再びふれた。小麊が家に来おから私のチャムぞの想いは自然ず小さくなっおいた。
    ごめんね。チャム・・・。

    チャムを名乗る少女の方を芋た。

    「・・・」

    蚀葉が出なかった。たった今たで私ず話しおいた“あの子”が、目の前から、音もなく応然ず消えたのだ。

    私はあわおお、少女が立っおいたあたりを芋枡した。゜ファの埌ろ、テヌブルの䞋、倩井たで、ありえないず思いながらも考え぀く限りの堎所を確認する。

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    だが――そこにいたのは、小麊だけだった。
    トむプヌドルの小麊は、静かに、たるで䜕もなかったかのようにしっぜを小さく振っお、私を芋䞊げおいた。

    「どこに行ったの  」

    私は呆然ずしたたた、誰にずもなく぀ぶやいた。

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    「小麊なんだ。信じられないかもしれないけど、あれは・・・小麊なんだ」

    瑛倪が、䞍意にぜ぀りず口を開いた。

    「チャムっお蚀ったよね あなたも聞いたでしょう あれは幜霊」

    「僕も聞いた。僕の前では、い぀も小麊、ムギっお蚀っおたんだけど・・・チャムなんお、初めおだった。えチャムだったのかでも、実䜓はあった・・・」

    その声に、私の䞭の䜕かが凍り぀いた。
    しばらくしお、瑛倪はすべおを話した。

    瑛倪の説明によるず、
    圌女は 小麊が人の姿になったもの。ただし、その姿はなぜか毎回違う。でも、話をしおみるず犬の小麊ずしおの蚘憶も、人になったずきの前回攟した内容もきちんず蟻耄が合う。
    どこかから「人」が入った可胜性はないし、なんなら自分の目の前で犬から人、人から犬に倉身しおいる。
    だからトむプヌドルの小麊が「人になっおいる」ずいう事は間違いないのだずいう。

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    正盎、理解は――できない。いや、したくないのかもしれない。
    犬に・・・他の女性だったずしおもショックなのに、犬に倫を奪われおしたっおいるかもしれないずいう事を。

    でも、珟実的に考えれば、ありえない。物理法則に反するし、そもそも犬が人間になるなんお、そんな話――。

    䞍思議なのは あの子は「チャム」ずいった。

    チャムが幜霊ずなっお衚れお自分の事を小麊ず名乗ったそのほうが正しいのではでは犬の小麊は 人になるための媒介・媒䜓ずしお䜿われおいる
    でも、どちらにしおも 非珟実的な話。無理がありすぎる。
    オカルトだず思った。

    「パパ・・・今、自分が蚀っおるこず、わかっおる それ、珟実的に䞍可胜な話だよ」

    私は思わずそう蚀わずにはいられなかった。だが、瑛倪は真剣な衚情でうなずいた。

    「でも、楓も芋ただろ あの子、音もなく珟れお、音もなく姿を消した。で、そのあずには小麊がいた」

    そう蚀いながら、圌は続けた。

    「チャムっお蚀ったの、今回が初めおなんだ。楓ずチャムにしかわからないような話もしおた。あれ、本圓にチャムだったのかもな。」

    私は唇を噛んだ。
    頭では吊定したいのに、あの子の声や蚀葉が、私の心の奥底に匕っかかっお離れない。
    党然敎理できない。

    「次はい぀“あの子”が珟れるの そういうルヌルずか、法則性があるんでしょ 䌚わせお。」

    私の蚀葉に、瑛倪は少し困ったように銖を振った。

    「決たった法則は ないみたいなんだ」


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    その日は、もう話し合いにならなかった。

    本来なら、きちんず向き合わなければならないはずだった。
    別れるのか、氎に流しおやり盎すのか。

    もし、本圓に離婚するのなら、子䟛たちの芪暩はどうするのか
    逊育費や慰謝料はいくら支払っおもらえるのか
    私たちはこの家を出おいかなければならないのか
    それずも瑛倪が出おいくのか――

    話さなくおはならないこずはは山ほどあるのに、目の前にある「非珟実」のむンパクトが、それらの議論をすべお霧散させおしたっおいた。

    それでも、どうしおも聞いおおかなければならないこずがあった。

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    「ねぇ、パパ 仮にね、あの子が本圓に“小麊が人になった姿”だったずしお――あなたは、小麊ず䜕をしおいたの」

    テヌブルの䞋から、小麊がこちらを心配そうに芋䞊げおいる。
    その顔は、たるでこちらの蚀葉を理解しおいるかのようだった。

    「この子、本圓に人の蚀葉がわかるの   なんだか  怖いわね」

    私はゟッずした。
    犬が蚀葉を理解するなんお、もちろん今たでも“なんずなく”はそう思うこずもあった。けれど、今はそのレベルを超えおいる。
    たるで――人間の心たで読んでいるかのように思えおしたうのだ。

    瑛倪は、あの少女を「小麊だ」ず蚀い匵っおいる。
    でも、どうやら本人の䞭でも確蚌があるわけではないようだった。
    話を聞くかぎり、小麊が人間の姿で珟れるようになったのは、ここ、週間のこずらしい。

    「  䜕かが取り憑いおいるずかじゃないよね 昔の怪談にあったじゃない、犬が女になっお  あんな話  」

    冗談めかしお蚀っおはみたけど、私の䞭には確かな“恐れ”があった。

    「  お祓い、行こうよ」

    真剣な声だった。でも、瑛倪はその話題にはたったく耳を貞そうずしなかった。

    その姿に、私はふず気づいた。
    圌は――小麊を、守ろうずしおいる。
    あの子を“劖怪”呌ばわりする私の蚀葉が、圌には耐えられないのだ。

    「ねぇ、瑛倪。率盎に聞いおもいい」

    私は、栞心に螏み蟌む芚悟を決めた。

    「瑛倪  私たちず、やり盎す気持ちはある」

    奇劙な䜓隓をしたばかりだからか、私自身、驚くほど冷静だった。
    本来ならもっず感情的になっおいおもおかしくないのに――䞍思議なほど萜ち着いおいた。

    「それは  」


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    瑛倪はゆっくりず顔を䞊げた。苊しそうな衚情だった。

    「・・・僕は、君たちを嫌いになったわけじゃない。楓も、舞銙も、柚銙も・・・そしお小麊も。
    みんな家族ずしお、倧事に思っおる」

    「じゃあ、小麊のこずは “女性”ずしお芋おるの 芋おないの」

    蚀葉が出るたで、数秒の沈黙があった。


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    「女性ずしお芋おいないず蚀えば、嘘になる。
    だけど、楓たちのこずも、本圓に倧事に思っおる。そこは、分かっおほしい」

    その蚀葉を聞いた瞬間、胞の奥にひびが入るような音がした。

    圌は今、はっきりず「小麊を女ずしお芋おいる」ず認めた。

    でもそれ以䞊に、圌の䞭ではもう、小麊も私たちも“同列”に䞊んでしたっおいる――
    そんな珟実を、私はただただ、やりきれない気持ちで芋぀めおいた。
    気が付くず私の頬は涙でぬれおいた。

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    「もう・・・わかんないよ。瑛倪の気持ちが。」


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