
✐☡ ネコと和解せよ。#気まぐれな猫。
私は、猫を飼い始めたばかりだった。
そっけないかと思えば、急にすり寄って甘えてくる…
そんな猫の性格は、あまりにも気まぐれに思えた。
実家でずっと飼っていた犬と比べると、どうしても扱いづらい。
お互いに歩み寄れず、私たちは、時々本気で喧嘩してしまうこともあった。
『 もう、なんなのよ! 』
ある日、ついに猫の理不尽な態度に怒りが爆発し、急に実家の犬が恋しくなる。
──── あの無条件の癒やしが欲しい
そう思い立ち、猫を留守番させて実家へ帰ることにした。
車を走らせる道中、ふと目に入った奇妙な看板が、視線を奪う。

『 …なにこれ? 』
黒地に黄色の不気味なフォントで書かれたその文句が妙に頭に残り、実家に到着すると早速スマホで検索してみた。
『 ネコと和解せよ 』とは、特定の人物や団体のスローガンではなく、聖書の言葉を引用したキリスト教の伝道看板「 神と和解せよ 」の 「 神 」の文字が、いたずら等で「 ネコ 」に書き換えられた画像、およびそこから広がったネットミーム( ネタ )のことです。
──── へぇ…
変ないたずらをする人がいるんだなぁ
画面を閉じ、スマホをポケットにしまう。
久々の実家は、ゆっくり休めてとても快適だった。
いつも自分を振り回すあいつのいない空間は穏やかで、懐かしい安心感に満ちている。
…ただ、たった一つのことを除いては。
『 ワンッ! ワンッ! 』
実家の犬は、私の帰宅に大喜びして、ちぎれんばかりに尻尾を振って飛びついてきた。
明るくて、人懐っこくて、素直で、感情表現がとにかく豊か。
かつて愛してやまなかったその純度 100 % の好意と、休むことなく続く全力のコミュニケーションに、ほんの少しだけ…疲れてしまっている自分に気づいた。
──── 贅沢な悩みだけど…
ちょっと、眩しすぎるかも…
あんなに嫌だったはずの、あの静かで、何を考えているか分からない心地よい距離感が、なぜか頭をよぎる。
夕方になり、私は実家を後にした。
自分の部屋に残してきた、あの気まぐれな居候のもとへ帰るために。
車を走らせる帰り道。
途中見かけたあの場所を通り過ぎようとして、私は思わずブレーキを踏みそうになった。
昼間見たその看板の、すぐ隣。

いつの間に設置されたのか、全く同じフォントの新しい看板が、夕闇の中で不気味に、しかしどこかユーモラスに並んで立っていたのだった。