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【児童文学】色と光の水えい大会《シロクマ文芸部:ボルコットの「夜店から」》


    夜店から、しょうゆのこげたにおいがして、ジュンちゃんは首をのばして、はなから息をすいこみました。

    すると、どこからか目のまえに小さなキラキラがとび出してきて、ジュンちゃんは思わず頭をよけました。

    そのひとつが、右のほっぺにいっしゅん、くっついたと思ったら、すぐに小さなつぶつぶになったのがわかりました。

    ジュンちゃんは、すぐに、お気に入りの浴衣がよごれていないか、両手で、すそを少しもち上げて、よく見おろしました。

    夜の風が、気持ちよくとおりぬけて、キラキラが空にまい上がり、わきの下が少しだけひんやりとします。

    「フフ、ジュン。シャボン玉ね」

    ジュンちゃんのお母さんが、向こうを指さしました。

    小さな女の子が、しばふの上で、シャボン玉をたくさん作るおもちゃをにぎって、お父さんと、お母さんといっしょに、うれしそうにあそんでいました。

    夜のシャボン玉は、ちょっと白っぽくて、お店のランプがたくさん空にうかんでいるようでした。

    「お母さん、あした、シャボン玉やろうね」

    ジュンちゃんは、しっとりとあたたかい、お母さんの手をにぎりました。



    ジュンちゃんは、お父さんにおしえてもらった「ひみつのシャボンえき」で、とっても大きなシャボン玉を作るのがとくいでした。

    ジュンちゃんがまだ一年生のころ、お父さんが、すいかみたいな大きなシャボン玉を作ってくれたことがあります。

    「お父さん、すごい!」

    シャボン玉が大きくなっていくと同時に、ジュンちゃんの頭のてっぺんが太陽にてらされて、あつくなっていきました。

    ジュンちゃんがしゃがんで顔を近づけると、シャボン玉の上にも下にも空と雲がうつって見えました。

    そのうすいガラスみたいなフワフワに、たくさんの色が空の光とまざりながら、うずまくようにゆっくりと動いています。

    ときどきちぎれて、とびはねるような動きは、まるで色と光の水えい大会のようです。

    むらさき、がんばれ。

    みどり、がんばれ。

    青がぐるっと、追いこしていく。

    やがてお父さんのシャボン玉は、ゆっくりおりていくと、しばふの上でパッと消えて、ジュンちゃんの両足に小さなつぶつぶがとびはねました。

    「わたしもやりたい!」

    ジュンちゃんが、立ち上がって手をのばしました。

    でも、ジュンちゃんがためしてみると、シャボン玉はすぐにわれてしまいます。

    「ほっぺの力をぬいて、ゆっくり、大切に、いきを出してごらん。何か、ねがいごとをしながら、ふくといいよ」

    お父さんが、ゆっくりと両手をふくらませながら言いました。

    ジュンちゃんは大きくむねをひろげていきを止めると、ほっぺをやわらかくふくらませ、ストローをくわえてゆっくりといきを送りこみました。

    まわりの音が小さくなった気がして、そのぶん、目の前で少しずつキラキラが大きくなっていきました。

    ジュンちゃんの見える世界いっぱいに、色と光がおよいでいます。

    耳の下あたりが、しみるようにいたくなったけれど、なんとかがんばって、とうとうジュンちゃんは大きなシャボン玉を作ることができました。

    風がふいて、ジュンちゃんのシャボン玉は、にわのおくまでうかんでいきました。

    「できたよ、お父さん!」

    お父さんは、とてもうれしそうに、ジュンちゃんの頭をなでました。

    ジュンちゃんのかみの毛が、くしゃくしゃっとお父さんの手にくっつきました。



    「さあ、そろそろ帰ろうか」

    お母さんが、ジュンちゃんに声をかけました。

    ジュンちゃんとお母さんは、夜店のにぎやかな音をせなかに聞きながら、歩き出しました。

    ジュンちゃんは、大きなシャボン玉をふくと、今でもお父さんに会えた気もちになります。

    「明日も、大きなシャボン玉作るんだ」

    ジュンちゃんは、どんなねがいごとをしようか考えながら、お母さんの顔を見上げました。

    「そうね」

    お母さんはにっこりと笑いました。

    お母さんの向こうがわで、星のようにシャボン玉が空にまい上がっていくのが見えました。


    (完)

    ※より子どもの目線に立って紡いだ「ひかり と いろ の 水えい大かい」も是非ご覧ください。

    【※注意】この作品について、剽窃、改変、および生成AIへの学習利用は、理由を問わず固くお断りいたします。すべての権利は著者に帰属します。
    ――ルイーザ・ジューン・ボルコット
    (画像はNano banana 2で作成しています。)

    #シロクマ文芸部  

     
     
    子供のころ、物書きになりたかったけど無難に普通に働いてる30代一般人。 いろいろと考えるきっかけがあって、人生を振り返り文章に残すことにしました。 男性をあまり信じていない。動物は好き。雪国育ち。 トンカツを好きなだけ食べられるくらいにはお金は必要と思っています。

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