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Photo by13blog_sasayama

【創䜜】アダヌゞョ 第話


    「今日はキンむロが来ないな」 

    おじいちゃんは庭の池にかかる倪錓橋から逌をやり、黄金色の鯉を探しお橋から乗り出すように眺めた。

    「ああ、いたいた。随分ず遅いお出たしだ」

    他の鯉よりも䞀回り身䜓の倧きいキンむロは、焊る颚でもなく悠々ず泳いで来おは逌にあり぀いた。その姿はたるで、背が高く筋肉質で、䜕事にも動じないお父さんみたい。

    「翠は気迫っお分かるかい」

    「うん。高村光倪郎の詩に出おきお、習った」

    鯉は食べるものが無くなるず、裏切り者のように散り散りに泳いで行っおしたう。

    「僕の前に道はない。僕の埌ろに道は出来る。あれはいい詩だな。心の栄逊になる」

    心の栄逊。私は鯉が行き亀う氎面を芋぀めながら、そのこずばを心の䞭で繰り返した。

    「翠の䞖代は良い奏者が揃ったね。翠もそうだが、山田君の息子も䜐々朚君の息子も玠晎らしい」

    山田君の息子は奏真で、䜐々朚君の息子は、ひず぀幎䞊の倧晎たいせいのこずだ。2人ずもお父さんが有名な箏の垫範だ。

    「だが、私は翠か旭に川厎流を継いで欲しいず思っおいるよ。血でないず継げないものがある。気迫のようなものだ。翠は家を継ぐこずを、どう想う」

    「ただ分からない。お箏は奜きだけど、みんなが敷いおくれたレヌルの䞊を、楜に進むようで」

    そう蚀うずお爺ちゃんは、私の顔を芋お小さい子どもを芋るように和かに笑った。

    「翠、実際は、誰の前にも道はないんだ。敷かれたレヌルなんお、䜕凊にも存圚しないんだよ。どの道が楜で、どの道が険しいかなんお、誰にも分からないんだ」


    ヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌ


    「え、わざわざこんなこずしなくおも良いのに」

    翠に借りた教科曞を返す時、自販機に翠が奜きなココアが売っおいるのを思い出したから、぀いでに買っお持っお行った。

    「でも翠、これ奜きだろ。教科曞、助かったから」

    「ありがずう」

    翠は俺に埮笑んだ。俺は翠の笑った顔が奜きだ。もっず芋たいず思っおしたう。

    「翠、これから郚掻」

    「ううん、詊隓前だから今日はないの。奏真は」

    「俺もない。じゃ、䞀緒に垰ろう」

    「え、でも圌女さんず垰らなくおいいの」

    「別に玄束しおないから、いいんじゃない」

    昚日たっぷり喜ばせたから、今日は別にいいだろう。

    「そういうもの」

    「そう。先、飲んだらそれ」

    そう蚀われお翠は自分の垭に座った。俺も前の垭を借りお座る。ごめんね私だけ、ず蚀う翠に、喉也いおないからず返す。

    「おいしヌい」

    「盞倉わらず食いしん坊だな、翠は」

    翠は矎味しいものを口にするず、子どもみたいになる。小さい頃から、奜きなものを食べるず、たるで倩囜に蟿り着いたような顔をしおいた。あれだけ倧人びお堂々ずした挔奏をするのに、このギャップはい぀も䞍思議に感じる。

    「奏真っお優しいよね」

    「そうかな」

    ココアが矎味しいのか、翠は極䞊の笑顔で話す。絹のような黒髪が揺れお、倩䜿の茪が動く。

    「䟋えば、私が話し始めようずしお、でも他の人の方が早かったり声が倧きかったりしお話せなかったずき、『翠、䜕か蚀った』っお必ず聞いおくれるでしょそういう现かいずころたで、気がきいおるなっお思う」

    「ああそれは、母さんが話すの遅いだろ」

    「䞀華ちゃんおっずりしおるよね」

    「うん。それで間が悪いこずに、話そうずするず、だいたい他の人ず被っお話せなくなるんだ。それで、父さんがい぀も『䞀華、䜕か蚀った』っお聞く」

    「䜕か、想像できる」

    「だろそうするず母さんが、すごく幞せそうな、溶けたような顔をするんだ。小さい頃からそれが印象にあるからかな」

    「優先生ず䞀華ちゃん、本圓に仲良しだよね」

    翠には状況が思い浮かぶのか、女子たちが黄色い声を出す時のような顔をしお蚀う。

    「それは、翠のずころもだろ」

    「ほんずほんず、お父さんが䜕凊でもお母さんを抱きしめるから、こっちが恥ずかしくなっちゃう」

    「すご。晃茝先生、海倖生掻が長かったからかな。凪先生、嫌がらないの」

    「嫌そうなこず蚀っお、実際は嬉しそうだよ。杏は芋るず『りザっ』っお蚀っお、旭は䞀緒になっお抱っこしおもらっおる」

    そう蚀っお倧きい目を现めお楜しそうに笑う。翠は家族が倧奜きだ。それは倧晎も俺も同じで、家族の話は3人でいるずよく出おくる。䟋えばこれを圌女に話すず嫌がられるから、他の奎には俺はしないけど、䞭3にもなっおおかしいかな。

    「ごちそうさたでした。ありがずう奏真。垰ろ」

    翠の隣は心地良い。孊校から3駅電車に乗っお川厎流本家に送るたで、歪に感じる気たずい瞬間ずいうのが、翠には存圚しない。翠の歩幅に合わせお歩くのも、意識せず楜に出来る。幌銎染は、安心出来る倧切な仲間だ。

    「ありがずう奏真、鞄たで持っおくれお」

    「別にいいよ。じゃあたた明日」


    ヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌ


    私は奏真に片想いしおいる。ただ5歳の頃、奏真は私に結婚しお、っお蚀ったけど、奏真はそんなのもう芚えおいないだろう。

    長い間、私は奏真に幌銎染以倖の感情は抱かなかった。䞀緒に育った同じレベルの男の子。だけど小孊生の高孊幎になるず、奏真の背は急に䌞びお、声も䜎くなり、芋䞊げないず話せないようになった。

    小孊幎生の時だった。奏真の入っおいるバスケチヌムが他区のチヌムず詊合をするから、ず誘われお、奏真の家族ず倧晎ず䞀緒に応揎に行った。

    䌚堎の東京䜓育通に入るのは初めおで、ワクワクした。ピカピカに磚き䞊げられたアリヌナの床。姿勢良く立っおいるゎヌルポスト。皆で良い垭を陣取っお座るだけで、未知の䜓隓に興奮した私は倧晎に「うるさいぞヌ」ず、髪をわしゃわしゃされた。

    奏真のチヌムは盞手チヌムに負けおいた。あず少しなのに逆転出来ない。

    「私、奏真のあんな顔、芋たこずない」

    い぀も穏やかな顔をしおいる奏真は、䞀瞬の隙も逃さず獲物を仕留める肉食動物のような、真剣な顔に倉わっおいた。

    「いい顔になっおきたな。こっから面癜いずころだ」

    倧晎が隣で説明する。バスケのルヌルはよく分からないけれど、この匵り詰めた空気は挔奏の前に近いず思った。極床の緊匵ず、背䞭に負う期埅。そんな䞭、奏真が声を出しおいる。仲間から集たる芖線、繋ぐパス。

    「倧晎奏真がリヌダヌみたいになっおる」

    私は奏真から県を逞らさずに、倧晎に話しかけた。

    「バヌカ、あい぀ぱヌスだよ。7番だろ」

    「そうなの」

    奏真は普段、私ずいる時は歳䞊の倧晎ず䞀緒のこずが倚いからか、リヌダヌ気質に感じない。だけど、今日の奏真はたるで違う。怖いくらい鋭い県、獲物を仕留めるためのような機敏な動き、聞いたこずのない倧声の早口。

    「7番をマヌクしろ」

    奏真は盞手チヌムに囲たれお、なかなか動けなかった。心臓がバクバクしお、思わず胞の前で手を組む。

    「いい動きだな、行け奏真」

    倧晎が叫んだ。䞀瞬の隙を぀いお、奏真が盞手のガヌドを振り切り、パスを受けた。そのたたあっずいう間にゎヌル近くたでドリブルしお行ったず思ったら、信じられないこずが起こった。

    奏真がゞャンプしおシュヌトした瞬間、時間が止たったように感じた。奏真が宙に浮いおいるように芋えたんだ。奏真はたるで鳥のように䞀瞬止たり、それからはスロヌモヌションでボヌルがゎヌルネットに吞い蟌たれた。

    「やったゎヌル‌」

    私ず倧晎は抱き合っお喜んだ。

    それから奏真のチヌムは巻き返し、䜕ずか逆転しお勝利を収めた。チヌムが応揎垭の方に䞊び、頭を䞋げお挚拶しおくれた埌、奏真は倧晎ず私を芋お笑顔になり、軜く手を䞊げた。

    県が合ったように感じた瞬間、心臓がバクンず音を立おお倧きく鳎り始めた。その日から私は、この蟛い痛みを䞎える動物のようなものを、胞の䞭に飌っおいる。

    奏真に初めお圌女が出来た時、その動物は私の胞の䞭で倧暎れしおあちこちを傷぀け、苊しくお痛くお堪らなかった。奏真がその圌女ず別れたず知るず、幌銎染の䞍幞なのに玠盎に悲しめなかった。むしろ喜んでしたう自分を芋぀けお、たた悲嘆に暮れた。

    どうしお人は恋なんかするんだろう。こんなの、神様が䞎えた呪いでしかない。



    奏真ず垰った次の日、私は高校生の先茩3人組に呌び出された。胞が峰䞍二子ちゃんみたいなリヌダヌ栌のセクシヌ矎女ず、その取り巻き的な2人だ。

    こ、校舎の裏に呌び出しずか、どんな昭和ですか。

    おいうか校舎の裏がある孊校、おかしくない
    しかもここ、良家の子女察象の孊校のはずですが、それなのに呌び出し



    「あなたね、䜕様の぀もりなの」

    「わ、わたくしは善良な䞀垂民でございたす」

    「あら。ここ、東京なんだけど、あなた垂民なの区倖の人」

    い、いえ、蚀い間違えただけなんですが、突っ蟌むずころ、そこですか。




    続きはこちら。

    以前の話はこちら。





     
     
    10歳男児の母。自称USCB(りルトラスヌパヌ超絶矎女)。゚ッセむ創䜜ピアノ匟き語り読曞スピ。 登録日本語教員&着付講垫。advanced marketer。専門孊校で、着物で留孊生に日本語やマヌケティングなどのビゞネス科目を教えおいたす。

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