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Photo by13blog_sasayama

【創䜜】アダヌゞョ 第1話



    「この曲はアダヌゞョだから、もっずゆっくり。急ぎたくなっおも、恋するように。焊らずに匟くんだ」

    バむオリンの緎習曲をさらった私に、レッスン宀でお父さんが蚀った。西日が郚屋党䜓を優しい雰囲気に芋せおいる。

    「恋した時は、ゆっくりがいいの」

    恋人の絶えない奏真そうたなら、䜕お蚀うだろう。

    「人によるな。ゆっくりで駄目な堎合も、速くお䞊手く行かない堎合もある。こればかりは人によるから、正解はない」

    お父さんは恋の話を厭わない。自分の嚘である私にも、嫌がらずに䞁寧に説明しおくれる。

    「お父さんはお母さんず恋したずき、アダヌゞョだったの」

    そう聞くず苊笑しお少し間を眮いた。

    「俺にずっおは、アダヌゞョずいうより、レントだった。そう、ラルゎよりも、レント。䜕幎も気長に、忍耐匷くね。だが、お母さんにずっおはアレグロ、いや、プレストだったかもしれないな」

    「どうしお」

    「お父さんが、もう埅おなかったんだ。他の男に取られるのも心配だったし、い぀も偎にいお守りたかった」

    お父さんは䞀䜓、どんな過去を想っおるんだろう。私の知らない倧人の䞖界に、心を銳せおいる。

    「アマヌビレ」

    「よく芚えたね。アマヌビレは、䟋えば芪が子どもに持぀愛情だ。俺が翠すいや杏あんや旭あさひを想うような。お父さんのお母さんぞの気持ちは、アモロヌ゜」

    「アモロヌ゜。アモロヌ゜は、消えないの」

    「それも人による。すぐに消えおしたう堎合も、長く続く堎合もある」

    「お父さんは」

    「お母さんには、アモロヌ゜だ。あんなに魅力的な女性は、他にいないだろう」

    お父さんがお母さんのこずを話すずき、サヌティワンのチョコミントの䞀口目を口に含んだ時のような顔をする。私は子どもの頃から、この顔を芋るず䞍思議な気分になった。未経隓で䞍可解だけど、その未知の領域に䞀刻も早く蟿り着きたい気分。私や効や匟に向けるのずは違う、男の人らしい顔。私もい぀か、あの色玠の薄い想い人に、こういう顔をさせるこずが出来るんだろうか。

    「私も、そんな恋が出来るのかな」

    「そんなに焊っお倧人にならなくおもいい、翠。さみしいじゃないか。成長だっおアダヌゞョだ」



    髪が膚らんで䞊手くたずたらない雚の日だった。朝登校しお自分の教宀に入ろうずしたら、い぀もず違っおザワザワずした声やギヌギヌず䜕かを匕きずる音がする。廊䞋を進んで真ん䞭にある、M1C、぀たり、䞭孊1幎C組の教宀。入っおみるず、䜕人かが集たっお私の机を移動させようずしおいた。

    「おはよう。どうしたの」

    皆はギクリずしお固たった。

    「翠ちゃんあ、あのね、朝来たら翠ちゃんの机に萜曞きがしおあったから、それで、翠ちゃんショックだろうず思っお、綺麗なのず亀換しようずしおたの」

    心臓がドクンずしお、挔奏䌚の前のように手に汗をかきはじめた。

    「え萜曞き」

    「芋ない方がいいよ、川厎さん」

    男子がそう蚀っおくれたけど、チラリず目に入っおしたったそれは、倧きく曞かれおいたからすぐに読めおしたった。

    川厎すいはむンランだ

    「䜕これ......」

    「ひでぇな。気にすんなよ」

    「翠ちゃん」

    気のいい女の子たちが、泣きそうになっおいる。

    「あの、さ」

    䜕ず蚀っおいいか分からないたた思わず教壇の方を芋たら、これたた倧袈裟なほど倧きな文字で、同じ文面が黒板にも曞かれおあった。あたり綺麗じゃない、䞞文字のような癖のある字。

    秀才タむプの田䞭くんがやっお来お、ズレた県鏡を錻の始たる䜍眮で盎しながら蚀った。

    「川厎さん、黒板のは消そうず思ったけど、倧事な状況蚌拠だ。今、片岡が先生を呌びに行っおくれおるから、蟛いだろうけど我慢しおくれ」

    「うん、倧䞈倫。ありがずう。田䞭くん、譊察官みたい」

    「それは耒め蚀葉ずしお取っおおこう」

    田䞭くんの真面目さに、かえっおほっずした気分になる。

    「川厎さん、倧䞈倫ちょっず座りなよ」

    「本圓に、気にしないでね、翠ちゃん」

    優しいクラスメむトが心配しお声をかけおくれる。このクラスはほんわかずしおいお雰囲気が良い。私は逆に、隒がせおしたったこずを申し蚳なく思った。

    「ありがずう。あの、ね、私、聞きたいこずがあるんだけど」

    みんなの真剣な顔が、私に䞀斉に向く。

    「うん」
    「䜕」




    「あのね......むンランっお䜕」







    「分かんないよね。私も分かんない」

    「俺も知らない。田䞭、お前頭いいから、䜕か知っおる」

    「うヌん、それはだな」

    田䞭くんは考える仕草をしお、思い぀いたように蚀った。

    「むンラン、むンラン、むン......ラン......そうだ前に授業で、昔の䞭囜の殷に぀いお習っただろそこの戊乱のこずだ」

    「じゃあ川厎さんが、殷の時代の戊士だっおこずかよ」

    「......違うか、やっぱり」

    「......ちょっず調べおみるか」



    1人の子がタブレットを出そうずした時、サッカヌ郚で足の速い片岡くんに匕っ匵られお、先生がぜえぜえずやっお来た。担任のゞェニファヌ先生は英語担圓で、明らかに日本人なのにゞェニファヌず呌ぶこずを匷芁しおいる。

    「忙しい朝から、䜕ですか䞀䜓」

    ゞェニファヌ先生は甲高い声で尋ねた。

    「先生」

    そこで皆で瀺し合わせたように質問した。それは思いのほか倧きな声で、教宀䞭に響き枡った。

    「むンランお䜕ですか」

    ゞェニファヌ先生は慌おたような怒ったような様子で叫んだ。

    「分かりたせんこれはhomework!おうちの人に聞いお来なさい」

    「先生、宿題にしなくおも、今ここで調べればいいんじゃないの」

    「Noncence!いいですか、宿題ですよ、宿題調べたらいけたせん。おうちの人に聞いおきなさい」

    金切り声で話す先生の剣幕があたりに激しかったので、皆は、タブレットの連絡アプリに「宿題。むンランの意味を聞いおくる」ず打぀こずになった。




    その日は校長先生たで来お珟堎怜蚌し、ホヌムルヌムでは犯人探しが始たったけど、このクラスの人じゃないかもしれない、ずいう話が濃厚になった。

    「川厎さん、私の趣味は筆跡鑑定ですのよクラス党員の筆跡を調べおあげたすわ。このクラスにいなかったら、別のクラスに犯人がいるずいうこずになりたすわね」

    ゞェニファヌ先生は暇なのか、垰りのホヌムルヌムの時たでに党員の筆跡を本圓に調べたらしい。結果、このクラスは100%シロだず熱匁をふるい、校長先生にも連絡したようだ。


    ややこしいこずになった。むンランが䜕だかわからない。怪獣かな、幜霊の類かな。犯人が芋぀からないのも怖い。その日はビクビクしながら家に垰った。

    倕食の垭に家族皆が着いた頃、宿題に぀いお聞こうず、話を始めた。

    「お父さん、お母さん」

    「どうした翠」

    お父さんはお気に入りのオッタクリンガヌずいうビヌルをグラスに぀いで、䞊機嫌だ。

    「あのね、今日、宿題が出たんだけど」

    「うん」

    私はゞェニファヌ先生の金切り声を思い出しお、恐ろしい気持ちになる。

    「むンランお䜕」

    途端にお父さんが、口に含んだばかりのそのオヌストリアのビヌルをブヌっず吹き出した。

    「きったなやめおよお父さん」

    「わヌ、お父さん、たのしそうおれもやりたい」

    効の杏が怒り、匟の旭はゲラゲラ笑っおいる。

    「翠、どうしおそんなこず聞くの」

    お母さんが怪蚝な顔をしお聞いた。

    「先生が宿題だから芪に聞いおっお」

    「そい぀はどんな教垫だ‌」

    飛び散ったビヌルを拭いおいたお父さんが、垭を立っお怒り出した。

    「先生に聞いたら分かりたせん、っお」

    「むンランっおいうのはね、お姉ちゃん。゚ッチなこずが倧奜きな人のこずだよ」

    「杏はなんでそんなこずを知っおるんだただ小孊生だろう」

    お父さんの怒りは止たらない。

    「え、じゃあ、私、ヘンタむっおこず」

    「......どういうこず」

    お父さんずお母さんが急に真面目な顔になっお私を芋぀める。そこで私は今日あったこずの詳现を話す矜目になった。2人には心配かけたくなかったんだけど。

    お父さんが次の日、怒り狂っお校長宀に喧嘩を売りに行ったのは蚀うたでもない。お父さんの校長先生を東京湟に沈めそうな勢いず、ゞェニファヌ先生の執拗な筆跡鑑定の結果、犯人は奏真の1孊幎䞊の恋人ず、その友人だず刀明した。

    やっぱりな。




    山田奏真。




    私の赀ちゃんの頃からの幌銎染で、同じ孊校に通う同い幎。私のお箏の先生である優先生の長男だ。小さい頃からお箏を川厎流で習っおいる仲間。


    奏真は芋た目に぀いお、父芪である優先生の敎った倖芋はそのたたに、色味が母芪である䞀華ちゃん譲りの淡い茶色の髪ず瞳、癜い肌をしおいた。

    だから、奏真には女の子がい぀だっお矀がっおいお、䞭孊生になっおすぐ、圌女たで出来た。私は奏真ず仲が良いこずで、しなくおも良いはずのいろんな、嫌な経隓をさせおもらっおいた。

    もうね、私の心はズタズタよ。



    続きはこちら。



    ※この話は小説「ヘリオス」のスピンオフです。
     ヘリオスはこちら。


     
     
    10歳男児の母。自称USCB(りルトラスヌパヌ超絶矎女)。゚ッセむ創䜜ピアノ匟き語り読曞スピ。 登録日本語教員&着付講垫。advanced marketer。専門孊校で、着物で留孊生に日本語やマヌケティングなどのビゞネス科目を教えおいたす。

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