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結婚と離婚のおはなし vol.2 |それぞれの未来予想図


    就職してすぐに仲良くなった、同期の女の子がいた。
    私も彼女も短大卒で二十歳。
    よく二人で未来予想図を描いていた。

    「二年働いて、寿退社したいよね。」
    「二十四歳には子どもを産もう。」

    残念ながら二人とも独身で二十二歳を迎えた。

    「私たち短大卒やし。」
    「四大卒なら今から社会人やん?」
    「二十四歳までに寿退社しよう!」
    「子どもは二十六歳までに産んだら良いよね。」

    私は二十二歳の時に元夫とつきあうことになった。
    彼はすでに三十四歳。
    難しい夢ではないと思っていた。

    二十四歳になったとき。
    まだ、二人とも独身だった。
    プロポーズもなく、予定は全くない。

    その頃は、女性が一番美しくいられるのは二十七歳だと思っていた。
    たぶん、世間でそんな話があったのだと思う。

    「じゃあ、二十七歳までに結婚しよう。」
    「子どもは三十歳までに。」

    今思えば、なんとも稚拙で可愛らしい未来予想図だった。




    二十五歳になり、おつきあいも三年を超えたころ。
    彼がマンションを購入すると言い出した。

    家を買う。
    それはきっとよほどの大富豪でもない限り、人生で一、二を争う大きな買い物であろう。
    私はいよいよプロポーズされるのかな、と期待した。
    内見にも連れて行かれた。

    でも彼から結婚の言葉は一切出なかった。
    それどころか言葉の端々から、一人で住むつもりなのだろうと感じた。

    売買契約をした、ということも事後報告だった。

    設備の説明を受け、鍵を受け取る日。
    なぜか私も立ち会った。
    業者さんには当然、妻だと勘違いされた。
    緊急連絡先に名前を書いて欲しいと言われた。
    彼に聞くと「書いといて」と言われた。
    結婚するわけでもないのに、緊急時に連絡されても…と思ったが、業者さんの手前、言いにくかった。

    結局彼は私に何を相談することもなく、結婚を仄めかすこともなく、そのマンションで一人、生活を始めた。

    ちなみに職場で私たちの関係は周知の事実だった。
    いろんな人に、
    「あいつマンション買ったんやろ?良かったな」
    「いつ一緒に暮らすの?」
    「あんな良いマンション買ってもらえて良いなぁ」
    と言われた。
    その度に、何と返せば良いか分からずにいた。


    私は大切だと思う人にこそ、本音を言えないことがある。
    相手を傷つけたくない。もしくは怒らせたくない。
    そんな思いから、黙ってしまうことが多い。

    結婚を迫ることは、私には清水の舞台から飛び降りるよりも難しかった。
    彼が不機嫌になるだろうことを、予想していた。
    そしてたぶん、私の予想は正解だったと思う。

    私はずっと気持ちを言えずにいたけれど、だからといって態度に出ないわけではない。
    「なんでマンションを買ったの?」
    「どういうつもり?」
    言わなくても、伝わっていた。

    言いたいくせに黙っている私に、彼は痺れを切らして怒鳴った。

    「なんで自分で自分の家買っただけで不機嫌にされなあかんねん!」

    それは正論のようで、私はまた黙ることになった。

    彼の未来予想図には、私の姿はないのかもしれない。



    これまでのお話は、こちらのマガジンにまとめています。



     
     
    心のこと、仕事のこと、過去を振り返って思うこと。 そして大切な犬たちとの暮らしの中で感じたことを、自分の言葉で綴っています。 読んでくれた人が少しほっとできるような場所になればうれしいです。

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