
東野圭吾、最後のガリレオ。遺作『永遠の記憶』ネタバレなしレビュー
今回ご紹介するのは、こちら。
東野圭吾著『永遠の記憶』です。
東野圭吾氏の訃報から、早や2か月以上が経ちました。
信じられない、信じたくない、という思いから、
なかなか、この新刊を読む気持ちになれないでいました。
なんだか、読んだら、本当にお別れのような気がして。
しかし、ミステリー書評家を名乗る覚悟をしたからには、
読まなければならない。
東野さんが、ご自身の命の灯を見つめながら書き上げた本だからです。
遺作となった今作は、東野さんの数々のヒットシリーズの中でも、
とびきりの人気を誇る、”ガリレオシリーズ”の最新作。
ガリレオシリーズは、1998年出版の単行本『探偵ガリレオ』から始まり、テレビドラマ化されたこともあり、人気に火が付きました。
ガリレオシリーズの中で、一番のヒット作といえば、『容疑者Xの献身』。映画も大ヒットしました。私は映画館で号泣したのを覚えています。
テレビドラマ以降、主人公の物理学者 湯川学先生は、私の脳内では、すっかり福山雅治さんのイメージになっています。皆さんもそうでしょうか。
湯川先生のセリフといえば、「実に面白い」。
事件の謎を、科学の力で解き明かす天才です。
そして忘れてならないのが、湯川の大学時代からの親友である草薙刑事。
彼は今作では管理官に昇進しています。
管理官といえば、かなり出世したイメージです。
もう一人、重要な登場人物と言えば、湯川とともに数々の事件を解決してきた内海刑事。
今作では、子育てと仕事の両立に悩む母親としての彼女の内面も描かれています。
保育園に通う息子を育てながら、時間的にも精神的にもハードな仕事を続けている、ギリギリの毎日。
彼女が、葛藤しながらも前に進んでいく姿に、教員時代に同様の悩みを抱えていた自分を重ね合わせながら、読み進めました。
その内海刑事が、スーパーで買い物中に、見知らぬ高齢男性にナイフで刺される事件が起きます。
内海刑事に迫られる選択
見知らぬ人間に、突然刺された内海刑事。
入院中にも、事件が起きた理由を調査し始めます。
湯川や草薙が協力し、犯人のある行動から、内海が過去に関わった事件の関係者Aが、今回の事件にも関わっている可能性が浮上します。
過去の事件とは、殺人事件。内海刑事の捜査により、真実が明るみになったことで、家族を失ったAによる復讐の線が濃厚になります。
Aが任意聴取されますが、今回の事件を起こした犯人との関係については不明なまま。
Aの意向で、直接Aと会うことになった内海だったが、
Aから聞かされたのは、内海への復讐方法についてでした。
過去の事件について、内海にある要求をするA。
その要求をのむかどうかによって、内海への復讐の有無が決まると言うのです。
その要求とは。そして、復讐の中身とは。
本の帯にも書かれている「究極の選択」を、内海は迫られるのです。
湯川と草薙に課された宿題
内海の刺傷事件は、思わぬ展開を見せます。
内海を襲った犯人の所持品にあった通帳の名義人は、湯川と草薙にとって、見覚えのある人物だったのです。
2人にとって忘れられない、過去の事件の関係者でした。
その事件で唯一不明だった点を解決することは、2人に課せられた宿題のようなものでした。
ついには、終活という言葉が飛び出します。後進に席を譲る覚悟が、2人にはできていました。
ガリレオシリーズ愛読者なら、あの事件にまた光が当たることに感激するでしょう。
そして、ご自身の遺作として、あの物語を再度取り上げた東野先生の意志、覚悟が伝わってきました。
東野先生の作家人生と、今作に込めた思いを考えると、涙が止まりませんでした。
106冊もの著書を世に送り出した、東野圭吾さん。
その遺作となった今作では、真実を明らかにすることについての是非を、社会に問いかけます。
作家として、物語を通して、問題提起し、社会に訴えかける。
東野圭吾という、偉大な作家の矜持を感じる作品でした。
