
小さな手 #シロクマ文芸部
小さな手。
生まれたばかりの我が子を初めて抱いたとき、その手は私の人差し指をぎゅっと握った。
あまりにも小さくて、あまりにも頼りなくて。
それなのに、その指先には確かな力があった。
私はその手を見つめながら、この子を守っていかなければならないのだと思った。
それまで、自分の人生のことばかり考えて生きてきた。
眠いときは眠り、疲れたら休み、嫌なことからは逃げる。
そんな私の毎日に、突然、小さな手が入り込んできた。
その日から、私の人生は少しずつ形を変えていった。
一年が経った。
あの日、私の指を握ることしかできなかった小さな手は、今では忙しそうに動き回っている。
何かを見つければ掴む。
気になれば触る。
食べ物を見つければ、つまんで口へ運ぶ。
そして、時々、自分の髪の毛まで掴む。
眠っている間に自分の髪をぎゅっと握りしめ、手が抜けなくなって泣いていることもある。
「なんでそこ掴んだの」
私は笑いながら、その小さな指を一本ずつほどいてやる。
指の間を洗えば、どこから入り込んだのか小さな埃が出てくる。
こんなところにまで、ちゃんと一日を生きた跡が残っている。
最近では、手を開いたり閉じたりする「グーパー」も覚えた。
開いて、閉じて。
また開いて、閉じる。
何がそんなに楽しいのか、何度も繰り返す。
その手を眺めながら、私は時々、最初の日のことを思い出す。
私の指を握ることしかできなかった手。
今は、自分から世界に手を伸ばしている。
いつかこの手は、私の手を振りほどいて、自分の行きたい場所へ歩いていくのだろう。
そう思うと、少し寂しい。
でも今はまだ、私の指を握ってくれる。
だから私は今日も、その小さな手を眺めている。
指の間に、小さな埃を見つけながら。
そして、そっと握り返す。
せっかくnoteをはじめてみたのだから文章を書きたい。
はじめてのお題。
婚活エピソードでは強気に書いているが、
産後の私はすっかり別人になってしまっているかもしれない。
そういった面も、丸ごと楽しんでもらえたら嬉しい。
素敵なお題をありがとうございました。