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【突発企画】ラストキス

    なみさん主催の企画に参加させて頂きました。

    テーマは「ラストキス」
    今回はBLではありません。
    先に謝っておきます。死ネタです。

    以下本文(844字)


    君は朝から絶望していた。
    「どうしよう、かほちゃん。オムレツがすごく上手く焼けちゃった。健康診断だから食べられないよね」
    眉を八の字にした君は、昔飼っていたゴールデンレトリバーに似ている。君に声をかけたきっかけは、私のベスにそっくりだったからだ。
    君の肩に手をおいて、つま先立ってすくいあげるように、キス。甘い卵の風味に負けて、君の味がしないのは不満だった。

    「え、何?」

    真っ赤になって仰け反る君に、私は笑いかけた。

    「いってきますのキスだよ」
    「いつもしないじゃん」
    「美味しいオムレツのごほうび。いい子だから受けとってね」

    玄関先までエプロン姿で見送りに来た君は、真っ赤な顔をして、私にお返しのキスをしようか逡巡していた。結局してくれなかった。

    「次のお休みにはいっぱい美味しいもの食べようね」
    「オムレツも作ってくれる?」
    「自家製のケチャップもつけるよ」

    君は破顔した。

    電車を乗り継いで、駅から徒歩五分の複合オフィスへ。なじみの守衛に挨拶した。

    「今日も休日出勤ですか? お疲れ様です」

    私の乗ったエレベーターは、勤務先がある階を通りすぎた。途中から階段を使い、最上階へ上がった。『立ち入り禁止』の看板を越え、くすねた鍵で屋上のドアを開けた。

    風が出迎えてくれた。

    昔は屋上庭園として運営され、ここから花火大会を見ることもできたらしい。花壇のなごりは乾いた土と雑草だけだった。
    私はドアの脇でヒールを脱いで、ストッキングでコンクリートの上を歩いた。ざらついた熱さが、足の裏に伝わる。ストッキングが伝線したのがわかったけれど、かまうものか。
    屋上の柵を乗り越えて、外側に立った。巻きあがるビル風も、タイトスカートはめくれなかった。

    視界が反転する。

    高層ビルに切り取られた空は、いつか飛び込み台から見下ろした清潔なプールの四角によく似ていた。すがすがしいまでの青さだった。
    君の顔が浮かんだが、世界から手を離す圧倒的な晴れやかさに、ラムネの泡よりはかなく霧散した。

    ごめんねありがとう大好きだよ。

    そして自由落下、のちに、キス。


    企画記事をお昼に拝見したため、仕事の合間に構想をねりねりしており、厳密には即興ではありませんでした。

    なみさんにその旨お伝えしたところ、了承頂きました。

    「藤間さんが気になるようでしたら半分の15分で書き切ってみてください!」

    とのコメントも賜ったのですが、その頃にはもう書き始めていたので執筆時間は20分でした。
    次回参加させて頂く時は、書く直前に記事を拝読します。
    反省しております。

    後、お題がラストキスだったので、手クセで死ネタしか浮かびませんでした。
    それは反省していません。




     
     

    藤間

     
     
    狂ったマンガ読みです。小説も書きます。 好きなマンガや日々のあれこれ、BLやら創作活動について。 (別名義:ふとうめい)

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