
|読書|ヘリオガバルス/ジャン・ジュネ|戴冠せるCross-Dresser|
先日、神田神保町の東京堂さんで買ってきた、ジャン・ジュネの遺稿、『ヘリオガバルス』を読み終えました。
最初、やはり念頭にあったのは、アントナン・アルトーの書いたエッセイや創作も混じったヘリオガバルス伝『ヘリオガバルス あるいは戴冠せるアナーキスト』があったのです。
第一幕では第23代めローマ皇帝ヘリオガバルスが登場しません。祖母と叔母がヘリオガバルスの話をしているだけで。
第二幕から最終の第四幕にかけて、ヘリオガバルスが登場するのですが、やはり、絶世の美少女、とまで言われた彼の存在感がやはりジュネの筆になるものだな……としみじみ思うほど強烈です。
実際に、ヘリオガバルスは異性装のみならず奇行が多く、アルトーやジュネが演劇に取り入れるのもわかる気がします。
大雑把にまとめると、本戯曲は、ローマ帝国軍の百人隊長たちに引見するときに、反ヘリオガバルス派の祖母と叔母がヘリオガバルスを殺そうとするのですが、それは失敗し、でも軍人たちはヘリオガバルスを皇帝とは認めず……まだ幼い子供が次の皇帝に即位してしまうので……もともとはヘリオガバルスのお付き馭者だったアエギヌス(ヘリオガバルスと同性愛的な仲)が彼のことを……ネタバレになるのでそこまでしか書きませんが。
最新のジャン・ジュネ研究が進んでいるのも凄いですね。これまで捨て子だったジュネは少年院や、長じては刑務所に出たり入ったりの状態で、無学なジュネがどこであのような、陶酔を読者に与えるような文章を書けるのかわからなかったのです。
それが結局、刑務所での読書生活のおかげだったとか……!
また、個人的には、ジュネが戯曲を書くのは、『泥棒日記』、『花のノートルダム』、『薔薇の奇蹟』のあとの期間のような印象だったのですが、獄中でもうすでに『ヘリオガバルス』のような戯曲も書いていたのですね。
裏切りや窃盗、男色、汚物からの聖性への大跳躍、初期ジュネのエッセンスは『ヘリオガバルス』でも健在です。値段は痛いものの(3,850円)、ジュネを味わうには手頃な一冊かも。