メインコンテンツへスキップ
見出し画像
Photo byhananosu

30 魔女の作る不思議なスイーツ 加筆修正(短編小説)

    海砂糖、秘密の材料。

    この国で魔女は忌み嫌われる存在ではなかった。けれど神様として崇められる存在でもない。
    町の人たちと足りない所を補い合いながら共存をして暮らしていた。

    魔女の作ったコスメやスキンケア用品は女性の心を掴み、魔女の作る料理やお酒は働く男性のみならず、人々の舌を魅了していた。

    そんな素敵な魔女は、あるスイーツを作っている。
    そのスイーツにまだ名前はないけれど、とても不思議なスイーツで、魔女の気まぐれに作られ、販売される日や時間もまちまちな為、人々のあいだでは
    幻のスイーツと呼ばれていた。

    そんな魔女の作る不思議なスイーツをどうしても食べたい一人の少年。
    魔女が営んでいるお店に、ひとりやってきた。
    カランカランッ!
    「魔女さん!不思議なスイーツ作ってっ!
    僕、食べたてみたいっ!」
    カウンターの椅子に勢いよく飛び上がり
    少年は魔女に懇願。
    そんな少年に魔女は言った。
    「ダメよ。今の私の気分は、みんなが言う不思議なスイーツを作る気にはなってないの。またいらっしゃい。坊や」
    少年、負けずに食い下がる。
    「えー、やだ、僕、今食べたい!
    ね?良いでしょ?お金はちゃんと持ってきたよ! 
    お母さんの、お手伝いをして一生懸命貯めたんだっ!」
    魔女、こういう健気さにだいぶ弱い。
    こういう経緯を聞くと、胸がジーンとしてしまう。優しく人情味がある魔女だ。

    暫くの沈黙の後。

    「………………………っ、わかったわ」
    「えっ?」
    「不思議なスイーツ、作ってあげる」
    「えっ!ホントっ!やったー!」
    少年は大喜びで満面の笑顔だ。その笑顔はとても可愛らしく愛らしく、素直で混じりっ気のない純粋な笑顔だった。

    魔女は不思議なスイーツを作る材料を次々に作業台へと乗せていく。その様子を見つめながら少年は言った。
    「なんだか、町じゃあんまり見ないものばっかりだね」
    少年は不思議そうに材料になる食材達をまじまじと見つめる。
    そして、魔女が最後に取り出したのが
    ”海砂糖”だ。
    「坊やにだけ、本当のことを教えてあげるわ」
    「?本当のことって?」
    「この今から作る不思議なスイーツのことよ。町の皆は幻のスイーツ、なんて呼んでくれるけど本当は私の気分とかではなくて、作りたくてもなかなか作れないものなの」
    「…どうして?」
    「この砂糖。これは海砂糖っていうものなんだけど、この海砂糖を届けに来てくれるお使いの猫さんがいるの。
    でも、その猫さんがいつ
    このお店に海砂糖を届けに来てくるか、
    私にも分からないの。
    だから、届けに来てくれる猫さんが次に来るまで、海砂糖の残りが少なくなるとお客さん皆に食べてもらうことが出来なくなってしまうから、その時は不思議なスイーツは作らないようにしていたの。けど、坊やの分くらいは作れる海砂糖は残っているから今から作ってあげるわね。皆には内緒よ?」
    そういうと、魔女はテキパキ手際よく準備した材料たちを混ぜていく。
    魔法を使っているわけではないのに、まるで魔法を使っているようにあっという間に、町の人たちが幻のスイーツと呼んでいる不思議なスイーツが出来上がっていく。
    「はい。完成。」
    魔女はあっという間に不思議なスイーツを完成させた。
    「うわー、すごーい!美味しそうっ!」
    テーブルの上に置かれた、不思議なスイーツ。
    このスイーツの表面はキラキラと光っている。このキラキラは、海砂糖が与えてくれるものだ。
    少年は美味しそうに、大事そうに、
    不思議なスイーツを次々に口に運んでいく。噛み締めながら刻みながら、食べている間は静かに、でも夢中で食べ、あっという間に食べてしまった。

    「はぁー、美味しかったー。
    魔女さん!作ってくれてありがとう!
    この不思議なスイーツの値段はいくらですか?」
    少年が不思議なスイーツの値段を聞く
    すると、魔女は言った。
    「お代はいらないわ。その代わり、ちゃんと出来るときでいいからこれからもお母さんのお手伝いをすること」
    「えっ?お金、いらないの?」
    「いらないわ。そのお金は坊やが坊やのために使いなさい。」
    「…わかった。」
    少年は魔女がどうしてこんな事を言ったのか不思議で仕方がなかったが、でも、少年は納得した。
    これが魔女の優しさだったと気づくのにはもう少し時間がかかりそうだ。


    「魔女さんっ!今日はありがとう!また来るね!絶対遊びに来るからね!」
    「わかった。楽しみにしてるわね坊や」
    そういうと、少年は笑顔でお店から家に帰っていった。
    魔女は姿が見えなくなるまで少年の姿を
    見送っている。
    魔女が少年を見つめながら、何を思ったのか。それは、魔女本人にしか分からない。

    この町には、魔女がいる。
    けれど決して忌み嫌われる存在ではなく、神様でもない。
    町の人たちととともに、そして愛されている、優しくて素敵な魔女だ。



    ここまで読んで下さり、ありがとうございました。魔女と少年の外見、不思議なスイーツの細かい描写はしていません。
    読んで下さった皆さんの想像する、魔女と少年、そして不思議なスイーツで読んで頂ければ幸いです。
    ありがとうございました。

     
     
    感じた、思ったことを文章に。 そんな中で閲覧してくれた誰か一人にでも刺されば本望です。 基本的には素直で、何気ない毎日を綴っていけたらと思っています。 たまに毒も吐きます。 オタクも発動します。 そして【詩】を書いたりしています アイコン(ゆち式女子メーカー改二)

    あなたへのおすすめ