
子どもには可能性を信じて関わるのに、大人になると、なぜ「できない理由」を本人に求めてしまうのか。
こんにちは!
大人の発達障害への理解を広げる活動を行っている、合同会社mojoです。
記事を担当するのは、発達障害のあるお子さんの支援に10年以上携わってきた酒井です。
今回は「脳の機能局在」という視点から、人によって得意・不得意が異な
こと、そして一人ひとりを理解することについて考えてみたいと思います。
脳の働きと、人それぞれの得意・不得意
脳の機能局在とは、脳の特定の領域が、特定の機能に重要な役割を担っているという考え方です。
例えば、視覚情報の処理には後頭葉、計画や行動の調整には前頭葉が深く関わっています。ただし、脳は一つひとつの領域が独立して働くのではなく、複数の領域が連携することで機能しています。
その中でも、仕事や日常生活に関わるのが「実行機能」です。計画を立てる、注意を切り替える、情報を一時的に記憶する、状況に応じて行動を調整するといった働きが含まれます。
例えば、専門知識が豊富で、特定の分野では高い集中力を発揮できる人がいたとします。一方で、複数の仕事を同時に進めたり、急な予定変更に対応したりすることには、大きな負荷を感じるかもしれません。
あることが得意だからといって、すべてのことを同じようにできるわけではないのです。
「わかっているのに、できない」をどう考えるか
「遅刻してはいけないとわかっているのに、時間の見積もりがうまくいかない」
「優先順位が大切だと理解しているのに、目の前の作業に集中してしまう」
こうした困りごとを、本人の意識や努力だけの問題として捉えてしまうと、適切な対応につながらないことがあります。
例えば、時間管理が苦手な人に「もっと時間を意識しよう」と伝えるだけでなく、作業時間を可視化したり、予定を細かく区切ったりすることで、取り組みやすくなる場合があります。
大切なのは、できないことを責めるのではなく、どの段階で難しさが生じているのかを考えることです。
もちろん、こうした困りごとがあれば発達障害だというわけではありません。睡眠不足やストレス、業務量、職場環境なども、人の行動や認知機能に影響します。
だからこそ、目に見える行動だけで原因を決めつけないことが大切です。
人を理解するために、環境にも目を向ける
脳の機能局在を知ることは、「この人はこの能力が低い」と人を分類するためではありません。
脳の働きは複雑で、特定の脳領域だけから、その人の行動や能力を説明することはできないからです。
そして、同じ人でも、置かれる環境によって力の発揮しやすさは変わります。
集中を妨げる音が多い場所と、静かな場所。曖昧な指示が飛び交う職場と、具体的な指示が共有される職場。
環境との組み合わせを見直すことで、困りごとが軽減する可能性があります。
人を理解するためには、本人の特性を知るだけでなく、その人がどのような環境で過ごしているのかにも目を向ける必要があるのです。
子どもの可能性を信じるように、大人のことも考えてみる
ここで、少し考えてみたいことがあります。
私たちは、相手が子どもだったら、どのように接するでしょうか。
目の前の子どもが、ある課題をうまくできなかったとします。
そのとき、「この子は能力が低いから、できなくても仕方がない」と決めつけるでしょうか。
きっと、「どうすれば理解できるだろう」「環境や接し方を変えたら、できるようになるかもしれない」と考え、その子の可能性を探ろうとするのではないでしょうか。
もちろん、子どもだから何でもできるというわけではありません。それでも、今できないことだけで、その子の可能性を決めつけることはしないはずです。
では、相手が大人だったらどうでしょう。
仕事がうまく進まない。何度説明しても同じところでつまずく。周囲と同じようにはできない。
そんな姿を目にしたとき、私たちはいつの間にか、その人の能力や意欲の問題として捉えてしまうことがあります。
子どもには可能性を信じて関わるのに、大人になると、なぜできない理由を本人に求めてしまうのでしょうか。
大人になれば、仕事上の責任もあります。求められる役割や成果もあるでしょう。だからといって、できないことがある人の可能性まで、そこで決まるわけではありません。
発達障害のある子どもたちの支援に携わってきた経験から、私は、一人ひとりの特性を理解し、環境や接し方を工夫しながら、ともに試行錯誤することの大切さを感じています。
その姿勢は、子どもに限らず、大人に対しても同じなのではないでしょうか。
「なぜできないのか」と考える前に、「どうすればできるようになるだろう」と考えてみる。
目の前の行動だけで判断するのではなく、その背景に目を向けてみる。
もちろん、大人同士だからこそ、これまで積み重ねてきた価値観や考え方の違いによって、うまくいかないこともあります。それは決して悪いことではありません。お互いに違う考え方を持っているのは、自然なことだからです。
すべてを理解し合い、何もかもうまくいくとは限りません。それでも、お互いを知るきっかけや、理解しようとする機会があることで、働く人それぞれの気持ちが少し軽くなり、より心地よく働けるようになるのではないでしょうか。
そんな小さな視点の変化が、一人ひとりへの理解を深め、誰もが自分の力を発揮できる環境づくりにつながるのだと思います。
合同会社mojoは、これからも発達障害への理解を広げながら、一人ひとりの特性と、その人を取り巻く環境について考え、そのきっかけや機会をご提供していきます。ご興味ある方はお問い合わせください。