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Photo bymarutomo20

【1分小説】まだ…


    まだこの世界に産まれたばかりの頃、

    僕とあなたは何も知りませんでした。



    あなたは、家族に高い高いをしてもらって笑っていて
    僕は、別の家で、自分のオナラの音にびっくりして大泣きしていました。










    まだランドセルが大きかった頃、

    僕とあなたは、顔も名前も知らないどうしでした。



    あなたは、通学路のきれいな花を摘み取って、髪飾りにしていて、
    僕は隣町で、​白線の上しか歩けないルールを強いて、途切れた横断歩道の前で絶望的な顔をして棒立ちしていました。









    まだ制服の袖が少し長かった頃、

    僕とあなたは、ただのクラスメイトでした。




    あなたは、中学校の教室のすみっこで、窓に映る雲ばかりを眺めていて、
    僕は、​首のストレッチのフリをしながら可動域限界まで曲げて、あなたをチラチラ見ていました。













    まだ思い出の場所がコインパーキングにじゃなかった頃、

    僕とあなたは恋人でした。




    高校の帰り道、繋いだ手のひらの温もりに、「ずっとこのままでいられたら」とあなたは願っていました。
    僕は、夕焼けのような真っ赤な顔をして、あなたの手を強く握り返しました。









    まだ世界が狭かった頃、

    僕とあなたは最強でした。



    テストの点数が壊滅的でも「二人合わせれば100点越えてるから勝ち」と謎の理論で励まし合い、追試の教室で並んで頭を抱えてはクスクス笑っていました。











    まだ将来が遠くて怖かった頃、

    僕とあなたは迷子でした。




    大学生になったあなたは、少しずつ連絡の回数を減らしていきました。
    僕は、始めたての仕事を言い訳に、あなたの心に気づかないふりをしました。












    まだ写真の中だけ笑っていた頃、

    僕とあなたは思い出でした。




    あなたは、深夜のファミレスのすみっこで、冷めたスープの表面を見つめて黙っていました。
    僕は「実は同じことを考えていたんだ」と嘘を口にしていました。
    本当は、あなたと別れるのが怖かったくせに…












    まだ街の景色に溶け込めずにいた頃、

    僕は孤独でした。


    雑踏の中で、似た後ろ姿を見かけるたびに、二度と会えないあなたの幸せを、どこか遠くで祈っていました。











    ​まだ地元のローカル線が走っていた頃、

    僕とあなたは夕日に照らされる影でした。



    久しぶりに帰省して降りた無人駅のベンチに、あなたは文庫本を開いて座っていました。
    お互い「何してんの」と苦笑いした瞬間、あの頃の二人へと引き戻されていました。












    まだ小さな家族がいなかった頃、

    僕とあなたは、自由気ままでした。



    あなたは「アイスの当たり棒が出た方が勝ち」という謎の勝負をはじめ、僕は寒さで震えながら棒アイスを何十本も貪り、指輪を渡すタイミングを探していました。










    まだ子ども達が小さかった頃、

    僕とあなたの日々は、戦争でした。



    子どもたちがようやく眠りについた後、散らかったおもちゃの間に座り込み、お茶で乾杯しました。
    「今日も頑張ったね」とあなたは健闘を讃えて、僕は寝ぼけて「うん、たのしかったでちゅね」と赤ちゃん言葉で返してました。












    まだ、今が一番幸せだと思っていた頃、

    僕とあなたは、人生という名の本の数ページ目でした。




    これからやってくる未来を楽しみに、僕とあなたはページをゆっくりとゆっくりとめくり続けました。


    いつまでも、いつまでも。









     
     
    モンキーパンツの作品は、あなたの人生を少しだけ緩やかに滑らかにします。 【毎週日曜日の朝6時投稿】

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