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ローカルウェブメディアの使命は「魅力発信」なのか、常識を疑ってみる

    3年で辞めた。
    5年で辞めた。
    黙って途絶えた。
    静かに消えた。

    これまで全国各地、さまざまなメディアの苦渋の決断や勇気ある撤退、諦めてきた結果を乗り越えて、今一度考えたい。

    ローカルウェブメディアの役割は「拡声器」なのでしょうか?
    地域取材の目的は、「魅力を再発見」することなのでしょうか?

    情熱は充分過ぎるほど、あったはず。
    でも続かないのは、スタートラインや設計図に理由があるからじゃないのか。

    この界隈の「常識」「思い込み」を疑うために、まずは初心にかえるところからスタートします。

    ウェブメディア、始めるのは簡単だ

    2010年ごろから、地域情報を扱うウェブメディアいわゆる「ローカルウェブメディア」が増えた理由は、いたってシンプル。

    ローコストで、すぐ、始められるから。

    サイト開設にまず必要だろう経費は、サーバー維持費。「住所」になるドメイン取得。
    でもそれらでさえ、条件付きになるけれど無料のホームページ作成サービスを使えば、なんとかなってしまう。
    印刷物発行に比べると、破格の予算で情報発信の準備が整います。

    でも、始めるのが簡単だから、深く考えずに始めてしまうリスクがあると思いませんか。
    実際に、個人が運営主体のメディアの場合は勢いと情熱にまかせて計画不足で始め、途中で疲れてきてしまう例が多い気がしています。

    「計画」をどこまで練るかが、私たちにとっては大切な工程でした。

    ウェブメディア『大字基山』の立ち上げ準備期間は、個人の構想段階から含めると1年以上。
    私の場合は、もともと燻っていた不満が、仲良くなったママ友との会話から「計画」に。その計画を持って当時知り合った「地域おこし協力隊」に相談して、実働に向けて具体的に動き始めてから、およそ半年でサイトが開設しました。
    編集部立ち上げは2017年3月、サイト開設は2017年9月です。

    ローカルメディアを始める前に決めること

    本来なら、まだこの世に存在しないメディアの立ち上げは、一大プロジェクトです。
    設計段階で、最低限考えておきたい項目は、次のとおり。

    • コンセプト

    • 目的

    • 想定読者(ペルソナ)

    • 編集方針

    • 企画案

    • 取材先候補

    • 進行スケジュール

    • 運営体制、協力者

    • 予算と経費

    事前に、これらの項目の「解像度」を高めていくことが、そもそもサイトを開設するのか・しないのか、立ち止まって考える期間になります。
    理想論になっていないか、現実的な思考を深めてから、コンセプトを体現するサイト名を決めるくらいがちょうどいいはず。

    ウェブメディア開設が簡単だからこそ、この工程をすっ飛ばしていたり、しませんか?

    ローカルウェブメディアの編集方針を決定する最も大切な項目は、「どこの誰が読むのか」ペルソナを設定すること。

    読者とマッチングしなければ、そもそも情報伝達の媒体・手段である「メディア」と言えるでしょうか。

    読者像こそ、リアルであるべきです。

    地域の魅力、町おこし……読者は、誰?

    ここで、多くの地域密着を標榜するローカルメディアが立ち上げ時に宣言する定番フレーズ「地域の魅力発信・再発見」「地域活性化」「町おこし」について、立ち止まって考えてみます。

    どこの、誰が、読むサイト?

    地域密着のローカルウェブメディアなら、普通に考えると、読者はまず「地域にお住まいの皆さん」や「地域に関わりのある人」であるはず。

    • 「地域の魅力」地域の人々が、本当に読みたい内容ですか?

    • 「地域活性化」関心層はどのくらい?

    • 「町おこし」実際に地域の人、参加してますか?

    具体的な例えとして。
    「おしゃれなカフェの紹介」は、その町で必死に子育てをしている母親の日常生活に、寄り添えているでしょうか?
    「今日、子どもを連れて行ける病院はどこ?」という切実なニーズに勝てるでしょうか?
    「面白い視点の記事」をエンタメとして楽しむ心の余裕がある人は?

    多くのローカルメディア運営者が想定しがちな「地域の人」や「地域外の読者」って、具体的にどこの誰なんでしょう。

    もしかして「読者」を理想化し、期待しすぎていませんか?

    地域の人は「無関心」という現実を受け入れよう

    地域に暮らす人々は、それこそ年齢層から職業、趣味まで多種多様です。
    地域への関心度も濃淡があり、地元愛が強い人、そうでもない人、全く無関心の人など。

    だから私たちは、想定する読者をあくまで等身大の「地域で暮らす"地域に無関心な"自分達」に設定しました。
    自分たちと同じ町に住みながら、地元のことに無関心な人でも読むことがあるだろうサイト、を目指しました。

    「魅力」より「不便」を探したい

    そして、小さな町を拠点にウェブメディアを運営しながら私たちがサイト開設10周年に向けて手応えを感じている理由、そして結論は、

    「地域の魅力」より「地域の不便」を探すべき

    ということです。

    魅力発信を掲げるキラキラしたPRや読み物として楽しい記事ではなく、地味で、でも多くの住民にとって切実な「情報の空白」を埋めること。

    ないから、作る。探して、調べて、書く。

    それこそが当時ぽっと出のウェブメディアが町に根を張り、いつしか人口浸透率95%を達成することになる、はじめの一歩でした。

    ローカルには特有の「情報の空白」があり、地域が潜在的に抱えている課題意識だと気づいた時、真に求められるローカルメディア運営の道が見えてきます。


    次回は、地域で暮らす私たちのすぐそばにあるかもしれない「情報の空白・欠落」の正体について分析します。

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    ライター・PR・編集業。「ローカル情報は暮らしのインフラ」を掲げ、人口1.7万人の町で浸透率95%のWebメディアを黒字運営中。年間PV35万(町の人口の約20倍)。補助金なしで自立自走するメディア運用術や、伝わる文脈設計のノウハウを公開しています。俳号:杢いう子

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