〚お客をえらぶギター奏者の物語(仮題)〛通し番号328. 《自由を求めるこころ》(19)
その頃、琴子は 父方の曾祖母から 箏(琴)を習い始めた。
その地方で 大師範と呼ばれる 偉いお師匠さんであり、厳しい稽古でも知られるひとであった。
曾孫の琴子には 特に容赦なく、( 琴子の名を付けたのも 彼女だと言う話)
気の抜けた演奏をしようものなら、扇子やら 煙管やらが飛んで来る。
下手なのはともかく、集中を切らしたのは 自身のせいなので 少女の琴子は目だけつむり、避けずにそれらを身に受けた。
煙管が おでこに喰い込んだ跡を 曾祖母は黙って見、その後は 顔を外して投げるようになった。
そんな師匠の 箏の音色は素晴らしく、琴子は ちっとも稽古が 苦では無かった。
同じように弾けるためには 途方もない年月が必要と知ってはいたが、子どもなりに精進し、
やがて 地方の学生コンクールでは 一人勝ちの状態、
そうなると 親や親戚の 自慢の種にもされる。
琴子も もちろん自身の努力の結果は 誇らしかったが、周囲の反応を(現金なものだ)と 醒めた目で見ていた。
(この物語は おとぎ話です。登場する人びと、場所、出来ごと等 全て 架空の存在であり、モデルはありません。こんな人びとがいたら良いな、と願って書いているところはあります。)