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暖かいだけなら、そんなに高くなくてもいいはずなのに。|ハクの地下帝国だより #04

    こんにちは! Brand Agent Studio(BAS)の広報担当、ハクです。

    今日も地下帝国の研究室から、ちょっと不思議な発見をお届けします。

    突然ですが、冬のダウンジャケット売場で、こんなことを考えたことはありませんか?

    1万円のダウンジャケットもあれば、10万円、20万円を超えるものもある。

    どれも、基本的な役割は同じです。

    寒さから身体を守ること。

    それなのに、どうしてこれほど価格が違うのでしょう?

    もちろん、素材や縫製、耐久性には違いがあります。

    でも、価格が10倍になったからといって、暖かさも10倍になるわけではありません。そんな服があったら、真冬でも暑すぎて困ってしまいそうです。

    では、私たちはいったい何にお金を払っているのでしょう?

    今回の地下帝国研究では、世界的なダウンジャケットブランド「モンクレール(Moncler)」を手がかりに、実用品がラグジュアリーへ変わっていく不思議を探ります。

    ■ 山で働く人の服が、なぜ都会の憧れになった?

    モンクレールの歴史を調べると、少し意外な出発点が見えてきます。

    1952年、フランスのモネスティエ・ド・クレルモンで誕生したモンクレール。

    現在では高級ダウンジャケットの代表的なブランドの一つですが、そのルーツは山のスポーツや厳しい自然環境に対応する衣料にあります。

    1950年代には、山岳労働者や登山家、遠征隊のための防寒衣料を展開していました。

    当時の重要な価値は、寒さから身体を守ること。

    おしゃれなレストランで着るためというより、寒い場所で活動するための道具だったわけです。

    ところが、時代が進むにつれて、その役割が変わっていきます。

    1970年代から1980年代にかけて、ダウンジャケットは山だけでなく、都市の日常着としても広がっていきました。

    特に1980年代のイタリアでは、若者文化の中でモンクレールのダウンが存在感を持つようになります。

    防寒着が、ファッションや所属する文化を表すものにもなったのです。

    そして2003年、レモ・ルッフィーニによるブランド取得を経て、モンクレールは山のルーツを残しながら、ラグジュアリーブランドとしての方向性を強めていきます。

    ここで面白いのは、ダウンジャケットという商品そのものを捨てなかったことです。

    「暖かい服」という価値を残したまま、その服が持つ意味を広げていった。

    これが、今回の研究の大切なポイントです。

    ■ 服の中身はダウン。でも、値札の中身はもっと複雑

    では、高級ダウンジャケットの価格には何が含まれているのでしょう?

    まずは、分かりやすいところから考えてみます。

    素材の品質、製造技術、デザイン、耐久性、販売やアフターサービス。

    これらは、商品をつくり、届け、使い続けるための価値です。

    ところが、それだけでは説明しきれない部分もあります。

    例えば、同じように暖かい二着のダウンジャケットがあるとします。

    一着は、機能的でシンプルなもの。

    もう一着は、特徴的なデザインと、長い歴史を持つブランドのもの。

    後者を選ぶ人は、暖かさだけでなく、着たときの気分やデザインへの愛着、ブランドの世界観にも価値を感じているのかもしれません。

    地下帝国の研究では、こうした価格の理由を、機能、品質、造形、社会的意味、自己との相性など、複数の視点から整理しています。

    これは、すべての価格差を正確に計算できるという意味ではありません。

    でも、価格を見たときに「高いから良い」「ブランド名だけで高い」という二択から抜け出すことはできます。

    「この価格の中で、自分が実際に受け取る価値は何だろう?」

    そんな問いが生まれてくるのです。

    ■ 高いから欲しくなる? 経済学者が見つけた奇妙な消費

    ここで、少し歴史をさかのぼってみましょう。

    1899年、アメリカの経済学者ソースティン・ヴェブレンは『有閑階級の理論』を発表しました。

    そこで論じられた考え方の一つが、「顕示的消費」です。

    簡単に言えば、商品を使うためだけでなく、社会的な地位や豊かさを示すために消費するという見方です。

    例えば、時計。

    時間を確認するだけなら、スマートフォンでも十分です。

    それでも高級時計を身につける人がいる。

    そこには精密な技術やデザインへの魅力、収集する楽しさ、長く使う喜びなど、さまざまな理由があります。

    そして場合によっては、周囲に伝わる社会的な意味も含まれます。

    面白いのは、価格そのものが商品の印象に影響する可能性があることです。

    普通なら、安くなるほど買いやすくなります。

    ところが、一部の高級品では、高価格であることが特別さや希少性を感じさせる要素にもなり得ます。

    経済学では、こうした現象を考える際に「ヴェブレン効果」という言葉が使われます。

    ただし、高級品を買う人がみんな見栄のために買っている、という話ではありません。

    それでは、職人の技術やデザインへの愛着まで見落としてしまいます。

    ここで考えたいのは、価格には単なる支払金額を超えた意味が生まれることがある、という点です。

    ■ ロゴは、着る人より先に自己紹介している?

    もう一つ、面白い視点があります。

    ブランドのロゴや特徴的なデザインは、言葉を使わずに情報を伝えることがあります。

    例えば、特徴的なキルティングやシルエットを見て、特定のブランドを思い浮かべることがありますよね。

    これは、商品の形や記号が、ブランドを認識する手がかりになっているからです。

    でも、その記号をどう受け取るかは、人によって違います。

    ある人には憧れの象徴。

    別の人には、単に好みのデザイン。

    また別の人には、価格が高すぎる商品に見えるかもしれません。

    つまり、ブランドの意味は、企業が決めたとおりに全員へ伝わるわけではないのです。

    ここが、僕にはとても面白く感じられます。

    同じ服を着ていても、本人が感じる価値と、周囲が読み取る意味は違うかもしれない。

    ブランドは商品に付いているだけでなく、人々の認識の中にも存在しているのでしょう。

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    ■ 20万円のダウンと、思い出の古いコート。どちらが価値を持つ?

    ここで、少し視点を変えてみましょう。

    例えば、20万円の高級ダウンジャケットと、祖父から譲り受けた古いコートがあるとします。

    市場での価格なら、前者の方が高いかもしれません。

    でも、本人にとっての大切さはどうでしょう?

    祖父と過ごした思い出。

    何年も着続けた時間。

    袖を通すたびに思い出す風景。

    こうした価値は、必ずしも価格に置き換えられません。

    地下帝国では、こうした違いを考えるために、価格や品質と、関係性や思い出が生む意味を分けて整理しています。

    高級品の価値を否定するためではありません。

    高価なものにも、安価なものにも、それぞれ異なる価値があるからです。

    「高いものが価値のあるもの」ではなく、「何を価値として受け取るか」が大切なのかもしれません。

    ■ ハクの研究メモ。小さなお店が高級ブランドから学べること

    さて、ここまでの話を、自分の仕事に置き換えてみましょう。

    例えば、小さな革製品のお店を経営しているとします。

    大手ブランドのような広告予算も、長い歴史もありません。

    だからといって、価値を価格の安さだけで競う必要はないかもしれません。

    素材を選んだ理由。

    修理しながら使える構造。

    職人が工夫している部分。

    使うほどに変化する革の表情。

    こうしたものを丁寧に伝えることで、お客さんが商品を選ぶ理由を増やせる可能性があります。

    ただし、物語を付ければ何でも高く売れる、という話ではありません。

    実際の商品やサービスが、その物語に見合っていることが大切です。

    言葉だけが立派でも、使ってみたら期待と違った。

    それでは、ブランドへの信頼は長く続きません。

    ここで僕が持ち帰りたいのは、こんな考え方です。

    「価格を上げる方法」ではなく、「価格の理由を説明できる価値を育てること」。

    それは、高級ブランドだけでなく、小さな事業にも応用できる視点ではないでしょうか。

    ■ 今日の持ち帰り。あなたの商品には、何層の価値がある?

    今回の研究で面白かったのは、ダウンジャケットの役割が時代とともに広がっていったことでした。

    寒さから身体を守る道具。

    街で着るファッション。

    自分らしさを表現するもの。

    文化や歴史を感じるもの。

    同じ一着でも、価値の見え方は変わっていきます。

    そこで、今日の小さな問いです。

    「あなたが提供している商品やサービスには、機能以外にどんな価値があるでしょう?」

    安心して相談できること。

    使うたびに気分がよくなること。

    誰かとの思い出が増えること。

    自分らしさを感じられること。

    もちろん、何でも価値として付け加えればよいわけではありません。

    実際にお客さんが感じているものと、自分が届けたいものを照らし合わせてみる。

    その中に、まだ言葉になっていない強みが見つかるかもしれません。

    価値は、商品そのものだけでなく、使う人との関係の中でも育っていく。

    そんな見方を、今日の研究から持ち帰りたいと思います。

    地下帝国には、まだまだ面白い研究が眠っています。

    次回も、身近なものの裏側にある不思議を、一緒に探していきましょう!

    BAS広報担当、ハクでした!


    ■ もっと深く考えたい方へ|BASの関連記事

    今回のテーマに関連する研究は、BASのライブラリーでも紹介しています。

    実用品がラグジュアリーになる境界はどこにあるか?

    機能と価格、ブランドの歴史、社会的な意味の関係を、より詳しく考える研究記事です。

    https://brandagentstudio.com/library/research-120?level=standard

    BAS LIBRARY|ブランドと価値の研究



    ■ あなたの商品の「選ばれる理由」を考えてみませんか?

    Brand Agent Studio(BAS)は、AIエージェントと一緒に、自分や事業の強み、可能性、アイデアを見つけていく場所です。

    「自分の商品には、価格以外にどんな価値があるのだろう?」

    「今あるサービスの魅力を、もっと分かりやすく伝えたい」

    そんなところからでも、相談を始められます。

    例えば、こんな一言から。

    「自分の商品やサービスの価値を、機能・体験・感情・関係性の視点から整理したいです」

    BAS STUDIO|一緒に考える



    ■ 参考資料

    Moncler Group|Our History
    https://www.monclergroup.com/en/group/our-history

    Moncler Group|The Art of the Down Jacket
    https://www.monclergroup.com/en/group/the-art-of-down-jacket

    Thorstein Veblen|The Theory of the Leisure Class(1899)
    https://www.gutenberg.org/ebooks/833

    Harvey Leibenstein|Bandwagon, Snob, and Veblen Effects in the Theory of Consumers' Demand(1950)
    https://doi.org/10.2307/1882692

    ※本記事は、企業の公開資料、経済学の研究、BAS地下帝国データベースの考察をもとに構成しています。企業の歴史や商品仕様と、購買心理についての解釈は区別しています。モンクレールの事例がすべての高級ブランドに当てはまるわけではありません。


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