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鮭の町、村上を訪ねて――千年鮭「きっかわ」


     新潟県村上市は、古くから「鮭の町」として知られている。市内を流れる三面川には、秋になると鮭が遡上する。村上の人々は、この恵みを大切にし、頭から尾まで余すところなく利用する独特の鮭食文化を育んできた。その伝統を今日に伝えているのが、老舗の鮭専門店「千年鮭きっかわ」である。

     村上市小町にある店を訪ねると、まず目を奪われるのは、町屋の天井から無数の鮭が吊るされている光景である。明治時代の町屋の太い梁に、塩引き鮭が幾重にも連なっている。薄暗い室内に浮かび上がる鮭の姿は、壮観というほかない。そこには、現代の食品工場では見ることのできない、時間をかけた手仕事の世界が広がっていた。

     きっかわを代表する品が「塩引き鮭」である。鮭を塩漬けにし、塩を抜いた後、寒風にさらしてじっくりと干し上げる。こうして熟成された鮭は、単なる保存食ではない。塩と風、そして時間がつくり出す独特の旨味を持つ、村上の冬の食卓に欠かせない郷土の味である。また、薄く切った塩引き鮭を長期間乾燥させ、日本酒をかけて味わう「鮭の酒びたし」も、この町ならではの珍味として知られている。

     興味深いのは、鮭の加工だけでなく、それを営む建物そのものにも歴史が刻まれていることである。店内には明治期の町屋や江戸末期の蔵が残され、長い年月を経た木組みや梁が、かつての商家の暮らしを今に伝えている。建築空間が単に商品を並べる場所ではなく、食品を熟成させるための生活の場として生き続けているのである。

     村上の鮭文化は、自然の恵みを受け取るだけでなく、その資源を守り、次の世代へ引き継ぐ知恵の文化でもある。きっかわの町屋に吊るされた鮭の一匹一匹に、村上の人々が長い年月をかけて築いてきた暮らしの歴史が凝縮されているように思えた。

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