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714対7。全力30秒×6本が、血液をここまで変えた|スプリント・インターバル・トレーニングのすすめ

    最近、仕事が立て込んで、ノルウェー式HIITのようなまとまった有酸素運動ができない週がある。そういう週は、筋トレの締めにエアロバイクへ乗る。30秒だけ全力で漕いで、しっかり休んで、また30秒。その日の余力に合わせて2〜6セット。

    短い時間でスパッと出し切れるし、終わったあとはすごく気持ちがいい。100m走を走り切った直後の、息は上がっているのに妙にすっきりした爽快感がある。

    高強度の運動の健康効果が高いことは知られているから、筋トレの締めに少しだけやるのも、「まぁやらないよりマシかな」くらいに思っていた。でも、ある研究を読んで、それが変わった。

    714対7。

    30秒の全力サイクリングを6本行った直後の血液では、2,884種類のタンパク質のうち714種類が変わっていた。90分のゆるい有酸素(中等度の持続運動)で同じ比較をすると、たった7種類¹⁾。

    全力の合計は3分。相手は90分。しかも、数カ月続けた結果ではない。たった1回、その直後の血液だ。

    やらないよりマシ、どころじゃなかった。

    SITは、短い全力運動を長く休みながら繰り返す

    今回のように、短い全力運動と休憩を交互に繰り返す方法をSITと呼ぶ。スプリント・インターバル・トレーニングの略だ。

    広い意味ではHIITの一種だが、ノルウェー式HIIT(4分×4本)より、1本あたりの強度が高い。ノルウェー式HIITは、4分間を4本続けられる強度で行う。最初から完全な全力で入れば、4分は続かない。SITは1本が短い。その代わり、ほぼ最大から全力に近い力を出す²⁾。

    今回の研究のメニューはこうだ。

    • 30秒間、自転車を全力で漕ぐ

    • 各本の間に4分休む

    • 合計6本

    全力で漕ぐ時間は合計3分。本と本の間の休憩を合わせると23分になる計算だ。4分の休憩は、次の30秒でまた高い出力を出すための時間だ。

    主な比較に参加したのは、若く健康で、普段から活動的な男性。

    • SIT:30秒全力×6本

    • ゆるい有酸素:乳酸が増え始める境目付近の強さで、90分漕ぎ続ける

    • 採血:運動前、直後、3時間後の3回

    SITの直後は血中の乳酸が上がりpHが下がっていたのに対し、ゆるい有酸素ではほとんど変わっていなかった¹⁾。二つの運動は、強度だけでなく運動時間も大きく違う。

    30秒を本当に全力で6本行う負荷は高い。運動習慣が少ない人は、より軽い強度から始める方が安全だ。全力運動はダッシュでもいいが、いきなり走ると怪我のリスクが非常に高いので、個人的にはエアロバイクを勧める。

    SITの効果は、多くの研究で裏付けられてきた

    短い全力運動を数週間から数カ月続けた研究では、心肺機能や糖代謝、筋肉のミトコンドリアが変化することが報告されてきた。

    自分が面白いと思うのは、1回あたりの時間が短いSITが、長時間のゆるい有酸素に匹敵するような効果をもたらすかもしれないことだ。

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    • 心肺機能
      2026年のアンブレラレビュー(393研究)では、SITは運動しない場合より心肺機能を改善した。ゆるい有酸素と比べても、差はつかなかった³⁾。

    • 血糖とインスリン感受性
      代謝異常のある成人を対象にした13件のランダム化試験の解析では、HbA1c、空腹時血糖、インスリン抵抗性の指標(HOMA-IR)の改善は、ゆるい有酸素と同程度と報告されている⁴⁾。

    • 筋肉のミトコンドリア
      持続運動、HIIT、SITのどれでもミトコンドリア量は同じくらい増え、運動時間あたりではSITが効率的だった⁵⁾。

    • 体脂肪
      体脂肪の減り方は、SITとゆるい有酸素で差がつかなかった⁶⁾。ただし、週の全力時間が多いほど体脂肪量が減るという報告あり。

    残っていた疑問は、合計数分の全力運動が、なぜ筋肉以外の全身へ影響するのかだった。今回の研究は、そこを血液のタンパク質で調べている。

    1回のSITで、714種類のタンパク質が変わった

    研究者は、血液中にある2,884種類のタンパク質をまとめて測定した。

    • 30秒全力×6本の直後:714種類

    • 90分のゆるい有酸素の直後:7種類

    SITでは、測ったタンパク質のおよそ4分の1が変わり、その98%以上は増えていた¹⁾。成長ホルモンのように、運動で増えることが前から知られているものも入っている。

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    血液中のタンパク質には、筋肉や皮膚の材料だけでなく、ホルモンやサイトカインのように離れた細胞へ合図を届けるものも多い。つまり血液には、筋肉、脂肪、肝臓、膵臓、免疫細胞などが交わす合図が流れている。30秒全力を6本行うと、その合図の量と組み合わせが一気に変わった。

    ただ、714種類が変わったからといって、体にいい変化とは限らない。強い運動の直後には、炎症やストレスの反応も一時的に増えるからだ。

    そこで研究者は、運動で変わったタンパク質を、UK Biobankの5万3,026人のデータと照合した。すると、714対7よりも、自分が「これは熱い!」と思う結果が出てきた。

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    全力運動で変化したタンパク質が、糖尿病や肥満が少ない人の血液とどこまで重なったのか。ゆるい有酸素との違い、SITとREHITの関係、自分が忙しい週にどう取り入れているかまで書きます。

    その714種類は、体にいい変化だったのか

     
     
    東大医学部卒の総合内科・呼吸器専門医。医学博士。経営者のパーソナルドクター。NewsPicks公式の健康番組にレギュラー出演。HALEO最高科学・医療顧問。外来では話しきれない健康の話を、論文だけでなく自分でも試して、失敗まで書いています。深掘りはDr.もさりラボで。

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