
健診のオプション検査、全部盛りにしなくていい。内科医が考える順番
人間ドックの申込画面を開くと、オプション検査がずらっと並びます。
腹部エコー・ABC検診・腫瘍マーカー・頸動脈エコー・PSAなどで、施設によってはCTやMRIまで選べます。全部つければ安心できそうに見えます。
でも、検査は増やすほど健康になるわけではありません。
受ける人を選ぶ検査もあれば、偽陽性から不要な精査につながる検査もあります。値段が高い。項目数が多い。最新の機械を使っている。それだけでは、受ける理由になりません。
大事なのは、標準の健診で何が抜けているかです。そこに年齢、性別、家族歴、既往歴、これまでの結果を重ねて、必要な検査だけを足します。症状がある場合は、健診のオプションで済ませず、医療機関への受診が先です。
全部盛りにしなくていい:追加するならこの順番
腹部エコー(健診に入っていなければ最初に検討)
ABC検診(ピロリ菌の感染状況を調べたことがない人は一度検討)
フェリチン(月経のある女性や、鉄の過不足を疑う状況で検討)
頸動脈エコー(リスク要因を確認したうえで、主治医と相談して選ぶ)
PSA(55〜69歳男性は医師と相談して検討)
全員が受けるべきというわけではありません。
逆に、腫瘍マーカーの一括セットは優先順位に入れていません。検査項目が多いほど安心できるものではないからです。
①腹部エコー
今の健診に腹部エコーが入っていなければ、自分はここから検討します。
肝・腎・胆嚢・膵・脾・腹部大動脈を一度に確認でき、被ばくもありません。血液検査だけでは拾いにくい、次のような異常を見つけるきっかけになります。
脂肪肝・肝硬変・肝腫瘤:脂肪肝や慢性肝疾患を見つけるきっかけになる。B型・C型肝炎など高リスクの人では、肝がんのサーベイランスにもつながる
腎腫瘤・腎嚢胞:無症状で見つかることがある
胆嚢ポリープ・胆石・胆嚢腫瘤:自覚症状がないまま見つかることがある
膵嚢胞・主膵管拡張など:膵がんそのものを十分に拾える検査ではないが、精査に進む理由になる。膵臓は体型や腸管ガスで確認しにくいことも多い
腹部大動脈瘤:破裂すれば命に関わる。特に高齢男性や喫煙歴がある人で重要になる
「全員に腹部エコーを行えば死亡率が下がる」と、大規模試験で証明されているわけではありません。それを承知で、内科医として自分は優先度を高くしています。
②ABC検診(ペプシノゲン+ピロリ抗体)
ピロリ菌の感染状況を一度も調べたことがない人なら、次に検討するのがABC検診です。
胃がんのうち、特に非噴門部胃がんの大部分は、ピロリ菌の慢性感染と関連します¹⁾。ピロリ菌に感染したことがない人では、胃がんのリスクが大きく下がります²⁾。出発点は、ピロリ菌との関係を一度確認することです。
ABC検診は、ピロリ抗体とペプシノゲンを組み合わせる検査です。ペプシノゲンは胃粘膜の萎縮を反映します。二つの結果から、胃がんリスクをA〜Dの4群に分けます。福岡県久山町の20年前向き研究では、ペプシノゲン陽性の高リスク群(C+D合算)は、A群より胃がん罹患リスクが約11倍高いと報告されています³⁾。
胃X線や胃カメラが「すでにできた胃がん」を見つける検査だとすれば、ABC検診は、胃がんになりやすい背景を調べる検査です。
ABC検診を受けることで、胃がんによる死亡を減らせるかは十分に確かめられていません。胃X線や胃カメラによる胃がん検診の代わりにはしません⁴⁾。
ただし、ABC検診だけで現在の感染や除菌の適応は決まりません。A群にも、過去または現在の感染が混ざることがあります⁵⁾。陰性でも胃がんリスクはゼロではありません。
感染が確認された場合は、除菌の適応を医師と相談します。除菌歴がある人、胃薬を長く飲んでいる人、胃切除後の人、胃症状がある人は、胃カメラを含めて医師と相談してください。
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