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「クレアチンで、運動しなくても筋肉が増えた」らしいが、本当なのか

    「運動しなくても、クレアチンだけで筋肉が増えた」

    そんな論文を紹介する投稿が、海外のフィットネス系アカウントから回ってきました。クレアチンは、肉や魚にも含まれている成分で、筋トレをする人が粉で飲んでいるサプリです。45〜65歳の64人が参加した、12週間の試験です。運動も食事制限もしなかった群について、投稿ではこんな結果が並んでいました。

    • 筋肉量が1.1kg増えた(論文では「除脂肪量」。筋肉のほかに水なども含む数字ですが、この記事では筋肉量と言い換えます)

    • ベンチプレスの筋力が上がった

    • 内臓脂肪が、週3回トレーニングした群と同じくらい減った

    • 中性脂肪が下がった

    • HbA1c(血糖の平均を映す数字)が下がった

    • 記憶のテストの一部で成績が上がった

    • 副作用は、クレアチンの入っていない粉(プラセボ)と変わらなかった

    運動しないで粉を飲むだけで筋肉がついて内臓脂肪が減り、血糖も下がって頭まで良くなる。「やっぱりクレアチン最高じゃん!」と、一瞬思いました。

    返信欄は「それ水だろ」で埋まっていました。増えた1.1kgの筋肉量の正体は、クレアチンとともに筋肉に入った水だ、という意味です。たしかにそうだと思いました。こういうすごすぎる結果には飛びつかないで、できるだけ批判的に読むようにしています。ただ、クレアチンを17年飲んでいて脳のサプリだという記事まで書いた人間としては、「水だろ」の一言で閉じる気にもなれません。原著を読んで、どこまでが本当なのかを確かめました。

    増えた1.1kgの筋肉は、水ものなのか?

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    テキサスA&M大学のグループが2026年に出した試験です¹⁾。参加したのは45〜65歳で、運動習慣のない64人。週3回の運動と減量食のプログラムに入るかどうかは本人が選び、そのうえでクレアチンかプラセボかをくじで決めました。本人も研究者も、どちらを飲んでいるかは知りません¹⁾。この記事の中心は、運動しなかった26人です。

    • 運動なし+クレアチン、13人。 普段どおりの生活で、1日10g(朝と晩に5gずつ)を飲む。ふつう1日3~5gなので、多めですね。

    • 運動なし+プラセボ、13人。 普段どおりの生活で、クレアチンの入っていない粉を飲む

    12週後の筋肉量の変化です¹⁾。

    • クレアチン。 1.1kg増えた

    • プラセボ。 0.16kg減った

    運動してないのに筋肉が1.1kgも増えた。赤みのステーキ1.1kgを想像してみてください。何もしなくてこんな筋肉がつくわけないから、「それただの水だろ」の返信がつきました。この筋肉には、筋肉を構成するタンパク質だけでなく、筋肉の中の水もカウントされます。クレアチンは筋肉の細胞に入るとき、水も一緒に引き込みます。1日20gを5〜7日飲む高用量の飲み方だと体重が1〜3kg増えるのが普通で、その大半は水です²⁾。外来で「クレアチンで太りますか」「むくみますか」と聞かれた時は「一時的に体重は増えるけれど、それは筋肉に水が引き込まれた分で、むくみとは違います」と答えています。

    自分も飲み始めたとき、InBodyで測った筋肉量が1kgほど増えました。「すげえじゃん!」と思いました。でもこれはまさに水もので、クレアチンを抜いたら戻る分だろうな、とも思いました。今回の1.1kgも、大半は水だと自分は思っています。

    では、筋力はどうでしょうか。運動なしのクレアチン群は、ベンチプレスもレッグプレスも開始時より一気に伸びています¹⁾。これはトレーニーの中ではよく知られていることですが、クレアチンを飲むとすぐに筋力が伸びます。筋力がものをいうスポーツなら、これだけでも飲む意味があります。

    飲むのをやめたらどうなるか。筋肉に増えたクレアチンは、やめると30日ほどで元の水準に戻ります⁴⁾。筋トレなしでクレアチンを飲むだけなら、増えた分の筋肉量も筋力も、やめれば元のレベルまで戻るだろうと自分は思います。一方で、筋トレを続けながらクレアチンを飲んだ後、クレアチンをやめても筋力や筋肉量が保たれたという研究はいくつかあるのです⁶⁾⁷⁾。

    なぜでしょうか?

    自分の体験でも、たとえばスクワットは150kg×5回がギリギリだったのが、クレアチンを飲むと155kg×5回が軽く上がるくらい変わります。飲んでいる期間は、それだけ高重量のトレーニングができます。

    腕立て伏せが自分の体重でもできなかった人が、クレアチンを飲むとできるようになったこともあります。回数をこなせるようになって、そこから筋力がどんどん伸びていきました。

    筋肉への刺激は、上げた重量と回数(仕事量)に大きく左右されます。クレアチンを飲むと高強度のトレーニングができるようになり、飲んでいない時よりも筋肉に強いストレスを与えられます。そのぶん筋肉が成長しやすいので、クレアチンをやめた後もその効果が残るのかもしれません。

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    それでは、内臓脂肪が減ったり、血糖や中性脂肪が良くなったり、脳のパフォーマンスが上がったりは本当なんでしょうか?

    🚩ここから先はメンバーシップ限定です。内臓脂肪、血糖、脳の結果は、どこまで本物か。血糖では、論文の本文に書かれていない数字を補足の表で見つけました。そのうえで、飲んでいない人が今から始める価値はあるか。自分の今の飲み方を書いています。

    内臓脂肪・血糖・脳の結果はどうなのか

     
     
    東大医学部卒の総合内科・呼吸器専門医。医学博士。経営者のパーソナルドクター。NewsPicks公式の健康番組にレギュラー出演。HALEO最高科学・医療顧問。外来では話しきれない健康の話を、論文だけでなく自分でも試して、失敗まで書いています。深掘りはDr.もさりラボで。

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