
年々、体が思い通りになっている
「年を取ると、体は言うことを聞かなくなっていく」
これはほとんど常識のようなもので、みんな当たり前の前提として話します。40代にもなれば、体の話題といえば衰えの話ばかりです。ただ、自分にはその実感があまりありません。むしろ逆で、年々、体が思い通りになっている感覚があります。
40歳ですが、体脂肪率は13%でデッドリフトは200kg以上上がりますし、心拍数120回くらいで10kmを50分で走れます。よく眠れて元気だし、朝から夜まで外来で働いても疲れないです。脳のパフォーマンスも今が一番高い気がしています。
筋トレ界ではデッドリフト200kgは大したことないですし、ランナーの間では、心拍120回で10km50分も大したことありません。でも筋力と有酸素能力の両方をある程度のレベルで備えているのは、結構珍しいと思います。
もちろん、老化はしています。40歳を超えてからは、同じトレーニングをしていても回復が明らかに遅くなりました。それなのに、体が思い通りになる感覚は年々強くなっています。
測ること、新しい知識を学ぶこと、実践すること、この3つを常に回して複利が効いているからだと思います。
シフティング・ベースライン症候群
少しずつ変わるものは、変わったことに気づきにくいものです。
測らないとわかりません。測ると、足りないことがわかります。経営の世界でよく言われる「測定できないものは管理できない」と同じです。
VO2maxがいい例です。普通に生活しているだけでも、気づかないうちに1年で1%ずつVO2maxは落ちています。
年1%の衰えは、1年ではまず気づけません。5年たてばさすがに気づきそうですが、実際には5年たっても気づきにくい。基準も一緒にずれてしまうからです。
漁業の世界に、シフティング・ベースライン症候群という言葉があります⁵⁾。1995年に水産学者のダニエル・ポーリーが名づけました。
魚は何十年も減り続けているのに、研究者はそれぞれ自分が海を見始めた年の魚の量を「普通」だと思ってしまう。基準線が世代ごとに下がるので、誰も減少を減少として認識できないのです。

体でも、似たことが起きていると思います。基準になっているのはいつも「今の自分」です。去年より少し落ちた体を今年の基準にして、来年また少し落ちる。基準線そのものが毎年下がるので、5年たっても「年相応だろう」で済んでしまいます。それがたまった頃に、階段や坂道で「あれ・・・こんなはずでは・・・?」と気づくことになります。
測っていれば、比べる相手はずっと10年前の自分です。
VO2maxが落ちること自体には、研究の裏づけがあります。運動習慣の有無にかかわらず、VO2maxは10年で約10%落ちるとされています¹⁾。しかも落ち方は一定ではありません。健康な成人を約8年追いかけた研究では、20代・30代は10年で3〜6%だった減り方が、70代以降は10年で20%超まで加速していました²⁾。
筋肉も同じで、若い人と高齢者を比べた研究では、筋肉量の減り方は男性で年0.5%前後が中央値です。筋力はその2〜5倍の速さで落ちます³⁾。
ただ、測るだけでは体は変わりません。足りないところがわかっても、直し方は書いてないからです。
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