メインコンテンツへスキップ
見出し画像

"COPY BOY" ぼくのクローンは小学生⑪【夢も同じ!?】

    ワケあって、大学生の僕はクローンと暮らしている。ヤツは小学2年生。8歳の子どもだ。
    顔は、幼い頃の僕と全く同じ。ジャンケンすると決着がつかない。
    なんで、こんなことになったのか。よかったら、そのワケを聞いてほしい。
    (※第1話へ)

    <夏、第11話>

    夜中、目が覚めた。

    夢を見ていた。
    時々見る夢だ。空を飛べる能力を身に着けている。
    でもビューンと鳥のようには飛べず、平泳ぎのように手足を搔くと、少しずつ体が浮くのだ。まるで水の中のような不自由さで、急いで空気を掻かないと沈む。頑張れば5メートルくらいは空中に浮遊する。簡単に飛べないところが妙にリアルなのだ。リアルだから夢とは気づかない。

    「空を飛べた」と、人類初の超能力獲得にいつも歓喜するのだが、毎度のごとく風に煽られて墜落し、ビクンと足を突っ張って起きる。

    画像

    シーツで作った秘密基地で、チビも同じように目を覚ましていた。
    「落ちた」チビが枕に顔を押し付けたまま言う。
    「落ちたって?」どういうこと?
    「風が吹いて」
    「風?空を飛んでた?」
    「こうか?」布団の上で仰向けに平泳ぎをしてみた。
    「そうそう」
    なんだ?なんだ?もしかして、僕とチビは同時に同じ夢を見たのか…?

    画像


    「夢…ですか。面白いですね。そんなことあるかもとは言われていましたが…」
    猫ちゃんはスタパのカウンターでアイスカフェモカを注文しながら言った。
    「あるかも?」同じ夢は想定内なの?
    店員に「あ、氷少なめに。ユタカさんは?」
    「アイスコーヒーで。」
    「あれから調べていくうち、すこしづつ分かってきたんです。」
    「また怖いことじゃないですよね…。」
    「ふふふ。大丈夫ですよ。」打ち消しながらも、また研究者の顔になる。「クローンと一緒に暮らしていると、互いの脳の細胞組織が共鳴しあうようです。」猫ちゃんと僕の頭を指差す。
    「きょうめい?」
    「で、だんだん脳波のパルスが合ってくるんです。だからシンクロも起こりやすい。」
    脳のパルスはよく分からないが、要するに考えが似てくるってことか。「一緒に暮らしているだけで?」
    「同じ夢まで見るなんて。本当にあるんですね。」
    「こわい。こわい。」
    「逆に、夢を見ている間は、おチビちゃんとユタカさん、2人の脳がつながりやすいのかもしれません」
    脳がつながる?「どうやって?」
    「どう言えばいいのかな、2人で『意識の粒』みたいなものをやり取りしているんです」
    「意識?粒?」頭がついて行かない。
    「量子学ってわかります?」
    「でた。また難しいやつだ。」大げさに嫌がってみせると、猫ちゃんはカードゲームの駆け引きのように「知りたくないですか?」いたずらな笑みで僕を試す。
    「うーん、すみません…サルでもわかるように教えてください。」

    画像

    ドリンクを運びながらテーブルに座ると、猫ちゃんはボールペンで紙ナプキンに歪んだ丸を描き始めた。
    「なんすかこれ。そら豆?」
    完璧な彼女も絵は苦手みたい。
    「脳です。見えません?」不満そうにふくれる。ちょっと可愛いけどこれ以上ツッコまず、
    「脳。脳。脳。見えてきました。続けてください。」
    「人の『意識』って、ただの脳内の電気信号なんです。人は『考えている』と思ってるけど、実は、脳内の神経細胞で小さな電気の粒が行き来しているだけ。その粒が、夢を通じて…」
    「夢を通じて、2人の脳を行ったり来たりする?」
    「そう。2人とも同じ人間。細胞分裂した1人の体みたいなもの。だから、そばで生活することで、細胞が1つの脳だと勘違いして、情報の粒をやりとりし始めるんです。わかりやすく言うと、同じラジオが同じ周波数を受けちゃう、みたいな。」2つの脳の間に矢印を何本も引っ張る。
    「僕たちの脳がラジオ…。」
    「そう。細胞というのは元々情報を交換し合うんです。脳に限らないですよ。細胞はすべて。体中、隣合ったひとつひとつの細胞だって、自分がどの位置の細胞か教え合っているんです。細胞みんながお隣さんに耳打ちしてる感じ。だからちゃんとすべての部位が正しい位置にできる。足に耳が生えたり、手のひらに目ができたりしないのはそのおかげ。もし、怪我をして欠損してもちゃんと元通りに再生する。」
    「へぇー」僕が大げさに感心すると、小指でショートの髪を耳にかける。これが猫ちゃんのどや顔だ。こういう時は先生感が出て、年上だったことを思い出す。
    「じゃ、同じ夢を見るっていうのも、ラジオみたいに受信し合っているってこと?」
    「おそらく。ユタカさんの夢か、おチビちゃんの夢か、どちらかを一緒に見ている。時には、2人共同作業で夢をつくりあげているのかも。まだよくわかっていませんが。とにかく、夢を見るレム睡眠の間が、最も意識の粒を交換しやすい状態なのかもしれませんね。」ストローでアイスカフェモカを混ぜている。

    「寝てるときくらい、1人にしてほしいな」
    溶けた氷で薄くなったコーヒーの味が、申し訳なさそうに広がった。

    クローンは同じ夢を見る?


    (つづく)



    第1話へ  前へ  次へ


     
     
    ディズニー・スピルバーグ・藤子F不二雄先生・手塚治虫先生を尊敬する人に悪い人はいません。ダメなパパが娘に読ませるため書いた ”おはなし” なのに「あーあ」な情けない結果に…。せめてひそやかにnoteのすみっこに置かせてください。

    あなたへのおすすめ