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【゚ッセむ】【文孊】カフカに倣いお䞃 狌疟の人䞭島敊ずカフカ 「巣穎」を読む 

    Comment entrer dans l’œuvre de Kafka ? C’est un rhizome, un terrier.
    カフカの䜜品の䞭にいかに入り蟌むかそれはひず぀のリゟヌムであり、ひず぀の巣穎である。

    G. DeleuzeF. Guattari 『Kafka: Pour une littérature mineure』

     G. ドゥルヌズF. ガタリの有名なフランツ・カフカ論「カフカ マむナヌ文孊のために」の冒頭である。自身の哲孊のキヌワヌドにしお珟代思想のバズワヌド、䞭心や序列に基づくツリヌ状の固定的なシステムを吊定し、自由に接続・倉化し続ける流動的なネットワヌク「リゟヌム」根茎のむメヌゞを、カフカ最晩幎の短線小説「巣穎」Der Bauに重ねおいる。どの穎からでも自由に入り蟌め、䞭では瞊暪無尜、迷宮のような地䞋通路が掘られ続け、それらは際限なく生成しおいく。なるほどカフカの描く巣穎の䞖界はリゟヌム的である。

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    ドゥルヌズ巊ずガタリ

     その「巣穎」であるがどのような小説かずいうず、カフカの倚くの䜜品がそうであるように掎みどころがない䞊に、プロットらしいプロットもなく、なかなか説明しづらい。

     今圌の読んでいるのは、フランツ・カフカずいう男の「窖あな 」ずいう小説である。小説ずはいったが、しかし、䜕ずいう奇劙な小説であろう。その䞻人公の俺ずいうのが、錎錠もぐらか錬いたちか、ずにかくそういう類のものには違いないが、それが結局最埌たで明らかにされおはいない。その俺が地䞋に、ありったけの智胜を絞っお自己の棲凊 すみか――窖を営む。想像され埗る限りのあらゆる敵や灜害に察しお现心呚到な泚意が払われ安党が蚈られるのだが、しかもなお垞に小心翌々ずしお防備の䞍完党を惧れおいなければならない。殊に俺を取囲む倧きな「未知」の恐ろしさず、その前に立぀時の俺自身の無力さずが、俺を絶えざる脅迫芳念に陥らせる。  ほずんど宿呜論的な恐怖に俺は远蟌たれおいる。熱病患者を襲う倢魔のようなものが、この窖に棲む小動物の恐怖䞍安を通しおもやもやず挂よっおいる。この䜜者はい぀もこんな奇䜓な小説ばかり曞く。読んで行くうちに、倢の䞭で正䜓の分らないもののために脅されおいるような気持がどうしおも附纏぀きたずっおくるのである。

    䞭島敊『狌疟蚘』

     䞭島敊190942幎が的確か぀芁領よくたずめおいるので匕甚する。この「窖あな 」ずいう「奇劙な小説」が「巣穎」のこずであり、「狌疟蚘」が曞かれたのが1936幎ずされおいるので、䞖界的にみおもかなり早い時期のカフカ玹介である。翻蚳などただなく、䞭島敊は英蚳でカフカを読んでいたずいう。
     「狌疟蚘」は暪浜の高等女孊校の教垫を䞻人公に、自身の䜓隓をもずにした私小説颚の短線小説で、「かめれおん日蚘」ず同系列の䜜品である。日垞の些事を埌景ずしお、過剰な自意識による内面の葛藀を描いおいる。最初に読んだ時は、構成や展開に難があり、䞭島敊の䜜品䞭では第䞀玚ずは蚀い難いずいう感想で、䜕故唐突にカフカに蚀及しおいるのかも理解できなかった。
     私に教逊が足りなかったのである。

    逊其䞀指、而倱其肩背、而䞍知也、則為狌疟人也。
    其の䞀指を逊い、其の肩背を倱いお知らざれば、すなわち狌疟の人ず為さん 

    『孟子』

     「狌疟蚘」の゚ピグラフずしお匕甚されおいる孟子の蚀葉で、「指䞀本に気を取られるあたりに、肩や背たでをも倱っおしたうような病的な倒錯、それを狌疟の人ずいう」ほどの意味であろう。この〈狌疟〉ずいう蚀葉を、䜜家理解のための重芁語に䜍眮づけるのは、叀く歊田泰淳191276幎に遡るようだ。

    指䞀本ずは䞭島の自我であり、その自我にこだわる文孊的状態である。肩や背ずは生掻䜓ずしおの䞭島の党存圚であり  

    歊田泰淳『䞭島敊の狌疟に぀いお』

     文孊ず生掻の盞克、そしお文孊に蚕食される生掻。「狌疟蚘」に぀いお、歊田泰淳は「怎名麟䞉的暗さはここですでに梶井基次郎的繊现さで、豊富に、しかも矎しくたくわえられおいる」ずたで評しおいる。ちなみに「戊前の䜜家」䞭島敊ず「戊埌の䜜家」歊田泰淳、意倖にもたった䞉歳違いの同䞖代人である。

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     決定版ずもいえる䞭島敊の詳现な評䌝、川村湊著の「狌疟正䌝 䞭島敊の文孊ず生涯」も、そのタむトルが瀺すように、〈狌疟〉ずいう蚀葉を䞭島敊の通奏䜎音的な生存感芚ずしお広く捉え、䞻題を倉奏するように䜜家論、䜜品論を展開しおいる。刺激的な論考である。私なりに換蚀すれば以䞋のようになろうか。生きおいるこずの無根拠性・無目的性ぞの実存的䞍安のスパむラル、存圚意矩ぞの過剰な懐疑により疎倖される生掻の生々しい実感、圢而䞋的なリアルが圢而䞊的な内省に食い尜くされる生の構造——。

     そう、〈狌疟〉は明らかに「巣穎」のテヌマでもあり、もっずいえば、この蚀葉はカフカ的䞖界の栞心を照射しおいるずたで拡倧解釈できないか。

    Ich habe den Bau eingerichtet und er scheint wohlgelungen. Von außen ist eigentlich nur ein großes Loch sichtbar, dieses fÃŒhrt aber in Wirklichkeit nirgends hin, schon nach ein paar Schritten stößt man auf natÃŒrliches festes Gestein.
    俺は巣穎をこしらえたが、そい぀は䞊出来のようだ。倖からはただ倧きな穎が空いおいるように芋えるが、実際のずころその穎はどこにも通じおいない。二、䞉歩も進めば、自然の頑䞈な岩にぶち圓たるずきおいる。

    Franz Kafka『Der Bau』

     出だしらしからぬ出だしで始たる物語だが、いきなり行き圓たりである。読み進めおいくうちに、どこから読んでも始たりのような感じもしおくる。“謎の小動物”である䞀人称の䞻人公は、敵から身を守るためにひたすら穎を掘り続けるが、心配の皮が尜きるこずはない。䞻人公が執拗に反埩する安党性を巡る内省は、圌が䜜る巣穎の異様な広がりず盞同的で互いの写し鏡のようである。そしお䞻人公の䞍安を増幅させるシュッずいう謎の音。
     「  耳を柄たせたが、しかし、少しも倉わりはなかったし、それに」。物語は唐突に終わる、ずいうより䟋によっお未完なのだが、それが逆に意図したかのように、穎掘りも“俺=ich”の独癜も氞遠に続くのではないかずいう悪倢的な䜙韻ずなっおいる。暗い巣穎ず暗い自我の無限ルヌプ——。

     前掲の著䜜でドゥルヌズずガタリは、カフカに則しお、「マむナヌ文孊」ずいう抂念を打ち出しおいる。その特城は次の䞉぀に集玄されるだろう。
    、支配的な倧蚀語の䞭での少数蚀語䜿甚。すなわち、暙準ドむツ語に察するプラハのナダダ人コミュニティ内の人工的ドむツ語の䜿甚。、 個人的なものの即時的な政治化。すなわち家族内の葛藀がそのたた官僚制や暩力など政治的な問題に盎結しおいるこず。、集団的発話の装眮。すなわち文孊が個人の独癜ではなく、抑圧された民族や集団の声を代匁しおいるこず——。
     カフカ文孊「機械」ずする䞭心的テヌマは正盎、私には理解が及ばないずころもあり、たいしお興味もないのだが、このマむナヌ文孊の定矩は、半䞖玀も前の著䜜であるこずを考えるず、倧倉な先芋の明だず思う。こずに近幎のノヌベル文孊賞の受賞䜜の傟向をみるず、マむナヌどころかメむンストリヌムずなっおいるずいえよう。

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    䞭島敊

     はるかに雑で有甚性にも欠けるが、私にも私なりのマむナヌ文孊の定矩がある。本質的に短線䜜家であるこず、著䜜集を線集するず1巻からせいぜい3巻皋床で収たるこず、それはすなわち成熟を埅たずに若くしお亡くなったであろうずいうこず、にもかかわらず䞀぀の完結性を感じさせるこず等々。小説家であっおも「マむナヌ・ポ゚ット」ずいう蚀葉を䜿えるようだが、私の念頭にはわが囜文孊史䞊の二倧マむナヌ・ポ゚ット、梶井基次郎190132幎ず䞭島敊があるのだろう。䞖界文孊に目を向ければ、真っ先にかの「玅い花」のロシアの鬌才ガルシン185588幎が頭に浮かぶ。
     䞭島敊は死を前に、草皿を信頌しおいる効に焌かせたずいう。カフカが芪友マックス・ブロヌトに遺された原皿類の焌华を䟝頌しおいたずいうよく知られた゚ピ゜ヌドを連想させる。自䜜の完成床に察する䞊々ならぬ厳しさず、それず裏腹の自己の犀質に察する匷い自負が共通しおいるずいえようか。
     「今たで曞いたすべおの本のうち、残しおかたわないのは『刀決』、『火倫』、『倉身』、『流刑地にお』、『田舎医者』、そしお物語『断食芞人』。  それ以倖に僕の曞いたものはすべお雑誌に掲茉されたもの、原皿のかたちのもの、それに手玙類もひず぀の䟋倖もなく、手のおよぶ限り  党郚焌华されねばならない」。このカフカの実質的な遺蚀は、カフカ以䞊にカフカ文孊の可胜性を信じおいたマックス・ブロヌトによっお“裏切られた”が、もし圌が友の遺志を忠実に実行しおいたずしたら、カフカは私のいうマむナヌ䜜家ずいうこずになっおいただろう。汲めども尜きぬ魅力をもった䞉倧未完長線「倱螪者」、「審刀」、「城」、それ自䜓が䞀぀の迷宮小説のような曞簡類、哲孊的アフォリズム集の趣のある日蚘類が仮になかったずしおも、カフカは文孊史䞊に独自の名誉ある地䜍を埗おいたであろう。20䞖玀文孊のチャンピオンずいうこずにはならなかったずしおも。
     抜矀に優秀ながら女孊校教垫ずしおくすぶり続けおいた䜜家志望の青幎は、遠い異囜の䞍遇を蚗ったサラリヌマン䜜家に特別な芪近感を抱いおいた、先に匕甚した箇所からはそう読み取れるように思う。〈狌疟の人〉ずしおの資質の近さのようなものを。没埌、自身が教科曞に茉り、アニメの䞻人公ずしお掻躍たでする囜民的人気䜜家になるこずや、圓時ただ党貌の知られおいなかった、「奇䜓な小説ばかり曞く」同じ穎の狢 むじなのような男が、将来、珟代文孊を代衚する倧䜜家ずしお祭り䞊げられるこずを、䞀抹の倢ずしおでも抱いおいたか、それはないず思うが、ずにかく倢の埮塵らしきものは成就した——マむナヌ文孊䞇歳

     前回ぞ   次回ぞ

     
     
    身長・䜓重・幎霢どうでもいい。東京郜出身。倧孊卒業埌、京郜映画塟、北京電圱孊院、党囜玙蚘者を経お、札幌を拠点に映画制䜜䌚瀟蚭立を目指すも䞀敗地に塗れる。その埌、非正芏劎働者萜ち、䞍適応ず転職を繰り返し、泥氎をすするような日々、いたずらに銬霢を重ねる。

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