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Photo bykana58kana

男は黙ってMTだろ。

    その友達の一言から、
    男4人の免許合宿が始まった。

    たしか、16日間ほどだったと思う。

    同じ部屋に泊まり、
    同じ講義を受け、
    同じコースをグルグルと回る。

    4人で過ごす毎日。
    本当に楽しかった。

    食堂の大盛り定食。
    負けたら腕立てマリオカート。
    カラオケでの熱唱。
    サウナと水風呂で我慢比べ。
    夏祭りの屋台で男気ジャンケン。

    なんて馬鹿な生き物なのだろう。
    だが、それがいい。

    男旅の醍醐味って、
    たぶんこういうことなんだろう。

    そんな16日間の中で、
    毎日のように頭痛に悩まされている奴がいた。

    今回の合宿の言い出しっぺ。
    「男は黙ってMTだろ?」
    そう言っていた本人だ。

    「温泉に入ると和らぐんだよ。」

    すぐに察した。

    おそらく、
    緊張していたのだろう。
    ガッチガチだった。

    ゲラゲラ笑いながら、
    みんなで肩を揉んでやった。

    ふざけているけど、
    ちゃんと心配もする。

    そんな関係が、
    なんだか可笑しかった。

    所内ではコースを指定され、
    4人で先頭を追う形で運転した。

    1番が言い出しっぺ。自分は3番。

    1番がコースを間違えれば、
    2番もつられて間違える。

    それを見て、
    自分と4番は笑いながら運転していた。

    そんな日々の中、
    少しずつ仮免試験の日が近づいてくる。

    みんなでふざけ合いながら、
    イメージトレーニングを重ねた。

    MTの難所。
    それは間違いなくあれだろう。

    失敗すれば帰れない。

    誰もが一度は意識した。

    そして試験当日。
    その日も、いつもの順番だった。

    ただ、いつもと違ったのは、
    一人ずつ運転し、
    次の受験者は後部座席に座ること。

    1番の運転する車に2番も乗った。
    3番の自分と4番は見守っていた。

    そして、MTの難所が立ちはだかる。

    坂道発進。

    そして、

    エンスト。

    それも、3回。

    車の窓が開いていたおかげで、
    頭を抱えている運転手が見えた。

    申し訳ない。
    本当に申し訳ないのだが
    4番と一緒に爆笑してしまった。

    続く2番の坂道発進。

    見事にエンスト。

    そして、数メートル後退。

    「男は黙ってMTだろ!!」

    あの言葉が、
    少しずつ違う意味を持ち始めていた。

    結果、
    自分と4番は合格。
    先に道路へと進んだ。

    1番と2番は仲良く延泊した。

    どうせなら、
    みんなで延泊したかった。

    あの16日間。
    本当に楽しかった。

    今では、
    1番は外資系企業に就職。
    とんでもない額を稼いでいる。

    2番は台湾の女性と結婚。
    向こうで幸せに暮らしている。

    そして、自分。

    去年、転職活動をしていた自分を
    最後まで支えてくれたのは、

    あの1番だった。

    馬鹿みたいに笑った日もあった。
    人生について真剣に話した日もあった。

    人との出会いは人生を変える。

    一緒に馬鹿をやった友達が、
    人生のどん底にいる自分を、
    今度は本気ですくい上げてくれた。

    ありがとう。

    エンストしたっていい。
    後退したっていい。

    ただ、延泊すればいい。

    一度止まって、深呼吸して、
    もう一度、前を向けば良い。

    どんな坂道だって、
    いつかは越えられる。

    だから、いつか
    こんな俺を笑ってくれ。

     
     

    mugi

     
     
    忘れない。

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