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🌀嵐の丘で立ち尽くす者たち 8


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     第8話 丘の上へ


     どれほど歩いたのか…
    三人にはもう分からなかった。


     雨はもう、空から降るものではなかった。風に引き裂かれた水の塊が、巨大な獣が暴れるように、横から、下から、三人の体を叩きつけてくる。

    足元はぬかるみ、踏みしめるたびに沈む。
    それでも、前へ進むしかなかった。

    水は、まだ追ってきている。

    「……高くなってます」


    ホズミが、息を切らしながら言った。

    確かに、足元の感触が変わってきていた。
    水の冷たさが、少しずつ引いていく。
    かわりに、地面が固くなる。

    「丘だ……!」


    レオンが叫ぶ。

    三人は、最後の力を振りしぼって、斜面を登った。
    雨が顔を打ち、風が体を押し戻そうとする。

    アルジェリーナは、泥水を吸って鉄のように重くなった翼を必死に畳んだ。

    「ここまで来たら……!」

    誰かが言った。
    けれど、その言葉は風に消えた。

    丘の頂に立った瞬間、景色は消えていた。
    下方では、荒れ狂う水が古い地面を噛み砕き、新しい道を作っている。
    昨日までの世界が、水と風という巨大な筆によって、まったく別の形に描き直されていくのを、三人はただ立ち尽くして見つめていた。

    「……すごい」

    アルジェリーナが、小さく息をのんだ。

    怖さよりも先に、圧倒されていた。
    自分たちが、あまりにも小さい存在だと、はっきり分かる。

    その時だった。

    風の向きが、変わった。

    一瞬、音が遠のく。
    嵐の中に、ぽっかりとした間が生まれる。

    ホズミは、ふと足元に目を向けた。

    「……あれ?」

     激しい雨に洗われ、何もかもが流されていく中で、そこだけが頑固に動かない土があった。
    ホズミが目を凝らすと、泥のすき間から、針の先ほどの小さな緑が顔を出している。それは嵐に怯えているのではなく、嵐の音を聴いているかのように、ピンと背を伸ばして立っていた。
    まだ、土を押し上げきれていない。
    けれど確かに、そこに“生きているもの”がある。

    「今は……」

    ホズミは、それ以上言わなかった。

    その瞬間、再び風がうなりを上げた。

    空が、低く唸る。
    雲が渦を巻き、重なり、厚みを増していく。

    雷が、近い。

    「来るぞ……本当に」

    レオンは、丘の縁に立ち、空を見上げた。

    アルジェリーナは、無意識にその場所を守るように、身を寄せた。
    理由は、まだ分からない。
    ただ、離れてはいけない気がした。

    雨が、さらに強くなる。

    風が、丘の上をなぎ払う。

    三人は、ここから動けなくなった。

    ――ここで、耐えるしかない。

    嵐は、まだ始まったばかりだった。



    逃げまくった挙句に丘に辿り着いた三人に何が待ち受けるのか⁉️

    わし(ムヒ)の持つnoteかだけが知っている😁


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