
【掌編小説】待つひと
「待つ時間が好きなの」
彼女はいつも私に言う。
今日も待ち合わせ場所の賑やかな通りに面したカフェに入ると、窓際の席で、彼女は静かに本を読んでいた。
「待たせちゃった?」と声をかけて、向かいの席に座ると、彼女は「早く着いちゃって」と言う。
いつもの話をしながら、ふと、聞いてみた。
「ねえ。待つのが好きなの?」
「好き?んー…」
外の景色をぼんやり見つめながら、彼女は言った。
「待たせるなら、待つ方が楽しいでしょ?」
「いつまであいつを待つの?」
私のその問いには返事がなかった。
「もうさ、あんな男やめな」
小さく呟くと、彼女は答えず、ただ静かに涙を流した。
私は彼女の手を握って、窓の外を眺めた。