国がビジネスに首を突っ込むとどうなる?クールジャパン機構の大赤字に学ぶ「公金の使い道」 -行政編②-
こんにちは!前回の記事では「行政が作る『機構』の存在意義」について、すぐにお金にはならないけれど未来の命綱である「基礎研究」をどう守るか、というテーマでお届けしました。
今回はその「第2話」です。
前回のテーマが「公金で守るべき正しい形」だとしたら、今回はその真逆。
「国がわざわざ別組織(機構)を作って、民間のビジネスに下手に首を突っ込んだら、とんでもない大失敗(黒焦げ)になった」という、いま最も問題児とされている【クールジャパン機構】の闇について、リアルな雑談をお届けします。
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### ■ そもそも何のために作られたの?
馬っ超(以下、馬):
前回の話を踏まえてさ、ずっと気になってた組織があるんだよね。ニュースでよく叩かれてる「クールジャパン機構」ってあるじゃん。あれってそもそもどういう目的で作られたの?
Gemini(以下、G):
正式名称は「海外需要開拓支援機構」といって、2013年に作られた組織だね。建前としては、馬っ超さんが前回言っていた「呼び水(インフラ整備)」になることだったんだ。日本のアニメや食、伝統工芸を海外に売り出したいけれど、民間だけではリスクが高くて販路を開拓できないから、国が最初にお金を出して「世界への輸出インフラ」を整備しよう、というのが大義名分だった。
馬:
インフラ的な部分や、誰もやりたがらない不採算要素を国がお金負担して整備するってのは十分アリだし、それで赤字になるならまあ許せるよね。それを呼び水として民間の参入や投資を呼びこめて、結果として市場が生まれてGDPに寄与するわけだから。環境対策とかと同じで、そういうための機構だと思ってたんだけど……違うの?
G:
そこが最大のズレなんだ。蓋を開けてみたら、彼らがやったのはインフラ整備じゃなくて、個別の民間ビジネス(海外の日本食フードコートや、服を売るセレクトショップ、個別の配信サイトなど)への「普通のベンチャー投資」だった。
馬:
あー。それってインフラじゃなくて、民間企業が自力でリスクを背負ってやるべき「普通のビジネス」じゃん。
G:
そう。基礎研究やインフラなら、赤字が出ても「技術」や「道路」という資産が残る。でも、これはただのビジネス出資だから、投資先の企業が失敗したら、税金としてつぎ込んだお金が文字通り「一円も戻ってこずに消えてなくなる(焦げ付き)」んだよね。結果、累積赤字が数百億円に膨らみまくって大炎上した。
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### ■ 補助金は「もらうことが目的になるからクソ」
馬:
それって結局、ただの補助金政策とあんま変わらなかったってことか。ぶっちゃけ政府支出って、公共投資(インフラ)か購買以外はあんま意味ないんだよね。てか、ビジネスのための資金調達とか補助金だったら、すでに実績のある「政策投資銀行(DBJ)」とかそっちで受け持てばよかったんじゃないの?わざわざ新しい箱を作る必要あった?
G:
そのツッコミ、当時からまともな経済学者が全員言っていたポイント(笑)。あえて新しく作った裏には、役所の「縄張り争い」があったんだ。政策投資銀行は財務省の管轄。でもクールジャパンをやりたかったのは経済産業省(経産省)。だから経産省は「自分たちの自由になる財布(ファンド)」が欲しかった。
馬:
あー、出た。役所の縦割り行政ね。
G:
その通り。「銀行の固い審査じゃアニメやファッションにお金が出せない!だからもっと積極的にリスクを取れる専用の機構が必要だ!」と言い訳したんだ。でも、馬っ超さんがさっき言った通り、補助金や公金って「もらうことが目的」になりがちでしょ?
馬:
そうそう。もらう側は失敗しても痛まないからリスクがないしね。だからクソ案件が群がる。
G:
まさにそれ。銀行の厳しい審査なら絶対に弾かれるような「ずさんで甘いビジネスプラン」に税金を突っ込みまくった結果、見事なまでの「黒焦げ」の山ができあがった。
海外でのアニメ配信サイト事業(ACJ)に約10億円出資して数年で大赤字損切り、アジアでの日本食フードコートも現地のニーズを無視して閑古鳥。極め付けは、国内の吉本興業関連の教育事業などに数十億円出資して、「これのどこが海外需要開拓なんだ?」と国会で大バッシングを浴びた。
馬:
本当に黒焦げばっかじゃん。逆に、中には上手くいった事例とかはなかったの?
G:
打率は1〜2割だけど、あるにはあるよ。例えば博多ラーメンの「一風堂」の海外展開をサポートした出資は、現地のローカライズが完璧にハマって大成功。会社が上場したから、機構は株を売ってしっかり利益を出して回収できた。
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### ■ 明暗を分けた「MyAnimeList」
馬:
一風堂はすごいね。他には?
G:
アニメファン向けの海外コミュニティサイト「MyAnimeList」への出資だね。これは世界中の日本アニメオタクが集まる巨大サイトなんだけど、今も世界的なインフラとして機能していて上手くいってる。
馬:
それだよ!MyAnimeListはまさにインフラ整備じゃん。こういうのだけやりゃあいいのに。アニメだけじゃなくて、他のジャンルでも同じようなやつやらなかったの?今ならインバウンド向けのツアーエリア紹介サイトとか、日本の工芸品を海外に発信するサイト、それを売るECサイトとかさ。
G:
まさにその通り!実は機構も、馬っ超さんが今挙げた「インバウンド旅行サイト」「伝統工芸EC」にはバッチリ目を向けて、実際にお金を突っ込んでいたんだ。でも、MyAnimeList以外は全滅した。
馬:
なんで?ジャンルとしては間違ってないでしょ?
G:
違いは「ゼロから作ったか、すでにあるものをバックアップしたか」なんだ。失敗したECサイトとかは、国が関わってから「お役所主導でゼロからサイトを作った」から、海外のファンのニーズとズレまくってAmazonや現地の巨大サイトに秒殺された。
一方のMyAnimeListは、すでに世界中のオタクが数千万人規模で自発的に集まっていた「既存の最強インフラ」を、後から丸ごと買い取って運営を強化したんだよ。
馬:
あー、なるほど。お役所がゼロからオシャレなサイトを作っても誰も見ない。すでに世界中が毎日使っている「オタク版Wikipedia」みたいな場所を、国が買い取って潰れないように支える、というやり方だけが正解だったわけね。じゃあ、失敗したサイトたちも、既存の優秀な民間サイトをバックアップする形で支援すればよかったじゃん。実際にそういうサイトはあったでしょ?
G:
あった。でも、ここに「お役所のプライド」が邪魔をした。役人の偉い人たちは、すでに完成している民間サイトを後ろからお金だけ出して支える地味な役回りよりも、「自分たちが主導して新プロジェクトを立ち上げた!」という華々しい実績(記者発表)が欲しかったんだよね。
さらに、優秀な民間サイトからすると、国からお金を入れると書類手続きがめちゃくちゃ面倒になるし、経営に口を出されてスピード感が落ちる。だから、優秀な民間ほど機構からの出資を断ったんだ。結果、自力で資金調達できない、おねだりクソ案件ばかりが機構の周りに残っちゃった。
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### ■ 「公金を注入する意義」の本質
馬:
でもさ、さっき旅行サイト(インバウンド紹介サイト)もやってたって言ったじゃん。楽天と組んだやつ(Voyagin)。それってコロナの不運はあったにせよ、そのまま続ければよかったんじゃないの?上手くいってるときは実績出てたんでしょ?いっときのマイナス(大ピンチ)を支えるところこそ、公金注入の意義な気がするんだが。それともこの理屈も、今だから言える結果論?
G:
いや、馬っ超さんのその指摘は結果論なんかじゃなくて、まさに「公金の存在意義」の本質だよ。実際、コロナ前までは順調に外国人観光客を日本の地方に送り込む「本物のインフラ」になりかけていた。本来なら、コロナ禍という民間では耐えられない大ピンチの時に、国のお金で支えて未来へつなぐべき案件だったんだ。
馬:
でしょ?なんで支えきれなかったの?
G:
他の事業(アニメ配信やフードコート)で、コロナ前からすでに数百億円の致命的な赤字(黒焦げ)を叩き出していたから、組織全体に体力が全く残っていなかったんだよ。財務省から「これ以上赤字を増やすな、早く資産を売れ」と詰められて、一番見込みのあったはずの旅行サイトを、コロナ禍のドサクサで手放すという最悪の悪循環に陥った。他で無駄遣いしていなければ、本当に守るべきインフラを支えられたのに……という、機構の完全な失策だね。
馬:
なるほどねえ。てことは、優秀な民間に来てもらうためには、手続きの簡素化が必要になるのね。でも、それをやると今度はクソ案件が群がってくるから、なかなか悩ましいところね。
G:
まさにその通り!それこそが公金を使った投資や補助金における「永遠のジレンマ」なんだよね。
手続きを厳しくすると、悪い奴らは防げるけれど、優秀な民間から「面倒くさい」と嫌遠される。逆に緩くすると、使いやすくなるけれど、補助金目当てのクソ案件がゾンビのように群がってきて税金が食い潰される。
クールジャパン機構は、このジレンマの泥沼に完全にはまり込んで、2024年時点で約340億円の累積赤字を出し、国から「経営統合(事実上の廃止・縮小)」を突きつけられる結果になったんだ。
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## 📌 まとめ:この記事のポイント
・クールジャパン機構の失敗:誰もが使う「インフラ」ではなく、民間がやるべき個別の「ビジネス(商業投資)」に国が中途半端に首を突っ込み、税金を焦げ付かせた。
・縦割り行政の弊害:既存の「政策投資銀行」を使えば厳しい審査ができたはずだが、省庁の「自分たちの財布(ファンド)が欲しい」という縄張り争いで新しい機構が作られてしまった。
・成功と失敗の境界線:お役所主導でゼロから作ったサービスは全滅。すでに民間で成功してファンが集まっているインフラ(MyAnimeListなど)を「後ろから支える」形だけが上手くいった。
・公金運用のジレンマ:「手続きを厳しくすると優秀な民間に逃げられ、緩くすると補助金目当てのクソ案件が群がる」というジレンマ。さらに他事業の無駄遣いのせいが祟り、コロナ禍という「本当に公金で支えるべき大ピンチ」の時に優良事業を支えきれず手放す本末転倒が起きた。
第3話書きました