
コラム Focus(#48)|「何をやるか」より先に、「なぜやるか」を決める。|音楽プロデューサー
僕は仕事をするとき、いつも「クリエイティブ」と「デリバリー」をセットで考えている。
何をつくるのか。そして、それをどう世の中へ届けるのか。
どれだけ素晴らしい音楽をつくっても、届かなければ存在しないのと同じになってしまう。逆に、どれだけ巧みに届けても、その中心にあるクリエイティブが弱ければ長くは残らない。
だから、僕にとっては両方が仕事だ。
ちょっと恐縮だけれど、大谷翔平選手が「打つ」「投げる」の両方で大谷選手にしかできない結果を出しているように、僕なら「クリエイティブ」と「デリバリー」。その両方を自分らしい方法でやり切ることを、ずっと考えている。
この音楽は、どうしたらもっと面白くなるのか。この作品が世の中に出たとき、誰の心を動かすのか。どんな社会的な意味を持つ可能性があるのか。
そんなことを、日々妄想している。
そして、クリエイティブでもデリバリーでも、プロジェクトを始めるときに必ず確認することがある。
5W1H。
その中でも、僕が特に大切にしているのが、WHYとWHATだ。
なぜ、それをやるのか。
何を、やるのか。
ここが曖昧なまま始めると、どれだけ優秀な人が集まっても、途中でプロジェクトの足並みが崩れてくる。
プロモーションをする。SNSを動かす。MVをつくる。ライブをする。広告を出す。それ自体が目的になってはいけない。
「なぜやるのか」があって、初めて「何をやるのか」が決まる。
WHYとWHATが見えれば、現在地と目的地が見えてくる。そして、その二つの間にあるギャップも見える。
あとは、そのギャップをどう埋めるかだ。
誰とやるのか。いつやるのか。どこでやるのか。そして、どうやるのか。
WHO、WHEN、WHERE、HOWが、そこで初めて具体的になっていく。
僕は、この順番をかなり大切にしている。
もちろん、最初に考えたプランが正解とは限らない。むしろ、やってみなければ分からないことの方が多い。
だから、まず動く。違ったら、秒速で修正する。もう一度やる。
今の時代は、そのくらいのスピード感でいいと思っている。
ただし、戦術は秒速で変えても、WHYまで簡単に変えてはいけない。
ここがチームで共有されているかどうかは、とても重要だ。
プロジェクトがうまく進まないとき、個々のスタッフの能力が足りないのではなく、そもそも「なぜ、これをやっているのか」が共有されていないことがある。
それぞれが一生懸命なのに、違う方向へ走っている。
これほど、もったいないことはない。
逆に、WHYとWHATが共有されているチームは強い。
制作も、宣伝も、マーケティングも、マネジメントも、それぞれ役割は違っても、同じ目的地へ向かうことができる。
これは、曲をつくるときも同じだと思う。
なぜ、この曲をつくるのか。
何を、この曲で伝えたいのか。
そこにクリエイター自身の答えがなければならない。
世の中に迎合する必要はない。
マーケットを見ることと、マーケットに自分を合わせることは違う。
自分は何をつくりたいのか。なぜ、それを世の中に出したいのか。
そこには、自分なりの意見が必要だ。確信が必要だ。
そして、世の中に出したら、現実を見る。
届かなかったら、考える。
また試す。
また直す。
その繰り返しだ。
WHYとWHATは、簡単には変えない。
HOWは、何度でも変える。
クリエイティブも、デリバリーも、その繰り返しの中で強くなっていく。
何をつくるのか。
なぜ、つくるのか。
そして、なぜ、それを届けたいのか。
僕は今日も、そこから仕事を始めている。
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