
【読書日記】「対岸の彼女」自分と出会い直し、一歩踏み出す勇気をもらえる本

大きな決断の前で、怖くて怖くても自分の背中を押さねばならない時
読みたくなる本があります
「対岸の彼女」(角田光代著 文春文庫)
これまで、何度も読んでいるのですが
今、また読み返したくなり、一気読みしました
ざっくりとストーリーを書いておくと
3歳の娘がいる専業主婦の小夜子
突然働きに出る所から話が始まります
子育てと家事に追われる生活の中で
夫にも義母にも言いたいことも言えず
どんどん自分に自信を無くし
また、公園でお友達遊べない娘にもいらだつようになり
もう一度自分を取り戻し
社会とつながりたいという思いで仕事をすることにしたのでした
就職が決まったのは、旅行会社だけれど、仕事の内容は掃除という
ちょっと変わった会社で
社長の楢崎葵が、同じ大学出身で同い年の小夜子を気に入って
すぐに採用となったのでした。
専業主婦だった小夜子は
夫の顔色をうかがい、義母の顔色をうかがい
自分に自信を失い、子育てにも自信を失っていたのですが
仕事を始めたことで
妻でも、嫁でも、母でもない自分と出会い直し
だんだん自分を取り戻していきます。
実は葵にもまた、
他人の目を気にし、怯え、自分を見失っていた過去がありました
小夜子が本当の自分と出会っていく“今”を描いた物語と
自分を見失っていた葵が、再び自分と出会い直していった“過去”の物語
時間軸の違う二つの物語が折り重なるように進んでいきます
葵は中学生のころいじめられていて
それが原因で引っ越して知り合いのいない高校へ行くのだけれど
そこでも女子の派閥やいじめがあり、保身に走る葵
そんな中で出会ったのがナナコ。
ナナコはいじめの対象にされても一向に動じません
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今、みんなが、あたしについていっていることは、あたしの問題ではない
人の抱えている問題は、あたしの持つべき問題ではない。
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ホント、その通り。
人のことをとやかく言う人は
とやかく言う事で、自分を優位なところにおいて安心しようとしているだけ
裏返せば、心の中は不安でしょうがない
心配しないといけないのは、自分自身のこと
この辺の十代女子の人間関係が、めちゃめちゃリアルなんだけれど
この問題が10代だけで終わらずに、そのまま大人になってしまう
それもまた現実だ
深いところで心をしずかに侵食され続けるのか
それを断ち切れるのか
それは自分次第。
学校の中で、集団からはみ出さずに上手くやっていく事が
上手く生きることだと思い込んでしまったまま大人になると
現実社会の中でも
人と同じように与えられた役割を上手く演じようとする。
けれど、本当にそうなのか
本当は心の中で、不満を募らせている自分に気づいているのに
それに蓋をして、波風立てないようにふるまう
事を起こさずに生きることが幸せだと言い聞かせていないか。
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葵の話は、使った事のない洗濯機の説明を聞かされるのにどこか似ていた。
見ているものも、欲していることも、目指している先も、まるで違う。
けれど、違うからこそ、今こうして話しているのだと小夜子は思うのだった。
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おそらく、使った事のない洗濯機を目の前にして
どうやって使えばいいのか途方に暮れている時
今までであったことのない自分にも出会っているのだと思う。
人は、自分と同じものを持っているとか、同じところに属しているとか
同じように感じたり、考えたりする人といると安心する。
けれど
それは、分かりあえて当然だと思う危険をはらむ
その結果、同じでないものを排除したり、
同じであることを強制しようとする
それが、人間関係の居心地の悪さだったりする。
理解できない事(人)
分からない事(人)に向き合う時
同時に、理解できない、分からない自分とも向き合っている。
その事が、すごく大事だと思う。
自分の中にだってわからないところがあるのに
人のことが分かるはずがない。
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旅行って、to seeとto doの2種類があるわけね。だけど大前提にto meet
って言うのがないと話になんないよね。
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これは葵の言葉。
これも、心に深く刺さります。
to see も to do も結果
どんな景色を見たか、何をしたか
それはあくまで結果であり、完了した事
でも
To meetは違う
何かと出会い、そこから先の未来がある。
何に出会うか分からないけれど
分からない者に出会った自分は
どんな風に感じ、どんな風に思うのか
わからない事、経験したことのない事こそが
かけがえのないものだ
それは、まさに、使った事のない洗濯機!!!
予測できない未来
とんでもないことが起こるかもしれない
困ったことになるかもしれない
でも少しずつ分かっていく楽しみがある
でも、その先に何があっても、私は逃げずにそれが何かを見届けてやる
そう信じたい
それが出会うという事
ドキドキだけれど、ワクワク
一歩踏み出す醍醐味だ。
私も今、一歩踏み出そうとしています。
どんな景色が見えるのかドキドキしながら
どんな景色が見えるのか
と同じくらい
どんな自分に出会うのか
それも楽しみ。
しんどくなって
辛くなって
悲しくなって
淋しくなって
何もかも投げ出してしまいたくなっても
それを背負って歩くのは自分しかない
対岸にいる誰かを思い
あの人も頑張っているから
あの人なら、きっとこうするから
あの人が見ているから
そう思って前に進むんだ
誰かに助けてもらうとは
重い荷物を手渡して、自分が身軽になる事じゃない
それは私の問題であって
助けてくれる誰かの問題ではない
対岸にいる誰かの存在が
自分を照らしている。
対岸にいる誰かを通して
自分に出会う
この本を読んで
私自身のことを思い返し
対岸にいる人の存在をあらためて思う
対岸にいるのは
大切な人でもあり
時に、自分自身の顔をしていたりもする
何度読んでも
読むたびに、新しい発見があり
読むたびに、元気と勇気をもらう一冊
何度読んでも号泣します
おすすめです。

