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Photo bysuper_acacia155

【セリフ三題噺】踊る砂漠フクロウ【2000字小説】

    「通常通りでよろしいですか?」
    と、いつ来ても同じ顔の店員に聞かれる。

    前回、この燃料補給スタンドに来たのがいつだったかは全然覚えていないのだけれど、その時もこの店員だったよな、ということは不思議と思い出したのだ。

    「通常通りで」

    店員はニコリと感じよく微笑むと、慣れた手つきで船に燃料を補給し始めた。ゴウンと地響きのような音を立てて、目の前の愛機が揺れる。
    そう、このスタンドは前も、こんな感じで手際がよかった。

    「かしこまりました。よろしければ簡易的なメンテナンスもお引き受けできますが?」
    「いや、あー……」

    一瞬自分の懐具合を気にしてひるんだけれど、振り返った視線の先にある船と目が合ったような気がしてしまった。
    傷ついてボロボロの機体。

    「じゃあ、はい、それも」

    メンテナンスは、受けられるタイミングに、受けておいたほうがいいだろう。

    「承知しました。それでは少々お時間頂戴しますが」
    「かまわないよ」

    店員は、手元のパネルに何かを打ち込んでいく。
    以前にここで会った店員と同じ人物なのか、よく似た顔をした家族なのか、同じ顔の種族なのか、それともロボットなのか。
    見つめても、やっぱりわからない。
    今時そんなことに疑問を持つのは、ハラスメントだなんだと言われるだろう。
    多様性の時代だ。

    「よろしければ、あちらの休憩所で、ごゆっくりお過ごしください。当スタンド敷地外へお出かけになるときは一言お声がけを」

    外は暗く、補給所と休憩所の間を繋ぐ小道の周辺だけ整然と並んで植わっている人工林の前には、古ぼけた電灯がまばらに立っている。光源の燃料はなんなのか。風が吹くと揺れているように見えるのが、なんだか心もとない風情だ。
    敷地を出るときは、と言われてもこんな薄暗い中、地の利が無い状態ではどこに行けばいいのだかわからない。

    休憩所には、古ぼけたテーブルが並んでいた。
    壁際にはこれまた古びた食料自販機が揃っている。懐かしい気もするのに、じゃあ自分がこれを使ったことが今まであるかというと、無い。
    なら、この懐かしさってなんだろうなと不思議に思う。
    昔ながらのパーキングエリアだ。
    そろそろこの休憩所全体が、アンティーク扱いをされそうなオールドスタイルだった。
    誰もいない貸し切りの休憩所には、相棒の姿もなかった。

    どこにいるのか。
    外には、どこまでも広がる砂漠があって、その砂漠に面したテラスに、小さな後ろ頭が見えた。
    テラスへの重い扉を開く。ひゅおおうと風が鳴って、砂漠を渡る風は寒いくらいだ。
    あいつはこれが気にならないのか。
    見渡す限り一面砂漠の星。その真ん中にポツネンとある、この補給スタンド。
    空を見上げると、いくつかの惑星が、案外近い距離で浮かんでいる。惑星の表面の模様までくっきりと見えそうだ。
    その中でも一番距離がありそうな、もやがかっている惑星の周囲が、時折赤く光って見えている。
    あの星の周りは、きっと嵐になっているんだろう。
    嵐はここまで来るだろうか。メンテナンスはしないで早く出たほうが良かったかもしれない。
    運航状況に影響が出る前に、発てればいいけれど。

    「終わった?」
    相棒は、俺の顔を見るなり立ち上がった。

    なんでこんな寒くて何も無いところにいたのだろうか、と思いはするものの、あまり彼の動向には口を出さないようにしている。

    「まだだよ」
    「ええ……」
    「そんな早くは補給できねえの」
    がっくりと椅子に座り込む相棒の頭に手を乗せる。
    「それはラビットフットが年寄りだから時間かかるわけ?」
    ラビットフットは俺の船の名前だ。こいつは、ラビットフットを人間みたいに扱う。
    それが俺は嫌いじゃない。
    「まあな」
    「ふーん」
    「こんなとこにいて寒くないのか?」
    「寒くはないよ、慣れてるし」
    そう言って砂漠に向けられた目が、暗い色を帯びる。
    それ以上、何て言葉をかければいいのか戸惑って、言いかけた言葉を飲み込んだ途端、バサバサ、と大きな羽音が聞こえた。
    相棒は急に元気な好奇心の塊に戻ると、止める間もなく、パッと音のした方へと飛び出していく。
    「おい!」
    慌ててテラスの外へと追いかける。
    立ち止まった彼の視線の先には、今まさに電灯の端に降り立って羽根をしまおうとしている、大きな鳥の姿があった。
    「あれはなに?」
    子どもみたいな声で相棒が言った。
    「フクロウ……だな。見た感じだと」
    「本物?」
    「どうだろう。人工物じゃないか?」
    フクロウの目は、きらりと金色に煌めいた。
    「人工物でもさ、なんでこんな何も無いところにいるの?」
    「何も無いって……。一応は街なんだぞ? ここを出ればモーテルも、店も、ダンスホールもある」
    「ダンスホールって何すんのさ」
    「さーね、踊るんじゃねえの」
    それ以外の目的もあるかもしれないけれど。すかんぴんの男二人には無縁のことだから、口には出さない。
    オールドスタイル。
    古い街だ。

    「きっと昔は動物園もあったのさ」

    フクロウは、まるで返事をするかのように、

    「ホウ」

    と、一声鳴いた。

    --------------------------------

    はらとけいさんの、
    #せりふ三題噺
    始まったときから興味があって、やってみたかったのですが、なかなかお題のレベルの高さに物怖じをして見送ってしまっていたところ。
    今回、えいやとチャレンジしてみました。

    はらとけいさん、よろしくお願いいたします。

    今週の三題は、
    #踊る砂漠フクロウ
    セリフは「通常通りでよろしいですか?」
    でした。


    今回の話は、

    こちらの話と、

    こちらの話の、続きというか同じ二人というか同じ世界線というか、そんな感じです。

    登場人物より先に船の名前が出てくる

    という。
    ラビットフットは赤くて年季の入った宇宙船です。オールドスタイル。

    かれこれ5年近くあっためてる人たちなのですが、いまだにどう書いたらいいかわからず小出しにしています。


    ※見出し画像はみんなのフォトギャラリーからお借りしました。

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    一人称:僕(Female)/だいたいバレエダンサーかお坊さんの話書いてる/BL多め/吉田松陰のアクスタと出かける人 2025:Money for Good×note「#推したい会社」入賞 旧PN奥津雨龍(オクツウリュウ)

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