
🚑父が倒れて救急車を呼んだ事件〜胃潰瘍の内出血は侮れない。 2018年9月
2018年9月下旬ころの話だ。
父が、具合が悪そうにしていた。
顔色も悪かったため、調子はどうなのかと聞いた。
便秘だと言い、トイレにこもっているが、油断はならない。
何しろ、うちの父親には五十代のころ、「便秘だと言い張って病院に行かずにいたら盲腸で腹膜炎になった」前科があるのである。
病院に行けと言ったら、翌日の金曜日にかかりつけの鈴木内科(仮名)に行く予定だと言う。
私は、病院に同行すると言って、朝9時に車で迎えに来ることにした。
2018年9月28日金曜日午前9時。
私は実家に車で乗り付けた。
とりあえず、台所に行く。
母しかいない。
「あ?病院行くって言っとったけど。
お父さんは?」
母はこう言った。
「お父さん、まだ寝とるよ。
起きてこんとよ。」
私はそれを聞いて、父の部屋の外で声を掛けた。
「寝とると!?
病院行くっちゃないとね!?」
結構な大声である。
「今日はお父さん病院に連れて行ってくれるっちゃろ。」
「うん、ついでに診察結果一緒に聞いてくる。」
そのような会話を母としながら台所で待っていたら、父が部屋から出て、よろよろと台所に入ってきた。
着替えておらず、ガウン代わりにしていたバスローブを羽織ったままである。
「なに、着替えとらんと…。」
と言い掛けて、私は父の顔色に気づいた。
顔面蒼白。
父はそのまま台所の床に倒れ込んだ。
「お父さん!?」
母の悲鳴。
私は倒れた父のそばに近寄って、呼吸を確かめた。
息はしている、意識もある、が、とにかく顔面蒼白で、そもそも立てない。
焦り切って父を仰向けにしようとする母を制止して、とりあえず横向き(側臥位という体勢だ)にする。
「お母さん。
とりあえず救急車呼んで。
素人じゃ、どうにもならん。
電話掛けて。」
呼吸も鼓動もあるから、素人の処置はよした方がいいと判断して、横向きにした父を支える。
父は朦朧としていた。
母は、消防に電話を掛けたが、慌てていて説明が怪しくなっている。
電話を途中で交代し(子機だったので移動できた)、私が説明している間中、母はおろおろしていた。
病状を説明して、数分のうちに救急車が来る手筈が整ったところで、母に頼む(私は父を支えていた)。
「お母さん、保険証と財布用意して。」
……頼むと、自分の(母の)保険証を用意しようとする母。
違う!
父の保険証と財布と携帯だけをトートバッグに入れてもらったところで、もう一つ母に頼む。
「救急車来るけん、ドア全部開けてきて。
通路確保せな。」
と言ってもきょとんとしている母。
ここで父のそばにいるのを代わってもらう。
門から玄関から、台所の引き戸まで開け、ストレッチャーが入るように椅子と机をずらしたところで救急車が来た。
さすが救急の消防隊員さんは手際良く父を搬送する(ありがとうございます)。私はそもそも父を病院に連れ行くつもりだったので財布含め、完全に外出する態勢だったので、父の保険証の入ったバッグを持って一緒に乗り込む。
どうでもいいことだが、母以外に、朝っぱらから近所の人が四人も野次馬に来ていた(救急車のサイレンのせいだと思う)。
救急車では、既往歴を聞かれたので、数年前に、🅰️病院に救急搬送されペースメーカーを入れていることを伝える。
カルテがあると踏んでのことだ。
予想通り、🅰️病院に担ぎ込まれ、救急の待合室で待っていると、
「吐血があったんですが。
何か訴えはありましたか?」
と聞かれる。
吐血?
待つこと数時間、検査の結果が一旦出る。
胃潰瘍。
胃潰瘍?83歳が胃潰瘍?
訝しかったが、内出血で真っ赤に染まった胃の内部の写真を見る。うーん。
「出血がひどくて、貧血の値が危険な域にまで達していたので、もう少し遅れていたら、間に合わなかったかもしれません。
しかし、これだけ出血していたら、吐血も血尿もあったはずなんですが…。」
……。
またか!
これはあれだろ!
私が救急車呼ばなかったら、手遅れで失血死してたやつだな!
症状があったなら、正直に言えやジジイ!
ともかくも、胃潰瘍であれば今は薬で治療ができるらしい。
ICUに入っている父に面会すると、点滴のおかげか一応喋れるようになっていた。
母が心配しているだろうと、iPadを起動して、動画を向ける。
母への伝言があればどうぞと向けたのだが、歯の浮くような美辞麗句の後に最後の最後にポロリと出た本音は
「庭の草抜きだけは勘弁してください。」
だった。どれだけ仕事したくないんだこの男。
「いや、救急車呼んで、心配しとる妻に宛てていう言葉ほかにないん。」
もう笑うしかない。
私はその日、父の着ていたバスローブだのの汚れ物をゴミ袋に詰めた格好でタクシーで帰宅したのだが、この胃潰瘍事件は、これで終わりではなかった。
胃癌についてはまた投稿を改めたい。
(終わり)

