
流れる水に目を注いで、腐らせない 「劇場版モノノ怪第三章 蛇神」感想
見る目が二つじゃ足りない大画面で観る極彩色ハイスピードジェットコースターでしたわね~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!
劇場版モノノ怪三部作最終章蛇神、エンタメとして最高峰すぎる。
こちらの感想文(考察っぽい文もちらほら)、最初から最後までネタバレMAXで構成されているためご用心を。 長いです。
十一代目天子を巡る人々
・蛇神は乱暴にまとめると、三年経ってもどことなく大奥の部外者だった幸子様が、天子の御台所様で存る覚悟を決める話である。
嫁いできたはいいものの、中々にアウェイな環境でようやく授かった第二子、真綿でくるむように寄り添ってくれていた二人のお付きを産後数日以内に失い(本気で安静にしてほしくてヒヤヒヤしまくった)、見ず知らずの赤子をその腕に抱えた幸子様は精神的に自立せざるを得なくなる。
正直、火鼠のパンフレット内の相関図で「フキ様に嫉妬している」と書かれていたり、「愛して下さいます!」の辺りで、この人は自分の役目ではなく個人の感情を重視しているなと感じた。同時に、そりゃ大奥と相性悪いな、とも。
自らの判断と発言で赤子を守り、信頼できる人がいない(と思っている)ままならない状況にいながらも、抵抗するかのように我を通す幸子様は、百目によって自分以外の者も思いどおりにいっていなかったり、叶わない願いを秘めていたりするのだと気がつく。その結果、他者を慮る視座を得る。
「自分のことばかり考えていた」という謝罪は恐らく赤子のみではなく、自分を取り囲む人々、そして市井の人々にも向けていたのだろう。自分を貫くというのは強さであると同時に、周りに目を向けない傲慢さにも繋がる。
幸子様はこの結婚における個人間の感情(ミクロ)のみならず、大奥を支えている他者(マクロ)にも目を向け、血の繋がらぬ赤子を我が子と認めることができた。
モノノ怪が斬られた後の「やっと泣けたね」は、ようやく泣き声を上げた赤子のみならず、日の本の象徴である天子の御台所として大奥で生きることを決意した自身の目に浮かぶ涙にもかかる。この瞬間、大奥で生きる親子が生まれた。
・唐傘、火鼠を通してコイツは何を思ってるんだ枠だった天子。
しかし、部屋に乱入してきた薬売りを見て刀に手を掛け、フキ様と面識があると分かれば即座に納める。そして蛇神が襲いかかる中で幸子様を支え、常磐井の姿に取り乱すのを引き止める、とても賢明な人物であると分かる。
そして賢明であるがゆえに、偶然聞いた秘密を抱え、周囲からの天子として自分を見る目を虚ろに受け取り、己の現状に絶望していることも明らかになる。この夫婦は現状を憂う点が似ているが、天子の場合は大奥を維持する役目を果たそうと務め、幸子様は大奥を疎んじ、馴染まない。
また、三代目御台所様の過去を目の当たりにし、夫婦の形について天子は集団の中の役割と捉え、幸子様は人と人の関係と捉えていたズレが判明する。
しかし、自分と同じ立場の赤子に対して「この子に罪はございません!」と言い切る幸子様の姿に目を見開く天子は、幸子様と赤子を母から庇う。
幸子様の言葉は、天子の冷えきっていた心の何かを動かしたのだ。
この二人はこれからに期待したい。情は触れあう中で少しずつ育まれるものなので。
とはいえ、罪悪感からか引け目からかフキ様ばかり相手して幸子様を悲しませたのは事実なので、反省文は100枚書いてもろて……。まあ、ドでかい秘密を知ると同時に友達失ったったぽいし、個人間の関係築く経験値が子供時代で止まってると見受けるので、ちょっとずつ改善しましょうね。
・個人的に最も苦手な登場人物、水光院。もうちょっと若い時期に観ていたら「なんだこの○○○○○(自主規制)、犠牲にならないんか」とか思ってそうだ。血筋と伝統を盲信するタイプの人間の嫌な所が詰め込まれている。「無駄にした」あたりの台詞など、ケッ! と吐き捨てたくなる。
とはいえ、加齢による心境の変化なのか、その狭量さと浅はかさに対する憐れみが先にくる。あんたさっき三代目御台様は立派とか言ってたのに、産めなかった罪とか手のひら返しがお早いことで……とか。周りに人いるのに短刀そうやって持ってたらすぐバレるだろ、とか。
などと毒づきながらも、息子への慈しみは本物ではあると認めざるを得ない。その割に息子からの反応はつれないが、秘密を知ってしまった身には、ことあるごとに尊き血連呼の母親に対し、自分ではなく天子の血を愛していると思っていたのではないだろうか。後の本音を見るにそういうわけではなさそうなので、なんというか……起こるべくして起こったすれ違いだな、と。
終盤、祠の無い地下に訪れた彼女は丸いお椀で綺麗な水を飲み、劇中で初めて「美味しい」と呟く。
このシーンで、実は彼女も大奥で生きるために自分を殺し続けていたのではないか? と気づかされた。思い出したのは、火鼠でサヨさんが燃えている時の、スズ様の焼身シーンのフラッシュバック。御台所様が世継ぎを産むのは三代目以来というセリフから、御中﨟同士だったと推測されるスズ様の死に、心の奥底でなんらかの引っ掛かりがあったのでは?
その中で自らの手に抱いた息子は何もかもに無関心(に見えて)。自分がこの集団で彼を守るべく、何よりも規律を重んじねばと決意しての違和感の封じ込めだったとしたら?
そうあるために縋っていた対象を失った彼女が、変わっていく大奥で生きるこれからを予感させるからこそ、この作品は未来への希望を描くことに成功している。
・北斗氏(溝呂木は他にもいるのでこの呼び方で)ごめん、ずっとモノノ怪退治邪魔するんじゃないよなとか思って。双子を思う良いお父さんで、罪悪感と役目に挟まれた一人の悩める男だった。天子と友達じゃなくなってしまったと思ってるのは多分貴方だけですよ……。でもラストで側に座ってるし、駆け寄る百目ちゃんを見る限り、きっと友達に戻れるよ。
天子とは遠い親戚であることを鑑みるに、溝呂木家は代々万が一の時の影武者的役割を担ってきているのではないか。もしや、北斗氏が奥さんと離縁したのはここらへんにあるのだろうか。双子の女児を産んだ責任とか追及してきそうな人ちらほらいそうだったし……。でも双子ちゃんを大事に思ってるのは確かっぽいのでまあ置いておこう。
それにしても、150年分の秘密を共有した天子・北斗の元に女児のみが無事に産まれたというのは、何というか因縁めいたものを感じてしまう。
そして右足! 人体の欠損がはっきり描写されたの初めてでは? なんか意味あるのだろうかとググると世界的に見ると右が善、左が悪の象徴らしい。ほほう……。
というか奥医師に飲まされてたの何? あれで洗脳というかトリップ状態みたいになってたの……? どこもかしこも闇深……。
大奥で生きる人々
・こんな上司がいて欲しい選手権ぶっちぎり優勝ボタン様。貴女は歌山様に負けず劣らず立派な総取締役です……。
自ら大広間を塩で囲み、水光院の圧にも負けず皆を集め指揮を取り、自身を盾に他を逃がそうとする高潔さたるや。百目に取り込まれてからの本心もあまりに気高く、大奥に全て捧げる覚悟がキマりすぎて眩しさに目が潰れてしまう。
でも、かなり無私寄りな考えでもあるから、一歩間違ったら第二の天局になってた可能性もあるんだよな……。
とは言え、産まれてくる子供を守ったり、行方不明の女中の数に顔を曇らせたり、一人一人を大事に出来る目線を持ってらっしゃるし、今後自分を犠牲にしようとしたらフキ様を筆頭に止めてくれる人がいっぱいいるし、きっと大丈夫。
貴女ならばこれからの大奥をよりよく回していける。自称モブ女中はいつまでも応援し続けます。
・フキ様、圧倒的に優しき母……。憑き物が落ちたみたいに穏やかな表情で、この人は火鼠騒動、その後の出産を経て一つの区切りを迎えたことが伺える。終始赤子や皆を気にかけ、頑なな幸子様を気遣う姿が暖かく、しっかり者の姉であった過去が見える。まあ、夫の側室&これまでの態度が態度だから幸子様にはよく思われてないわけですが……。まあフキ様の内面の変化のことは幸子様にしてみれば「知らんがな」だよな……。
百目に取り込まれた時にこぼした本音に泣いてしまった。フキ様は渦巻き顔になってなかったけど、大奥のためじゃなくて家のために自分の本心を捨ててたのか。
でも多分これは幸子様が初めて「夫の寵愛を受ける側室」ではなく、「おフキという一人の女性」だと認識したシーンじゃないかな。二人が歩み寄るきっかけになってたらいいな。
・ボタン様とフキ様はいわずもがなのベストコンビ。火鼠のバチバチぶりがもはや懐かしい打ち解けっぷり。
序盤のブラックジョークにニヤリとし、ボタン様が蛇神に啖呵切ったシーンの「ボタンさん……!」に泣き、水光院の凶行に気がついてからの「止めましょう!」のアイコンタクトに痺れた。良い友。
・御中﨟みんなで赤子育ててほっこり。タケ様も赤子抱くらい馴染めてて一安心。そしてKY藤巻を睨む一体感よかった。
・出てくる赤子みんな健康そうで良い。最後に幸子様のお姫様とフキ様のお姫様が一緒にいてほのぼのした。
そういえば、赤子の面布に丸描いてたね。推測だけど、面布が外れることで、子供らは政の駒ではなく一人一人であるって認識になったんだと思う。けど、丸の意味合いは「永遠」「循環」。これからこの子らが生きる大奥の暗示でもあったのかも。湧き水汲んだお椀も丸だし。
きっと貴方たちの周りの大人がこれからより良くしていく世界で、生まれてよかったって言えるくらいすくすく育ってね。
・火鼠のMVPツユさん! この人が赤子をお世話する時に側にいてくれるの頼もしすぎる。大広間で幸子様に寄り添ってたり、フキ様を祠に連れていこうとしてるのやっぱりMVPです。でも途中の「ツユが命に代えてもお守りします」がフラグかと思って肝が冷えました。無事で何より。
・一緒に仕事して欲しい選手権ぶっちぎり優勝アサちゃん。最初から最後まで本当に有能。火鼠で内心を探りあってたボタン様とうまく連携とれてて嬉しい。
モノノ怪の脅威を既に体感していたからこそのフクさんへのノータイムビンタに痺れた。判断が早い! 常にキリッとした表情だったけど、カメちゃんと文通してるときは嬉しそうでほっこり。
・三人娘さんたち本当にお疲れ様です。
「モノノ怪いても仕事はなくならないし!」の言葉はそうだよな……と須藤並みに頷きまくった。上でなんか大きい動きがあっても集団って普通に回していかないといけないんだよな。
特にフクさん大変だったね。怖がりっぽいのに渦中に巻き込まれて、塩撒きもして、腰抜けてビンタされて、祠では修羅場を目の当たりにして……。でもラストで大あくびしても叱責されないくらいには労られてるの分かってホッとした。
・劇場版屈指の熱い男&ヒロインと名高い坂下殿!
唐傘「怪しい奴!」→蛇神ラスト「また会えるのかー!?」はヤバイってほんと。涙腺決壊。薬売りさんが来るときはモノノ怪絡みだと分かってても会えると嬉しいって思っててくれたんだ。 というか、御水様のことあんま信用してなかったの、七つ口までは効果が及んでなかったのか、それとも門番として培った危機察知力だとすると流石坂下殿……。
坂下殿の大奥と添い遂げる意志があるからこそ七つ口の面々は連携取れてるし、後継も育ってるんだな。これには坤の薬売りさんもにっこり。
インタビュー等で言及されてきた一番視聴者に近いポジションかつ元気だったらめっちゃ無茶しそうだったからあえてのデバフだろうし、生存してて万歳なんだけど、それはそれとしてお大事にしてほしい。腰は一度やると癖がつくんじゃ。
天のすけを可愛がってた話を詳しくお聞かせ願いたく候! 唐傘で最初に出てお辞儀してた天秤ちゃんが天のすけだったらアツい。
・実は三作品の中で一番成長したのでは登場人物枠須藤。蛇神初顕現時の「浅沼続け!」や襖蹴破りなど、明らかに度胸と判断力が急成長している。頼もしくなって……。これには坂下殿もにっこり。
・浅沼は天秤ちゃん手に乗せながらドタバタとか刀砕かれてヒエッ!とかコミカルなシーン多めだったけど、いきなり子供投げられて受け止めたり双子まとめて運んだりやはり頼もしい。須藤と共に切磋琢磨しながら七つ口を守り続けて欲しい。ラストで泣いちゃったのうるっときた。
・今までの活躍見てないから薬売りさんを訝しむ枠木村殿。退魔の剣の説明で「?」ってなってたの新鮮だった。最初から中盤まで坂下殿の運搬ご苦労様です! 薬売りさんにかけた「またな」が粋すぎる。
・何も聞かずとも塩を跨いで北斗氏に肩を貸す平基、お前はデキる男だよ……。どうか腹黒おじさんがいなくなったあとの政をうまく乗りこなしてくれ。
でも何あるかわからない祠をルンルンで開けるのはどうかと思うぞ。襲われるかと思ってヒヤヒヤした。
出番少なめ三郎丸はもちろん時田パパとも仲良さげでほっこり。さては時田パパ、将棋うまいな?
・それでも大奥は在り続けるラスト、ものすごく「社会」って感じで好き。150年もの歪みの結果とは言え、長きに渡って機能してきた平和の象徴としての天子の秘密を解体すれば、壮絶な混乱を招くだろう。だからこそ人数が減り、甚大な被害を受けながらも、大奥は存続した。
これは誰かが集団のために自らを殺した結果ではない。
「確かに天局(御水様)によって大奥は生まれた。しかし、今運営しているのは、生きている我々である」という事実に立ち返り、平和の尊重と同じくらいに個と個を尊重することを選択した結果だ。
同じように見えて、御水様の威光に思考停止する風潮を破壊し、紐帯で団結する大奥へ再生したのだ。
これからの大奥は、150年の時を経てようやく自立した子なのかもしれない。
犠牲者たち
・常磐井もカワも、決して悪人ではない。むしろ幸子様を大奥の誰よりも案じている。だからこそ取り替え子に加担したのだ。
しかし、その献身はむしろ幸子様の判断力を奪っていたのではなかろうか。
覚え違いなら申し訳ないが、幸子様がきちんと発言し行動したのを観たのは蛇神が初めてだと思う。
火鼠での夜伽についての話し合いでも物言いたげにはするが沈黙し、なすがままに第一子を後見人に預けている
二人は、幸子様のためと疑わない行動で意思決定の成長機会を奪い続けていたともとれる。
ある意味、のっぺらぼうの再演でもある。
……と思うものの、自分が追い詰められているように幸子様に詰め寄るカワや、常磐井の慈愛に満ちてすらいる最期の表情を思い返す度にやるせなさがこみ上げる。
紛れもなく幸子様への思いやりではあったのだ。
・予告で蛇神に襲われてる藤巻を見て「TLが次回! 藤巻殿○す!になってますわ~まだワンチャンあるかもしれませんわよ!」的につぶやいたが、ダメだったね。
まあ正直、高そうな皿見ながら「乳母になれば良いのだ」のとこからフラグだったもんね。子供を駒として見てるのは今は亡き大友らと同じなのよ。猛スピード因果応報。
好ましく思ってない上役がいなくなった途端にハメ外す人間ってよくいるよね……。
御中﨟たちに睨まれてる中で幸子様に詰め寄ってる時点で、あ、もうダメだってなった。欲は身を滅ぼす。
・女中さんが渦巻き顔から素顔になるのをこう描くか! 脅かされ奪われる一人一人の命を生々しく観せる描写を経て、同調圧力からの解放を現す描写に変わるのは凄い。シンプルに凄い。
・三代目御台所様、執愛を体現したような方で鳥肌が止まらなくてもはや鶏皮になってしまった。沢城みゆきさんってすごいや……。
政略的な意味合いが強いであろう結婚相手と相思相愛になれたのは、本来なら幸福だったはずなのに……。
大奥設立から最期、そしてモノノ怪として登場する場面での容貌が能とかの怨霊のそれなんだよ……。泥眼とか橋姫を連想して本気で震えた。
三代目天子だって呑み込みたくはなかっただろうな。でも呑み込んでしまったのは、受けてきた教育だったり立場を重んじる自覚だったりだろうな……。大奥で個人の色々なものを捨ててきた描写は繰返しされてたけど、一番最初に捨てたのはこの人だったのかも。
初見では三代目天子の死因が分からなかったけれど、「梅毒では?」という投稿をちらほら見かけて検索したらかなり当てはまってる……。それなら天子の鼻が取れてたらしき描写に納得がいく。御中﨟の誰かが持ち込んだとか……? うわぁ……。
御台所様が最期を看取れなかったのは、天子のこんな自分を見せたくない・御台所様の自分以外を侍らす天子を見たくない、が最悪の噛み合い方をしてしまったとか……? やめてください鬱バージョン賢者の贈り物は。
一人も産まれてない描写やアニメージュに載ってた情報的にも男性側に原因ある不妊は確定だし、もしそうでなくても、梅毒の集団感染の中で御世継ぎ産まれても何かありそうだよな(例:鬼滅の刃の妓夫太郎)。
なので、もしかすると何をしようとも最初から断絶は避けられなかったのでは、と考えて胸が苦しくなってしまう。嫌だったよね、苦しかったよね。
どうか、どこかの世で幸せになって。そう願うしか出来ない。
・代々男前な溝呂木家先祖の朔さん。上司の幸せを気にするくらいには人間だったのにな。子供を差し出すくらいにはその思想に殉ずる覚悟キマッてて私の内なる主従レーダーに反応してしまった(主従が永遠の萌え)。
この人も捨てた上に縛られて、しかも子孫ごとか……。そして真の意味で天局に寄り添うことはできなかったのがやるせない。
・大奥の産みの親、天局。大奥を作って三代目御台所様を追い詰め、挙げ句の果てに愚かな女呼ばわりなので、まさに外道と呼ばれてもおかしくはない。でも悪役かと言われたら……。
他作品の名前を出すけれど、プロジェクト・ヘイル・メアリーにもいましたね。個の犠牲はやむなし(自分含めて)で全体を生かそうとする女史。先に観てたからちょっと噛み砕けたところがある。
とはいえ、貴女に三代目御台所様を愚かと断じる資格はないのでは?
本当に愚かだったら大奥の存在に耐えることも出来ないだろ。それに、水(己)を信仰させる時点で大勢に愛されたいエゴやんけ。信じられようがされなかろうが、そこに固有の意思なく流れ続けるのが水だよ。
三代目天子個人(ミクロ)と泰平の世(マクロ)の違いこそあれど、純粋に向ける愛は誰にも指図される謂れはどちらにもなかったはず。
そもそも視座は高いんだけど、貴女は人なんだよなぁ~。平和という概念になろうとしても、その身は渇き死す肉体なわけだし。純粋な思いだろうと、そう願った時点でもう人の領分を超えた大言壮語でしてよ。
あの絶叫が意味するのは、自分もマクロに滅私奉公したミクロだったという気づきだろうか。それとも捨ててきたものに目を向けた戦きか。
一番うっ……となったのは、水を御神体に通し、大奥に流れる(保健所案件の)水になって、そこかしこで見てる事実。見方を変えれば150年分のすっっごい過干渉では???
そもそも下向き三角形が水だったり子宮を現してるらしいので、みんな今まで天局の胎内にいたも同然ってワケ。ということは、女中が毎朝飲んでたあの水って羊水……?
ず~っと「産まれなくていいのよ、お母さんが守ってあげるから」って子供を独立させないものだから、諸行無常っていう時代の新陳代謝に逆らって、結果あの悪臭不衛生水になるのは当たり前だよ。
ここまで職場が超絶ブラック企業だったので労基に駆け込んだ自称モブ女中として好き勝手言ったけれど、平和を願う人として考えると嫌いじゃない。純粋が故に絶望の深い子供をその聡明な内側に抱えてたんだね。
ただ、その子供はまず己を慈しむ術を、他者にも侵すべきではない尊厳があることを、絶望する前に知るべきだった。
モノノ怪
・ま さ か の ボ ス ラ ッ シ ュ
祠に向かうシーンでアサちゃんとフキ様がアイコンタクトして頷いてたの、モノノ怪の脅威を知ってる同志でアツいな~と思ったらこの伏線かいな。より真に近い立場のこの二人を触媒に助太刀致しに来ちゃったか。その前にもお人形だったり行灯の火だったりで「あれ?」とはなったけど復活するとは……。
よく考えたら二体とも水特効タイプだったね……。
・蛇神による被害、神の名を冠するだけあって大奥最大規模。女中3000人が2000人になってるよ……。控えめに言って災害。
全身の骨が砕けるの感じながらじわじわ絞められるの嫌だな。犠牲者からだと壁(棚?)に押し潰されるみたいに見えるの、同調圧力に負けたっていう比喩もあるのだろうか。
商業施設とかの飾り付けの旗みたいなあの三角形、鱗でもあるし牙でもあるんだな。
祠を呑んでからの蛇神in蛇神、入れ子式になってるの絶対に逃がさないっていう150年分の圧を感じて震える。
頭のみになっても斬られる直前まで祠に食らいつきながら泣いてるの痛ましい。そうまでしてでも壊したかったか。
・完全なる隠しボス、百目。
大奥を巡る150年分の本音と建前の末に顕現した、社会生活をおくる人の最大公約数みたいなやるせないモノノ怪。生きていく上で得られなかったり選べなかったりした痛みの発露。
しかし、そんな本音を秘めながらも、アサちゃんはカメちゃんと文通を楽しみ、フキ様は周りと協力しながら子を育て、坂下殿は今日も大奥を見守り、みんな選択した先の己を生きている。
人間が社会的動物である限り、他者と関わり、大なり小なり何らかの集団に属することは、もはや必定だ。我々はマクロを形成するミクロである。
その中で、自分のことばかりでは澱んでしまう。周りのことばかりだと個を捨ててしまう。どこかしらで折り合いをつけていくべきだが、割り切れることばかりではない。
だから、私の痛みも貴方の痛みも忘れない。選べなかった・選ばなかった後の未来が少しでも良くあるために考え、この世をまなざし、回していく。水は流れ、淀まない。
叶わなかった想いを秘めながら、それでも泣き笑い生きている。百目ちゃんの目に映る世界がそうやって循環していってほしい。
薬売りさん
・TV版モノノ怪は見てなかった私。たまたま唐傘の予告を観て「なんだこの美しい存在は……」となったのが出会い。呪術廻戦0で大スクリーン上の五条悟を観た時以来の美の引力だった。
再放送してた怪とモノノ怪(海坊主までかな)を見てから臨んだ唐傘で衝撃を受けてから今まであっという間だったな。
一瞬たりとも崩れない美しさ、しなやかで強靭な振る舞い、人を助けるべく真っ先に駆けつける優しさ。流行りの言葉を借りると海馬をジャックされてしまった。
「測る!」の辺りから今回テンション高い!? と思ってたらパンフレット曰く本命に近づいて気合い入ってたらしい。実は薬売りの中でも感情が分かりやすい方なのかも。というか、最初から三体+百目(本命)目的だったのか、百目を斬りにきたら三体が予想外にいたのかで十翼のブラック企業度合が変わるんですが、どうなんでしょう。
蛇神、これまでに増して御札の使い方テクい! 大広間前の使い方ダイナミックすぎるし、止血もできるしトランポリンもしてる。使い方の幅が二、三段階上がってる。修行した?
人好きな坤の薬売りさんだけど、基本的に人間同士のいざこざには首突っ込まないのもプロって感じで良い。あっしはモノノ怪専門なんで、そちらの問題はそちらが解決してください。「見届けるのはあんたたちだ!」は、その境界ギリギリでもあえて言っておきたかった発言かな。
モノノ怪にも人にも寄り添う彼にとって、形真理を明かすことは剣(神儀)への懺悔代行であり、神儀の荘厳な戦闘はそれを聞き届けたゆえの救済なのかもしれない。何が起こってるか、半分も理解できてるかどうか…な戦闘シーンがどの章にもあるってすごくない? すごい。そういえばグッズで見せてる好戦的スマイルは結局本編で観られず……。営業スマイル?
いつも必要なことしか語らないけど、満身創痍になりながらも浮かべた微笑や、ラストの晴れやかな高笑いを観て、人の良いところ悪いところを見ながらもなお人間を好ましく感じ、守ってくれていたんだって気づかされた。三作品お疲れ様です。ありがとうございます。
・ここは蛇神の感想を書くところなので、良い悪いではなく、物語の展開をどう感じたかを書きます。
やった~~~~! 離の薬売りさんだ~~!! 麗しい~~~~~~!!!
大 興 奮 不 可 避
TV版とは装いが少し変わっているところで、以前の質問箱解答にあった「歴史を刻みながら姿が変化する」という一文を思いだし、私たちが見てないところでたくさんの情念を鎮めてきたのだと思うと、こみ上げるものがあった。そしてパンフレットのモノノ怪百体以上斬り強者を噛みしめる……。
生者には塩対応気味、猫には優しい、陽炎のごとく掴み所なさげで時々お茶目な離の薬売りさん。この人がモノノ怪という作品を唯一無二の作品にしていていることで、坤の薬売りさん大活躍する劇場版に繋がっているのは間違いなくて、だからこそ二人が大奥に留まらないこの世の哀しみを斬り祓ってくれて嬉しかったです。一回目鑑賞後、小さめな方の鏡買いました。
個人的に、海坊主で見せた離の薬売りさんの舞が好きなので、二人バージョンが見られて感無量。袖を振る度に絶対いい匂いしてる。
同時に変身シーン、百とは言わないけど最低でも8くらいは目欲しい。あと、離の神儀が鞘を噛んだところで百目より先に「滅!」されそうになってしまった。私もモノノ怪だった……?
クライマックス、陰陽が合わさったら無敵よ!! と言わんばかりの豪快な「一閃!」「滅!」に私の心も晴れ渡りました。
最後に、長々と好き勝手綴らせてもらったこの文章を読んでくださった方、モノノ怪に携わる全ての人に感謝を込めて、結ばせていただきます。
モノノ怪という作品に出会えて幸せです!