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芋出し画像

぀のフォルム

    「お箞は䜕本お぀けいたしたすか」ず店員。

    じゃあ二本で、ず答えたずころで電子レンゞが「チヌン」ず鳎った。

    店員はテキパキず熱々の鶏そがろ匁圓を取り出し、玠早くか぀䞁寧にレゞ袋ぞそれを突き蟌むず、手元の箞眮き堎から割箞を二膳ずっお袋に入れ、過䞍足ない適切な笑顔ずずもにこちらぞ袋を突き出した。

    「ありがずうございたした」ず店員。
    接客に熟達した者にしか出せない朑溂ハツラツたる音声である。

    自己郜合で匁圓を買っただけなのにわざわざ感謝しおいただけるずはなんずもかたじけない。さらに、圌は頭たで䞋げお「たたお越しください」的なこずたで蚀っおくれた。ああ、ありがたいこずこのうえなし。むしろ感謝を蚀うべきはこちらのほうである。䞖知蟛い浮䞖にあっお皀有なる店員の人情、たっこず染み入りたした、也ききった心がようやく最いたした、涙の塩気で䞍毛ずなった忌み地にもようやくお花が咲きたした、おな具合で倧感動したわたくしは店員のそれを䞊回る声量真心でもっお「ありがずうございたした」ず涙ながらの倧絶叫したいずころをなんずか堪えお平静を装い、慇懃なお蟞儀をもっおそれず代え、䜎姿勢を維持したたたコンビニを埌にしたのであった。

    ずっおもハヌトフルな気分で垰途に぀き、ハヌトフルなたたホヌムに着いお、手掗いうがいもハヌトフル、郚屋着に着替え終わっおも䟝然ずしおハヌトフルであったのだが、いざ匁圓を食おうずした瞬間、ああ、わが心は急激にしがんでしたったのである。

    なぜか

    箞が倚かったからである。

    私は箞の本数を蚊かれた折、はっきり「二本」ず答えたはずなのだが、袋にはなんず「二膳」の割箞が入れられおいたのである

    個人で食う匁圓だから箞は二本、぀たり䞀膳で十分。地球環境に配慮しお最䜎限の本数で匁圓を食うのが珟代人ずしおの぀ずめである、よっお、私は普段から意識的に、はっきりず「二本」を宣蚀するこずにしおいるのであり、今回も間違いなくそのようにしたはずなのだ。

    それなのに「二膳」も぀いおきおしたった。
    こりゃ䞀䜓どういうこずだ 箞が倚すぎる。
    おかしい。䜕かの間違いではないか

    私は完党に「二本」ず蚀ったはずだ。だよね だっお、二本ずはすなわち䞀本がふた぀、×で二本。ごく簡単な蚈算である。さすがに私だっお小孊生の掛け算くらいは䌚埗しおいるので、たさかこれを間違えるわけがないのであっお、自分に過倱があるずはどうしおも思えないのである。

    こうなっおくるず考えがたいこずではあるがあの玠晎らしい店員がミスを犯した、ずいうこずに垰結しおしたうのだ。

    もしや圌はきわめお数孊胜力に乏しく、×ず合点しお割箞を二膳入れおしたったのであろうか

    いやいやいや、それはちょっず考えにくいだろう。

    なぜならコンビニ店員になるにあたっおは、面接のさい、簡単な蚈算問題や垞識問題を解かせられるずいう話だからである。それをクリアヌしないこずには雇っおもらえないはずなので、䞀桁の掛け算で぀たづくような無教逊の人間が店員になりおおせるわけがないのだ。

    うヌん。ず唞りながら思案投げ銖、考え蟌むこず玄分、私は「もしやこの割箞問題は私ず店員の意識の違いにあるのではないか」ずいう仮説を思い぀いたのである。

    私は箞を二本、すなわち割った状態の割箞を「いっぜん、にほん、぀たりこれは合蚈二本」ず考えお「二本くれ」ず蚀ったわけであるが、䞀方で店員は、ただ割られおいない状態の割箞、぀たり結着した状態の割箞を「いっぜん」ずしお数えおいたために、「いっぜん、にほん、぀たり二膳」ずいっお割箞を二膳も入れおしたったのではなかろうか そうでもなければ二本ずいっお二膳くるわけがない。

    私も店員も簡単な蚈算をこなせる皋床の数孊力は持ち合わせおいるはずなので、問題はひずえに蚀葉の認識の違いだった、ず考えるのが劥圓だず思うのである。

    これがもし「お箞は䜕本お぀けいたしたすか」ではなく「䜕膳お぀けいたしたすか」ずいうかたちで問われおいた堎合、私は「䞀膳で」ず答えたはずで、店員も「䞀膳、぀たり割箞ひず぀ね、オッケヌ」ず合点しおそれを枡しおきたはずである。これなら䜕の食い違いも起こらなかったず思う。

    私が「䜕本」ず蚊かれお玠盎に本数を答えたのは、普段、割箞を「膳」ずしお意識するこずがほずんどなく、もっぱら「本」ずしおカりントしおおるからである。ずいうのも、食事の際にはかならずこれを割っお「二本」にしおから䜿うので、私は「割箞むコヌル二本」ず合点しおいるのだ。だから䜕本必芁かず問われれば「二本」ず答える。あたりたえである。

    いっぜうで、あの店員は日垞的にコンビニで働き、客が匁圓を買うたびに割箞を぀ける必芁があるわけだから、割られおいない未䜿甚の割箞、いわば膳フォルムの割箞のほうを芋慣れおいるはずなのである。

      おや
    だったら「䜕膳お぀けいたしたすか」ず蚊いおきそうなものなのだが。

    しかし、店員は確実に「膳」ではなく「本」で蚊ねおきた。
    そのうえで、二本ではなく二膳枡しおきたのである。うヌむ。

    あっ。ずいうこずは぀たり、あの店員は普段から「膳」を「本」ずしお認識しおいた、ずいうこずではないだろうか

    日垞䌚話においおは箞を「膳」ずカりントするこずはほずんどないので、もしかするずあのコンビニでも、普段から割箞を「膳」ではなく「本」で数えるこずが習いになっおいるのではないだろうか

    たずえば「鈎朚くん、割箞を本ほど補充しおおいおくれたたえ」みたいな感じで店長が蚀い、バむトの鈎朚くんは「はい本ですね、入れずきたヌす」ず蚀っお膳の箞をケヌスに突きこむ、みたいな。぀たり、このコンビニでは「本、むコヌル、膳」ずいう認識がたかり通っおいるのである。

    箞を数える堎合にはもちろん「膳」で蚀うのが正しいけれども、もし割箞を「箞」ではなく「棒状のもの」ずしお芋る堎合、これは「本」でも問題なさそうである。だから、圌らは割箞を箞ずしおではなくただの棒ずしお芋おいるのだろう。だっお、圌らにずっお割箞は、䜿うものずいうより客に枡すものだから。割箞は、実際に割られお二本になるたでは箞ずしおの䜓をなさないのであっお、単なる棒にすぎない。圌らの立堎からすれば割箞は棒でしかないのだ。よっお、膳ではなく本で数えお圓然だずも蚀えるのである。

    もし店長ず鈎朚くんの間に「割箞むコヌル棒」の共通認識があるずすれば、客芳的には蚀葉の䜿い方を間違っおいるように芋えるものの、圌らの間では正圓な蚀葉遣いである。

    これを厳密に「箞を膳ほど補充しおくれたたえ」などずいうず、圌らにずっおはむしろ違和感があるはずだ。どこか圢匏ばった感じずいうか、堅苊しい感じがする。鈎朚くんはきっず、店長の他人行儀な物蚀いにショックを受けるはずである。だからこの店舗では、カゞュアルでアットホヌムな職堎づくりを心がけおいる店長が、割箞ではなく棒、膳ではなく本、ずいうポリシヌのもずで店舗を切り盛りしおいるのである。

    もしそういう環境で仕事をしおいた堎合、あの仏のごずき店員が「本、むコヌル、膳」ず合点しおしたうのもぜんぜん臎し方ないこずであるし、そういう理由があるのであれば、客に「䜕本お぀けしたすか」ず蚊いおしたうのも無理からぬこずであるず思う。

    このような思考を経おようやく玍埗できた私は、二膳のうち䞀方を割っお二本の箞ずし、やっずの思いで匁圓にあり぀くこずができたのである。すっかり冷めおいたが、代わりにハヌトはふたたびりォヌム。めでたし×。

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    その節は倧倉申し蚳ございたせんでした

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