
【短編小説】Electric dreamer
Electric dreamer
深夜のゲームセンター。
突き刺すような光の中で、Reverieは自分の目を疑った。
普段はテンプレートクリエイターとして、CapCutで光の効果を追求する彼女だが、今夜見ているものは明らかに違った。
朝のコーヒーを飲み忘れ、食事も取らないまま没頭していた新しいプロジェクト。
行き詰まりを感じた彼女は、創造的なアイデアを求めて街へと繰り出していた。
冷たい夜風が頬を撫でる。
3日ぶりの外界に、鼻腔から脳まで冷たい酸素が駆け上がる。
近所のコンビニまでのつもりが、気づけば古びたアーケードの前に立っていた。
ラジエーターの低いノイズが静寂を刻む中、一台のアーケードゲームが彼女を呼び寄せた。
レトロなBGMと、目まぐるしく点滅する赤、青、緑の光。
普段ゲームをしない彼女だが、これもアイデアのヒントになるかもしれないと考え、手を伸ばす。
画面に触れた瞬間、世界が光に溶けた。
目覚めた場所は、どこか見覚えのある幻想的な風景。
自宅に戻る方法が思いつかない。
驚きながらも、慎重にその世界を探索することにした。
元来の慎重さから、出発地点の月のオブジェを目印に、まずは反時計回りに進むことにした。
光と影が織りなす美しい風景、不思議なキャラクターたちとの出会い。
彼女はこの世界が自分の創造したテンプレートの中にある場所だと気づく。
しかし、そこには不気味な影が忍び寄っていた。
Reverieは光を愛すると同時に闇にも強く惹かれ、作成した動画にはダークなユーモアや薄暗い世界観のテンプレートも多い。
影が濃ければ濃いほど、光はより眩しく輝く。
光の当たらない場所に潜む見えない存在が、彼女の前に現れた。
それは光を愛するように闇にも惹かれる、もう一人の自分だった。
見たくないから見なかった、影の自分。
光を纏いながらも、その影と対峙しなければならない。
葛藤、弱さ、脆さ、様々な思考が巡る中、Reverieは自分自身と向き合い、光と影を調和させる方法を模索した。
真っ白な虚無。
追い詰められた果ての空間で、Reverieは立ち止まった。
日頃支えてくれる人々の笑顔を思い出し、深く息を吸う。
怖いのは自分だけじゃない。自分だけが怖い訳じゃない。
伏せていた顔を上げ、鏡の向こう側の自分の瞳を見つめた。
Reverieの予想外の行動に、向こう側のReverieが躊躇した。
Reverieは手を伸ばし、向こう側のReverieに近づいた。
向こう側のReverieは後ずさりした。
驚き、潤み、光を反射する瞳。
まるで瓶のソーダの中に閉じ込められたビー玉。
そんなビー玉のような丸い涙が、瞬きする度に頬を伝う。
それは心が開かれた合図のように、キラキラと輝きながら零れ落ちた。
デジタルとアナログの融合した新しいテンプレート。
光と影の調和を受け入れた瞬間、世界が変容した。
眩い光の波が押し寄せ、彼女は思わず目を閉じた。
気づけば自宅のベッドで冷たいiPhoneを握りしめていた。
夢だったのか...?
画面を開くと、ポップアップが浮かび上がる。
『Lv.3になりました。おめでとうございます』
Reverieの創造の冒険は、また新たな朝を迎えようとしていた。
テーブルの上の冷めたコーヒーが、静かに夜明けを待っている。
