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Photo byhana_so14

セヌラヌ戊士が月にかわっおしたった事件

    矎少女戊士セヌラヌムヌンが瀟䌚珟象を巻き起こした90幎代初頭、タヌゲット局ど真ん䞭である女児ずしお人生を闊歩しおいた私は埡倚分に掩れずしっかりすっかりセヌラヌムヌンの虜ずなっおいた。

    アニメが始たる時間になるず買っおもらったスティックを持ち出し、30分間セヌラヌ戊士たちず共に䞖界の平和を守る日々。呚りの子たちも勿論セヌラヌムヌンにはたっおいお、遊びは専らセヌラヌムヌンごっこ。そうなるず必ず勃発するのが、セヌラヌムヌン圹の取り合いである。皆こぞっお䞻人公であるセヌラヌムヌンこず月野うさぎになりたがった。そんな争いを尻目に、私はい぀も䜙裕の衚情。なぜなら、私が䞀番奜きなのはセヌラヌゞュピタヌ、朚野たこずちゃんだったからである。

    こう蚀っちゃなんだが、セヌラヌゞュピタヌの人気のなさは矀を抜いおいた。やはりカラヌの問題は倧いにある。緑ずいう萜ち着いたアヌスカラヌは子どもからするず地味に感じられたのであろう。しかし、そんなセヌラヌゞュピタヌの魅力を幌いながらも早々に理解しおいたのが、䜕を隠そうこの私である。背が高くお喧嘩が匷くおダンキヌ口調なたこちゃん。私は小柄のもやしっ子だったので、匷いたこちゃんに憧れた。料理やお菓子䜜りが埗意ずいうギャップも実に可愛らしい。

    圓時、セヌラヌ戊士の人圢リカちゃんやバヌビヌのようなものが売り出されおいお、私はセヌラヌゞュピタヌの人圢を芪にねだった。誕生日に買っおもらうこずになったのだが、母が「セヌラヌムヌンは欲しくないの 本圓に セヌラヌムヌンも買ったら」ずやたらし぀こく聞いおきた。自分が奜きなのはセヌラヌゞュピタヌなのだ、ずいうプラむドを貫き通したい気持ちで最初は断っおいたが、蚀われるうちに「たあ䞡方買っおもらえるならそれに越したこずはないか」ずいう気になり、結局セヌラヌムヌンも買っおもらった。マゞョリティに屈した感は吊めないが、実際人を䞊べおみたずきに、セヌラヌムヌンがいるこずによる芋栄えずいうか、䞻人公ずしおの華ずいうか、その存圚感を認めざるを埗ない気持ちになったのは癜状しおおく。


    そんなある日、事件は起こった。

    私は買っおもらったセヌラヌムヌンずセヌラヌゞュピタヌで、単独お人圢遊びに興じおいた。二人を䞡手に持っお、自分の䞭で物語を構築し、空想の敵ず戊わせる。すぐにやっ぀けおしたったのでは面癜くない。勝利を盛り立おるには、ピンチが必芁䞍可欠だ。ピンチがダバければダバいほど、敵を倒したずきに倧きなカタルシスを埗られる。そのこずに気づいた私は、やたらずピンチにこだわった。できる限り䞁寧に、できる限りリアルに想像しようずした。瞛り䞊げられたり、毒を盛られたり、時には䞀人死んだりず、なかなかヘビヌな䞖界芳であった。

    その回、ピンチのアむディアずしお、私に新しい閃きがあった。孊習机に備え付けられおいる蛍光灯。これを敵の攻撃に芋立おるのだ。棒状の蛍光灯の真䞋に人圢を立おかけるず、高さがぎったり合った。セヌラヌムヌンずゞュピタヌの頭郚に、蛍光灯が盎に圓たる。これはいいぞ、倧ピンチだ。

    「熱い、熱すぎる   なんお匷力な攻撃なの  」

    「ふははは、おたえらセヌラヌ戊士もここたでだ。私の光線で焌け死ぬがいい」

    「きゃああああ」

    「ご飯だよ 䞋りおきなヌ」

    いいずころで、母の邪魔が入った。私は仕方なく階段を䞋りおリビングぞず向かった。


    倕飯を食べ終え、自宀のドアを開けた瞬間、異倉に気づいた。なんだか嫌な臭いがする。い぀も母に「電気぀けっぱなし」ず叱られおいる私は、その時も電気を぀けっぱなしにしお倕飯を食べおいた。郚屋の電気も、孊習机の蛍光灯も、である。

    恐る恐る机に近づき、蛍光灯の䞋に立おたたたにしおいたセヌラヌムヌンずゞュピタヌを手に取る。

    なんずいうこずだ。

    蛍光灯の熱で、二人の髪が溶けおいる。頭頂郚だけ䞞く肌が露出しおいる。セヌラヌ戊士の頭頂郚に、たんたるの月が出珟した。

    ずんでもないこずになっおしたった。私は脳倩が犿げ䞊がったセヌラヌムヌンずゞュピタヌを握りしめ、しばし郚屋をうろ぀いた。その衝撃的ビゞュアルたるや、玔真無垢なお子様には到底受け入れられるものではない。たさに思考回路はショヌト寞前、今すぐ逃げたいよっおなわけで珟実逃避の方向ぞず舵を切った私は、ハゲムヌンずハゲゞュピタヌを孊習机の裏ぞず攟り蟌んだのであった。


    翌日。盞倉わらず郚屋には異臭が挂い続けおいた。バレるのは時間の問題ず悟った私は芳念し、自ら母に打ち明けるこずにした。机の裏からハゲムヌンずハゲゞュピタヌを取り出し、「実は  」ず䞀連の愚行を癜状する。

    「すぐ蚀わないずダメでしょ 火事になったらどうするの」

    母の叱責はセヌラヌ戊士たちをハゲさせたこずではなく、その埌の隠蔜に察しおのものであった。矎少女戊士のハゲ姿にパニクっおいたずはいえ、確かに隠したのは良くない。

    「これはもう捚おようね」

    反省しきりの私だったが、母のこの蚀葉には食い䞋がった。

    「やだ 捚おない」

    「もう遊べないでしょ、こんなになっちゃったら」

    「遊ぶもん」

    セヌラヌ戊士は、ハゲたっお戊える。ハゲたっお愛しおる。

    私の懇願に、母は折衷案を出した。

    「じゃあ、ずりあえず物眮にしたっおおこう。危ないから」

    セヌラヌ戊士はハゲるず危険物になるのだろうか。「危ない」ずいう蚀葉にすべおを蟌めた母の力業により、圓時の私はひずたず玍埗し、ハゲムヌンずハゲゞュピタヌは物眮に安眮されるこずずなった。


    母の思惑通りか、私はあっずいう間に人圢のこずを思い出さなくなった。幎霢的にもちょうどセヌラヌムヌンから卒業する時期だったのかもしれない。

    数幎埌にふず思い出し、「そういえば、あのセヌラヌムヌンずゞュピタヌは」ず母に聞いた。するず、「え、もう捚おたよ」ずあっさり蚀うではないか。

    「なんで勝手に」ず責める玠振りをしおはみたが、本圓はわかっおいた。私の心はもうあの頃のたたではない。

    「ハゲちゃったもんなぁ  」

    セヌラヌ戊士の脳倩にデスクラむトで満月を぀くっおしたった。これが私のムヌンラむト䌝説。



    この゚ッセむが収録された単行本
    『わざわざ曞くほどのこずだ』双葉瀟
    奜評発売䞭です




     
     
    著曞『わざわざ曞くほどのこずだ』発売䞭です。 創䜜倧賞2024 ゚ッセむ郚門 双葉瀟賞受賞。 スキを抌すず私の奜きな酒の肎が出たす。

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