
受話器越しに「景色」が見える―コールセンター26年の経験が、就労支援の現場で“血肉”に変わるまで
わたしは、俳優歴14年、コールセンター勤務歴26年のキャリアコンサルタント。現在は、自治体の就労支援専門員として働いています。
毎日の面談や記録作成のほか、意外と多いのが「電話対応」です。
1. 現場を支える、変幻自在の「電話対応」
対お客さまへは、求職状況の確認、報告の受付、体調確認、面談のリマインド。
時には、励ましや動機づけ、そして混乱時の対応も行います。
また、提携機関の担当者の方との情報共有や相談、福祉事務所内での取り次ぎなど、電話は支援の要(かなめ)となっています。
コールセンターでSV(スーパーバイザー)をしていた頃は、ワイヤレスイヤホンを装着して現場を駆け回っていましたが、今は有線の受話器を片手に、腰を据えてお客さまと向き合う日々です。
2. 「声」から伝わる、映像のような真実
「対面と比べ、表情の見えない電話では相手の状況が捉えづらい」
そう感じる方もいるかもしれませんが、そんなことはありません。
息遣い、声のトーン、速度、そして声から伝わるさまざまな表情。それらから、その方のお気持ちや状況が、まるで映像のように伝わってきます。
こちらはゆったりと温かみを伝える“笑声(えごえ)”で、「いつでも受け容れOKですよ」という姿勢を第一に伝えつつ、必要な事項を聞き取ったり、大切なマインドセットを行ったりします。
※笑声とは:業界用語で、「まるで笑顔で話しているような声色」を指します。こうすることで顔の見えない電話での印象が“爆上がり”し、その後の対応をスムーズにしてくれます。
声の表情はさまざまな場面で駆使します。
• 喜びのとき: 書類通過や採用の報せには、明るい声で無上の喜びを伝え、共に分かち合う。
• 苦しいとき: 体調不良などの話題には、トーンを低く言葉数を減らして、沈む気持ちを受け止め、お相手の負担にならないよう配慮しながら切り上げる。
これらはすべて、かつての現場で培った「瞬時の判断」が成せる技です。
3. ハードな現場経験が「支援の盾」になる
時には、取り乱したり興奮したりしている方の対応もありますが、それも“なんのその”。
数々のハードクレームを収めてきた経験が、今の私を支えています。
お怒りの奥底にある、その方の本当の困りごとや「助けてほしい」という切実な訴え。
そこに耳を傾け、理解し、こちらのリソースを元に「今何ができるか」を適切なタイミングで提示する。
たとえお話が取り留めなくなっても、受容の姿勢を示しながら概要をまとめ、コンパクトに話を結ぶ術を知っているため、落ち着いて対応できます。
電話を切った後、お客さまが「自分がこの先何を、どこに、どうやってすればよいか」を迷いなくイメージできるよう、対話をデザインしていくのです。
そして電話を終えると即座に今度は、「何を、どこに、どのボリュームで伝えれば良いか」と、自分の行動を組み立てます。
重い対応の後にも、即座に履歴作成や関係機関との連携を行うことの多かった「コールセンターならではの技術」が、ここにも活かせています。
4. 泉のように湧き出る「気遣いの言葉」
• 「今、お話しして大丈夫ですか?」
• 「ここまでの説明は、ご理解いただけましたか?」
• 「よろしければ、こちらからかけ直しましょうか?」
・「お話が伺えてよかったです。」
• 「お電話いただき、ありがとうございます!」
お相手との関係を深め、その後の行動を後押しするちょっとした気遣いの言葉。
それが泉のように湧いてくるのは、かつてコールセンターで四苦八苦しながら得てきた、対話スキルの賜物なのだと感じています。
【最後に:キャリアの点と線】
「電話の仕事、やっててよかったー…」
渦中にいる時は、もしかしたらしんどさが勝っていたかもしれません。しかし、26年間の日々は決して無駄ではありませんでした。
かつての経験は私の血肉となり、現在のキャリアコンサルタント、そして就労支援という場で、私と相談者様を支える大きな力となっています。
どんな経験も、いつか必ず誰かを助けるための「武器」に変わる。
今、目の前の仕事に懸命に向き合っているあなたの経験も、きっと未来のあなたを助けてくれるはずです。
お読みいただきありがとうございました。
舞台の上でも、受話器越しでも。私の根っこにあるのは「お互いに理解し合いたい」という願いです。
俳優、コールセンター、そしてキャリアコンサルタント。
バラバラに見えるパズルのピースが、就労支援という現場で一つに繋がりました。
これからも私は私のすべてを使って、目の前の方の「これから」を一緒に描いていきたい。そう願っています。