
借りた本|シロクマ文芸部|390文字
ひとり暮らしをしたことがない
11歳から使っている実家の自室。
パイプベッドにaiwaのコンポ。
バスケ部なのに壁には三浦カズの特大ポスター。
押し入れには3回しか触らなかったエレキギターとアンプ。
出窓にあるのは競走馬のぬいぐるみ。
社会人2年目を迎える少し前、結婚をした。
「いい加減、荷物の整理するか」
新生活に向けて持ち物を整理する。
ミニマリストではない。
雑多に溢れるCD、文庫、MD。
写真は苦手だからあまりない。
11歳まで通っていた絵画教室の油絵道具。
新生活に必要なものだけを選んでいく。
充電器、衣類⋯⋯。
ボストンバッグ1つにまとまってしまった。
「これは⋯⋯」
いつかアイツに借りた本。
どうせまたアイツの家に行く。
そのときに、そっと置いていこう。
いったいいつ借りたのかも思い出せない。
10年は経ってないよな。
その本だけは左手に持つ。
「必要になったら取りに来るわ」
それだけ伝えて実家を出た。