
白露・はくろ(新暦9月8日ごろ)
白露は二十四節気の第15番目の節気です。仲秋の前半にあたり、夏から本格的な秋へと足を踏み入れるグラデーションのような時期を指します。今年は夏の暑さもそこまで厳しくなく、秋の訪れも早いように感じます。それにしても最近は雨が多いですね。
この時期は、月が美しいとされることから、「月見月」とも言われるそうです。日々何気なく見上げる月を、あえて特別な時期に愛でる、なんとも風情ある古来からの文化ではないでしょうか。
ここからは七十二候のご紹介。
草露白(くさのつゆしろし) 露が白く光って見える時期 9月8日〜9月12日 第43候
「白」という色の言われを調べてみました。残暑でまだまだ暑い日中から、夜間になると、地表の熱が空へ逃げ、草木の表面温度が急激に下がります。空気中の水蒸気が結露すると露となるわけですが、古人は、この露が、斜めから差し込む朝日にあたった時に光る様子を「白」と表現したそうです。日本人は、この一瞬の煌めき、儚さに美を見出していたのですね。目を閉じてその様子を想像すると、心が落ち着きませんか?なんとも素敵なことばですね。

そして、「月見る月はこの月の月」だそうで、私たちにも馴染み深い「十五夜」です。旧暦と現代の暦(新暦)ではズレがあるため、十五夜の日付は毎年変わりますが、おおむね9月7日〜10月8日頃の間のいずれかの日になります。月はその満ち欠けの美しさや、夜ごとに変わる表情から、古くから日本人に愛され、非常に多くの豊かな名前がつけられてきました。
特に、中秋の名月(十五夜)の前後には、それぞれ特別な情緒や名前が与えられています。
待宵月(まつよいづき): 旧暦8月14日の月(十四夜)。「明日の十五夜の満月を心待ちにする夜」の月。「小望月(こもちづき)」とも呼ばれる。
十五夜(じゅうごや): 旧暦8月15日の月。「中秋の名月」「望月(もちづき)」とも呼ばれ、感謝の対象とされる。
十六夜(いざよい): 旧暦8月16日の月。十五夜より月の出が約50分遅れるため、「月が出のをためらっている(いざよう)ようだ」として名付けられた。
立待月(たちまちづき): 旧暦8月17日の月。月の出が遅くなるため、「今か今かと立ったまま待つ」月。
居待月(いまちづき): 旧暦8月18日の月。月の出がさらに遅くなり、「立って待つには疲れるので座って(居て)待つ」月。
寝待月(ねまちづき): 旧暦8月19日の月。月の出が夜遅くなるため、「横になって寝て待つ」月。「臥待月(ふしまちづき)」とも。
二十日余の月(はつかあまりのつき): 旧暦8月20日の月。夜がかなり更けてから出る月。「更待月(ふけまちづき)」とも呼ばれる。
季節や情景を月の名称にしたものもあります。
寒月(かんげつ): 冬の冷たく澄んだ空に冴え渡る月。
朧月(おぼろづき): 春の夜、かすんでボヤけて見える柔らかい印象の月(「朧月夜」など)。
雨月(うげつ): あいにくの雨で姿は見えないけれど、雲の向こうに確かに存在する十五夜の月。
無月(むげつ): 中秋の名月の夜、雲がかかって月が見えないこと(古人は姿が見えなくても「無月」として風情を楽しんだ)。
夕月夜(ゆうづきよ): 夕方、まだ明るさが残る空に浮かぶ薄明るい月。

鶺鴒鳴(せきれいなく) セキレイが鳴く時期 新暦9月13日〜9月17日 第44候
前候の「草露白(くさのつゆしろし)」で感じた静かな朝晩の冷え込みに続き、「秋の澄んだ空に小鳥の高らかな声が響き渡る季節」の訪れを表しています。「草露白」が視覚(朝露の光)で捉える秋だとすれば、「鶺鴒鳴」は聴覚(澄んだ鳥の声)で捉える秋の深まりです。
「色無き風」とは秋風のこと。秋が深まるにしたがって、次第に透き通っていくように感じられる風の色。「白」よりも「色無き」というほうが、透明感を感じられますね。

玄鳥去(つばめさる) 燕が南の国へ渡っていく時期 新暦9月18日〜9月22日 第45候
いよいよ夏が終わりを告げ、本格的な秋へと足を踏み入れる時期です。
対になる言葉として、春(清明の初候・4月4日頃)の「玄鳥至(つばめきたる)」があります。春に「いらっしゃい」と迎えたツバメたちを、秋の入口で「いってらっしゃい」と見送るのがこの時期です。
燕を玄鳥と呼ぶのはなぜでしょう?
「玄」という漢字には「黒い」「深い」「奥深い」という意味があります。
黒い鳥: ツバメの背中の艶やかな黒い羽毛を指して「玄鳥」と呼びます。
五行説の「玄」: 東洋の五行説では「玄=黒=冬・北・陰」を象徴します。かつて古代中国では、ツバメは秋になると北の暗い海の底や地中に入って冬を越し、春になると再び姿を現すと信じられていたため、異界(玄界)と行き来する不思議な鳥として「玄鳥」の名がつけられました。
今回も美しいことばにたくさん出合うことができました。秋の夜長、夜の静けさのなか、すてきな言葉たちに思いを馳せてみてはいかがでしょうか?