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質問を3つ、削った夜

    当局相談の前日。

    相談資料の最終確認をしていた。

    製品の概要。開発の経緯。性能評価の計画。変更管理。市販後の対応。

    LLMも使い、通知や海外ガイダンスを調べ、論点を整理した。

    初稿には、相談事項が8つあった。

    どれも、聞く理由はある。
    規制上の論点にもなり得る。

    けれど、資料を読み返すうちに、3つ削った。

    赤字で線を引いた。

    理由は単純だった。

    これは、当局に確認する質問ではない。

    自分たちで判断する質問だ。

    「それは、当局に聞くことなのか」

    当局相談では、自社の考え方を示し、その考え方について相談する。

    何も決めずに、「どうしたらいいでしょうか」と尋ねる場所ではない。

    8つあった質問は、5つになった。

    それだけで、資料が少し軽くなった。

    知識を集めた、その先

    私は、薬事の仕事にかかわってきた。

    法規制を知る。
    ガイドラインを読む。
    過去の事例を調べる。

    知識が多いほど、仕事ができると思っていた。

    もちろん、知識は必要だ。

    けれど、Aという要求があり、Bという事例があり、海外にはCという考え方があったとしても、それだけでは自分たちの答えにならない。

    この製品をどう使うのか。
    誰が使うのか。
    どこにリスクがあるのか。

    集めた知識を使って、自分たちの方針を決める。

    そこには、調べることとは別の仕事がある。

    AIが増やしたもの

    LLMを使えば、情報を集め、文書を整理し、複数のガイダンスを比較できる。

    今回の8つの質問も、かなり早くできた。

    それぞれに理由があり、根拠もあった。

    それでも、3つの質問の前で手が止まった。

    これは、当局に答えを求めることなのか。

    それとも、自分たちがまだ決めていないだけなのか。

    そこは、AIに決めてもらえなかった。

    製品を知り、開発の人と話し、リスクを考える。

    何を会社として引き受けるのか。

    そこは、自分たちで決めるしかない。

    3つを削った夜

    SaMDは、リリースしたあとも変わっていく。

    画面が変わる。
    機能が増える。
    AIモデルが変わる。

    そのたびに、患者への影響やリスク、追加評価の必要性を考えなければならない。

    規制の文言を知っているだけでは、答えが出ないこともある。

    製品を知り、開発の人と話し、必要なら立ち止まる。

    最後は、自分たちで判断する。

    資料を閉じたのは、夜遅くなってからだった。

    8つあった質問は、5つになった。

    画面には、赤字の跡が残っていた。

    削った3つも、大切な質問だった。

    けれど、それは自分たちが答えを出すべき質問でもあった。

    当局に預ければ、自分たちの判断まで預けることになる。

    だから、削った。

    質問は3つ減った。

    画面には、5つの質問が残っていた。



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