
ジャガイモの81%を作る北海道が「待った」をかけた
―米国産生ジャガイモ輸入問題。「安く買える」より先に考えるべき食料安全保障―
はじがき
ジャガイモくらい、輸入すればいい。
そう思う人もいるかもしれない。
しかし数字を見ると、この問題の重さが分かる。
北海道のばれいしょ収穫量は191.6万トン。
全国236.4万トンの81%を北海道だけで生産している。
その北海道の鈴木直道知事が、米国産一般流通用生鮮ばれいしょの輸入解禁について、
病害虫の侵入防止と国内生産対策が講じられない限り、受け入れられない
との考えを示した。
これは単なる「輸入反対」の話ではない。
日本の食料安全保障を考えるうえで、極めて重要な問題だと思う。
定例記者会見にて、「米国産生ジャガイモの輸入解禁について」コメントしました。 pic.twitter.com/2YYgXdlxb6
— 鈴木直道(北海道知事) (@suzukinaomichi) August 29, 2026
STEP1|まず「輸入解禁決定」ではない
ここは正確にしておきたい。
米国が日本に輸入解禁を要請したのは2020年。
農水省はWTO/SPS協定に基づき、科学的な検疫協議を進めている。
8月28日時点では病害虫リスク評価を取りまとめ、
「リスク管理措置が必要な病害虫を特定する段階」
まで進んだ。
つまり、まだ輸入解禁が決定したわけではない。
9月18日には農水省が説明会を開く予定だ。
STEP2|なぜ北海道がこれほど警戒するのか
理由は数字に表れている。
北海道は、
全国収穫量の81%
産出額588億円
を占める日本最大のジャガイモ産地だ。
しかも用途は生食だけではない。
北海道では、でん粉用40%、加工食品用27%、生食用12%。
ポテトチップスから片栗粉まで、私たちの食生活を支える基礎作物なのである。
STEP3|最大の論点は「価格」より病害虫
農産物輸入には、工業製品にはないリスクがある。
病害虫は、一度侵入・定着すれば輸入を止めても終わらない。
だから植物検疫がある。
農水省自身も、国内未発生などの病害虫の侵入・まん延を防ぐため、科学的根拠に基づくリスク分析を行っている。
「外国産だから危険」でも、
「科学的協議だから絶対安全」でもない。
どの病害虫が対象となり、どんな管理措置ならリスクを抑えられるのか。
ここを徹底的に公開してほしい。
STEP4|日本の食料自給率は37%
もう一つ忘れてはいけない数字がある。
2025年度の日本の食料自給率は、
カロリーベース37%。
前年から1ポイント下がった。
つまり日本は、食料供給の相当部分を海外に依存している。
だからこそ私は思う。
食料安全保障とは、
「輸入先を確保すること」だけではない。
国内で作り続けられる農地、農家、技術、種苗、産地を残すこと
ではないだろうか。
STEP5|守るべきはジャガイモではなく「生産能力」
輸入そのものを悪者にする必要はない。
貿易は日本の食生活を支えている。
しかし、
安いから輸入する。
農家が減る。
産地が弱る。
国内生産能力が落ちる。
有事になって慌てる。
これでは遅い。
農業は工場のように、スイッチを押せば翌日から増産できない。
農地も、人も、技術も、種も必要だからだ。
おわりに
米国産生ジャガイモ問題で問われているのは、
「アメリカ産か、日本産か」
という二者択一ではない。
日本は、自国の食料生産能力をどこまで戦略的に守るのか。
その問いだと思う。
全体総括
輸入解禁はまだ決まっていない。
だからこそ今、議論すべきだ。
科学的な植物検疫。
国内産地への影響。
そして食料安全保障。
食料自給率37%の国だからこそ、
「買える国」であること以上に、「作れる国」であり続けること。
私は、そこを農政の最優先にしてほしい。
ーーノリック#調