
「また一人、辞めていく。」人が減っても、仕事は減らない介護・看護の現場。
また一人、職員が辞めていく。
そのたびに思う。
「今度は、残された職員でどうやって回そうか」
制度が変わり、運営の仕組みが変わり、現場の働き方も大きく変わった。
でも、一番変わってしまったのは、現場で働く職員たちの表情かもしれない。
以前のような余裕がない。
誰かが休めば、誰かがその仕事を引き受ける。
人が減っても、利用者へのケアはなくならない。
そして、今日もまた一日が始まる。
施設管理に携わる中で、こうした現実に直面してきました。
人が辞めても、補充されない
看護師が辞める。
介護職員が辞める。
そのたびに、残った職員で何とかする方法を考える。
勤務表を調整する。
訪問ルートを組み直す。
業務を分担し直す。
それでも、どうにもならない日があります。
そんなときは、管理者も現場に入ります。
本来は現場を支え、全体を見渡し、職員の相談に乗り、業務を改善する立場です。
でも、今は自分自身が訪問やケアに入らなければ、その日の業務が回らないこともあります。
そして、現場に入れば入るほど、管理業務は後回しになります。
人が減ったからといって、責任まで減るわけではありません。
むしろ、少ない人員でどう安全に運営するのか。
管理者に求められることは増えていきます。
もう、誰かの頑張りだけでは
埋められない
ある日、職員が体調を崩して休む。
腰痛が悪化した。
疲労が重なった。
体が思うように動かない。
そんな連絡を受けるたび、体調を心配する気持ちと同時に、頭の中では勤務の組み直しが始まります。
「今日のルートはどうしよう」
「誰か出勤できる人はいないだろうか」
「どこを調整すれば回せるだろうか」
休日の職員に出勤をお願いすることもあります。
もちろん、休んだ職員が悪いわけではありません。
本来、体調が悪ければ安心して休める職場であるべきです。
でも現実には、一人が休むだけで、現場全体が大きく揺らぐことがあります。
そして、無理をして働いている職員が、また体調を崩していく。
人が足りないから無理をする。無理をするから、また人が足りなくなる。
この悪循環を、いつまで続けるのでしょうか。
管理者も、現場を回すことで
精いっぱいになる
施設管理者の仕事は、訪問ルートを回すことだけではありません。
職員の教育。
事故防止。
家族対応。
医師や関係機関との連携。
記録の確認。
行政対応。
運営状況の確認。
そして、施設全体の安全を守ること。
どれも後回しにしてよい仕事ではありません。
でも、目の前の訪問が回らなければ、まずはそこに入るしかない。
管理者だけではありません。
現場を調整する立場の人たちまで、日々の業務に入る。
そうなると、相談したいことがあっても連絡がつきにくい。
判断してほしいことがあっても、返事を待つ。
現場で起きている問題を共有する時間さえ、少なくなってしまう。
現場を助けるために管理者が現場に入る。その結果、現場全体を管理する時間がなくなっていく。
私は、このことに大きな不安を感じています。
仕事を減らすことと、
安全にできることは違う
限られた人員で業務を続けるために、訪問ルートや業務の見直しが行われることがあります。
もちろん、無駄な業務を減らすことは必要です。
効率化も大切です。
でも、どうしても疑問に思うことがあります。
その業務は、本当に減らせる仕事なのでしょうか。
吸引が必要な方がいる。
経管栄養が必要な方がいる。
点滴や医療処置が必要な方がいる。
状態が変化しやすく、日々の観察が欠かせない方もいます。
訪問の組み方を変えたからといって、利用者の医療的な必要性まで減るわけではありません。
必要なケアを安全に提供できる体制なのか。
急な状態変化に対応できるのか。
職員が安心して業務に集中できるのか。
私は、そこまで考えたうえで業務を見直す必要があると思っています。
効率化とは、職員が限界まで動くことではないはずです。
一番怖いのは、事故が
起きてから気づくこと
忙しい現場で働いていると、ふと怖くなることがあります。
「このままで、本当に大丈夫なのだろうか」
みんな、一生懸命やっています。
看護師も介護職員も、自分の仕事を終わらせようと必死です。
でも、人間です。
疲れれば集中力も落ちます。
焦れば確認が不十分になることもあります。
普段なら気づける小さな変化を、見落としてしまう可能性もあります。
医療や介護の現場では、その小さな見落としが大きな事故につながることがあります。
だからこそ、事故が起きてから、
「どうして確認しなかったの?」
「なぜ報告しなかったの?」
と個人を責めるだけでは、何も変わらないと思うのです。
事故を起こさないように頑張れと言う前に、事故を起こしにくい環境を整えること。
それも、組織の大切な責任ではないでしょうか。
私自身も、頑張り方を変えました
少し前までの私は、何とかしなければと思う気持ちが強かったように思います。
職員が困っていれば、自分が動く。
人が足りなければ、自分が入る。
問題があれば、自分が何とかする。
それが管理者としての責任だと思っていました。
でも、最近は考え方が変わってきました。
自分まで壊れてしまったら、誰がこの現場を支えるのだろう。
そう思うようになったのです。
だから、少しだけ距離を置いて考えるようにしています。
できることはする。
でも、できないことまで一人で背負わない。
現場の問題は伝える。
必要な改善は求める。
それでも、自分の力だけでは変えられないことがあると認める。
これは、諦めたということではありません。
自分を守ることも、長く現場に関わっていくためには必要だと感じているからです。
ただ、一歩引くことと、危険を見過ごすことは違います。
安全に関わる問題は、きちんと記録し、報告し、必要な対応を求め続けなければならないと思っています。
現場の職員に伝えたいこと
今、一生懸命働いている皆さんへ。
人が足りないのは、あなたの頑張りが足りないからではありません。
仕事が終わらないのは、あなたの能力だけの問題ではありません。
忙しい中で、利用者のために走り回っていること。
休みの職員の分まで支えようとしていること。
私は、そんな現場の姿を見ています。
でも、どうか自分の体と心も大切にしてほしい。
無理をすることが、責任感の証明になってはいけないと思うのです。
そして、管理者も同じです。
すべてを抱え込まなくていい。
できないことは、できないと伝えていい。
必要な支援を求めていい。
その声を、個人の弱さとして片づけてはいけないと思っています。
最後に
私は、介護も看護も好きです。
利用者と関わることも、ご家族と一緒に悩むことも、職員の成長を感じることも。
だからこそ、この仕事を大切にしたい。
でも今、現場では、仕事が嫌いになったわけではないのに、働き続けることが難しくなっている人がいます。
私は、それが悲しい。
誰かが辞めるたびに、
「残った人で何とかしよう」
ではなく、
「なぜ、働き続けられなかったのだろう」
と考える組織であってほしい。
人が辞めても、利用者の生活は続きます。
医療や介護を必要とする人がいる限り、私たちの仕事も続きます。
だからこそ、職員の限界を前提にした運営ではなく、安心して働き続けられる仕組みが必要なのだと思います。
職員を守れない現場で、利用者を守り続けることは難しい。
私は、そう感じています。
施設アカデミーでは、看取りや家族支援だけでなく、そこで働く人たちの現実も伝えていきたいと思っています。
同じような悩みを抱えている管理者の方。
そして、現場で働く看護師・介護職員の方。
皆さんの職場では、人が減ったとき、どのように業務を見直していますか?
現場で感じていることを、ぜひ聞かせてください。🌷